【短歌の解説】歌人の頭の中
2022年、短歌を始めた。光栄なことにTwitterで少しバズったり、短歌に興味のない人がTLを見てフォローしてくれたり。文芸は作り手のみが正解を知っているから感想を言うのは難しいだろうけど、たまに「こういうの好き!!」と言ってくれることはすごく嬉しい。言葉では説明のできない「なんかいいな」はとびきり尊くて、言語化できないのもまた美しさだと思う。
ただ、友人に「短歌の良さって何?解説があれば短歌を知らない人もハマる可能性が増えるのに」との意見ももらった。今日は、僕の短歌についてつらつらと話していく。
良い短歌とは
短歌を知らない人と短歌を作っている人の良し悪しはだいぶ違うだろう。分かりやすいだけの短歌は短歌を知らない人たちにウケが良く、後者からはウケが悪い。短歌は「共感」「納得」「斬新」の3種類あるため、分かりやすい短歌にも「共感」「納得」されるような良い短歌はたくさんあることは伝えておきたい。ただ百人が百人「こう思う」ような短歌よりも、読み手にとって映画の考察のように幅のある短歌の方が、良い短歌とされている。
逆に、悪い短歌は何が言いたいかが分からなくなり読み手に甘えているもの。その合間で生きている僕たちの短歌を「解説する」ことは野暮と言われることも。ただ、僕のnoteを見てくれる人たちはある程度許容してくれると信じて。土足を脱いでくつろいでってくださいな。
はつきむの頭の中
今回は、6首を選んで解説をする。
1.恋文の封を切るよう現代も少し震えるLINEの通知
分かりやすいものを最初に置いたつもりだけど、分からなかったらごめんなさい!の前置きで。
封のされてる恋文を書いたことももらったこともない世代だけど、たぶんこうなんだろうな、という思いでつくったもの。文通をしていてラブレターの返事をもらったり、付き合っている恋人からの手紙、なんてのはおそらく手が震えてしまう。対して僕たち世代で言えば、LINEの返信待ちの時にバイブ音が鳴ればドギマギしてしまう。いつだって、恋の便りは少し震えるというのがこの一首だ。
2.飛ぶための羽根と知らない敵襲に身を寄せ合った餃子の群れは
遊び心を交えた短歌。羽根のある餃子は、なすすべもなく食われる。せめてもの抵抗として、身を寄せ合っている。だが餃子が一斉に飛べるとしたら。ペンギンも登場させようとしたが、31字の中に餃子みたくぎゅうぎゅうになってしまうと断念した。
他の短歌もそうだが、アイデアを思いついた中でさらに似たような表現を何種類か試みて、色々推敲(短歌をよくしようと何度も考え、作り直すこと)しながらこのような短歌になっているのだ。
3.万歳の円は今夜の色見本 きみを彩る補色になるよ
万歳の円、というと何を思い浮かべるだろうか。実はこの短歌、野球を見て思いついたもの。万歳の円&色見本=胴上げ。きみを彩る補色=胴上げをする円にいる人全てが、きみという主役を彩る補色である様を描いた様子。今夜の=夜空の黒→濃紺との対比で中心に浮かぶ月でもあり、様々な形でかかっていて非常にお気に入りの短歌だ。
歌人の日笠山さん@higasayama もこの短歌について解説してくださったので、ぜひ見比べてみてほしい。
4.飼い主は飼い犬に似る他所行きの黒い涙で頬を濡らして
自分にしかない感性を短歌にすると良い短歌になるのではないか、という僕なりの解釈がある。
飼い主は飼い犬に似る、という時点で「逆だろ!」となるかもしれないが、僕的には犬を飼っている人はもれなく犬に似ている。
他所行きの黒い涙、というのは女の人のアイメイクが涙で崩れる様。あとは、犬の涙にあるポルフィリンという成分が太陽の光によって変色する性質があるため、黒い涙が出ることもある。(シーズー、トイプードルなどの黒い目やにみたいに見えるやつ)。太陽=他所行きということも対応させての一首。
5.どの階も一つの花を分け合って今日のLOFTは少し蜜蜂
普通ならLOFTという一つの花を人という蜜蜂が分け合うという短歌になる。ただ、この短歌は「私という花を各階が分け合い蜜を吸う構図」だ。
必要なものが一階のフロアだけで揃わないのがLOFT。少しの手間で身を削られる様が、蜜蜂として私という花の蜜を吸っているような感じがしてこの一首を作った。ちなみに普段食べている蜂蜜はセイヨウミツバチの作り出す蜜だ。ニホンミツバチは複数の種類から蜜を取るが、セイヨウミツバチは同一の花からしか蜜を取らない習性を持つ。という豆知識でした。
6.さよならと人の目を見て告げるとき半オクターブ上がるラの語尾
声に出して言ってみてほしい。さよならを伝える時に、別れ話などで去り際に「さよなら」を告げる時。顔を伏せると声もトーンが落ちる。だが、目を見て告げる時、語尾が上がると気づいて考えた短歌。
最初はこんばんは、みたいな感じの挨拶で考えていたが、推敲している内にさよなラとドレミファソラシドの音を対応させた形。本来は1オクターブが低いラ→高いラで適切なのだが、半オクターブ、という表現にした。半オクターブだとレ→ラになるような形で、お別レ→さよなラで五度上げて告げるようなニュアンス。ただこれは本当に細かい部分なので、表現としては声が上がることに気付き「なるほど!」となってほしいなという思いがある。
以上が今回紹介した短歌の解説だ。頭の中を覗いてみて、やっぱり相容れないわ...となったらごめんなさい。
もしもこの解説を見ても引き続き良いなと感じてくれたら、ぜひ今後僕がTwitterに短歌を上げた際に感想をいただけたら。僕の込めた思いと全く違う感想もすごく嬉しくて、それこそ先に挙げた「映画の考察」のようなことが実現できているような気がするので。
何より、人からの反応が何よりも嬉しいので!!これからも!よろしくお願いします!
はつきむ
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