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アトツギが日本を救う 事業承継は最高のベンチャーだ(読書メモ)

2世経営者のリアルが知れる1冊です。

本書は株式会社サンワカンパニー代表取締役 山根太郎氏が、父親が創業した会社を継いだ自らの経験を纏めた1冊です。著者の仕事観や苦労、事業承継に対するアドバイスなどが余すことなく記されています。

自分は著者と同じく家業のアトツギ(候補)ということもあり、タイトルに惹かれて本書を読み始めたのですが、全体を通じて著者の決断力と覚悟に凄みを感じました。逆に事業承継して会社を変えていくことは想像以上にHARD THINGSの世界だということを再認識できました。

では、いつも通り印象に残った内容をピックアップします。

一流の企業を目指して、まずは凡事徹底

すごくわかる気がします。同社のように当たり前のことを誰よりも意識高くできる組織を目指したいです。

何よりも大切なのは、挨拶。一流企業になるためには社員も一流の人間である必要があります。挨拶もろくにできない人間を、一流の人間とは言えません。朝、会社に来て「おはようございます」と言わない、廊下ですれ違って「お疲れ様です」と言わない。これをやめようと言いました。
時間厳守も口を酸っぱくして言いました。私が社長になったころは「ちょっと今日、体調が悪いので昼から行きます」と、平気でメールだけで連絡してくる社員がたくさんいました。それを一回一回、正していくのです。「昼から治るのが確定している病気って、俺、かかったことがないから、差し支えなければ教えてほしいんやけど、なんという病気なの?」と。

世襲社長が認めてもらうには結果を出すしかない

世襲に限らずですが、結果を出すことが周囲を納得させる1番の方法であることは間違いないと思います。

部長のときは本音を言ってくれていたのに、社長になった瞬間、本音も言われなくなりました。みんなが一歩引いて、「こいつで大丈夫か」と、査定しているわけです。
私のように世襲でなった場合は、なるのが簡単だったというと語弊がありますが、社長に就任するまでの過程で結果を求められていません。そのため、なった後は、より大きな結果を出さないと認めてもらえませんし、少しでも失敗すると「だから、同族はあかんねん!」と、足を引っ張られやすくなります。より結果にコミットする必要があるということです。

社長になるのに「満を持して」のタイミングなんてない

自分自身はまだ経験してませんが、実際そうなんだろうなとは感じます。

結局、社長とそれ以下のレイヤーの仕事は全然違う。親になってみないと、わからないことがあるように、社長の仕事は、社長になってみないとわからない部分がとても多いです。「まだ早い」と自分で思ったり、まわりに言われたりするかもしれませんが、ナンバーワンの仕事は、ナンバーツー以下と圧倒的に違います。これは、経験しない限り学べません。

並走期間は必要ない

確かに先代が居座ると社員が結局顔色を伺うようなり、新体制のボトルネックになるような気がします。

一般的には、事業承継をするためには並走期間が必要だと言われています。しかし、本当にそうでしょうか。私が知る限り、うまくいっているケースと、うまくいっていないケースを大きく分けている要因は、並走期間の有無です。ユニクロの柳井さんしかり、星野リゾートの星野さんしかり、並走期間がない、つまり完全に代替わりをしているケースのほうが圧倒的に成功しているような気がします。
もし創業者側が、子どもに継いでもらうことを決めたなら、株だけではなくて権限をすべて明け渡すべきだと思います。「全部渡して、自分は関係ないと言って、いっさい口を出さない」これが、私の中での事業承継の定義です。

オーナー社長に必要なのはMBAより決断力

社長とナンバーツー以下の最も大きな違いは、決断経験の差のような気がします。

人脈を広げるために MBAを取りに行くのはいいと思いますが、 MBAは免罪符にはなりません。「 MBAさえ持っていれば大丈夫」と思っていたら痛い目に遭うかもしれないし、「 MBAを持っているから自分は賢いんだ」と思って謙虚になれないぐらいなら、取らないほうがいいと思います。
社長の仕事は、決断の連続です。決断をして、会社の方針を決める。それを避けて通ることはできませんし、それこそが社長の仕事です。

諸悪の根源は、「先代なら〜」という現状維持バイアス

現状維持バイアスは本当に根深いです。場合によっては反対多数でも押し切る強さが必要かもしれません。

そもそも私は「先代なら、こうするだろう」と思って意思決定をしているわけではありません。会社がより成長するために何をすべきか、社会に大きなインパクトを与えるためにはどうすればいいか、それだけを考えています。先代と手法が違うのは当然のことです。
いつまでも、先代はああだったこうだったと言う人は、表面的には会社や先代のことを大事に思っているように見えますが、結局「自分はこれまで通りのやり方しかしません」「自分からは何もしません」という現状維持バイアスなのです。
私は社員たちに常々「自分が始めた新しいことは、自分で改善してくれ」と伝えています。何かを始めて 1年経ったときに「去年はこの方法は新しかったけど、今、これは新しいのだろうか。今、最善なのだろうか」と、自問してほしいのです。

創業家以外、新卒社員から社長を出したい

まったく同感です。後継者の自分が言うのもおかしいですが、基本的には「能力は血より濃い」の考え方です。適任者いれば非創業者の選択肢もありだと思います。

私には夢があります。それは、創業家以外から社長を出すこと。しかも、外部招聘ではなく、新卒社員から出したいのです。
組織にノウハウを残し、それを使って会社を運営できる人材を育てて、プロパーの人間に渡す。それが私の夢です。

朝令暮改できるのはオーナー社長の武器

個人的に朝令暮改が多過ぎると「それはそれでどうよ?」と思ってしまいそうですが(笑)、責任感の重さが違うからこそなのかと解釈してます。

もし、朝の会議で決まったことが、夕方に覆されたらどう思うでしょうか。サラリーマンの方からすると「おいおい、勘弁してくれよ」という気持ちかもしれません。でも、私からすると、朝令暮改をできるのは大きな武器だと思います。
社長として「昨日、俺はこう言ったけど、ここの視点が抜けてた。だから、ごめん、やめよう」と言えるのは非常に重要だと思います。言い出した手前、引っ込みがつかなくなって、間違っているとわかっているのに進んでしまうのは怖いことです。だから私は朝令暮改をします。

まとめ

著者は先代が亡くなる3日前に事業承継するよう頼まれ、実質的な引継ぎは無しで社長に就任したと言います。本書ではだからこそうまくいった点もあると書かれていますが、それ以上の苦労があったに違いないと感じています。

同じ後継者という立場の自分にとって、事業承継後のイメージがより鮮明になった1冊でした。後継者候補は読んで損はないと思います。

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