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断片 イマジネーションデバイス

 太古の文明において文字が発明されたとき、必要になったのは石板とそれを引っかく棒だっただろう。あるいは石板などなくても、洞窟の壁を削って文字ないし記号を書くことはあったようだ。そのときに必要だったのもやはり手や爪の延長としての棒だったでしょう。その棒はやがて筆となり、またはペンとなり、タイプライターとなり、ワープロやパソコンのキーボードとなり、最後にフリック入力のためのスマホの打ち込みスペースとなった。なんでそんな話をしているのかというと、道具とは何かをいま考えているのだった。ではなぜそんなことを考えているのか。Appleの発表会があるからだ。電子的なデバイスないしガジェットのルーツは古代の石板と棒だったことまで想いを馳せている。

 承前。別におおげさに考えているつもりでもない。そのものの先祖、ということで話している。人類はアフリカから出てきましたよ、というのと同じことで、iPadはそもそものところ数千年前の石板がルーツですよ、という話。だからあれをタブレット端末と呼ぶのかもしれんし。そういやエメラルド・タブレットというものもあったが、ともあれ人間の使う道具としていまiPadがありますね。iPadという道具で人間が何をするのかというと、まあ様々、文を書く、絵を描く、音楽を録音する、写真を加工する、映像を編集する、映画を観る、ゲームをやる、通信の場としてのインターネットをさまよう、実際いろいろなんで、これほどのものがいま生きている私の手元にくることが不思議といえば不思議。現在や現代がいましかなくて、そこに生きているから手に入るというだけのことが不思議。これが千年前に生まれてたら和紙に毛筆で書いてたわけだよ。どうだね。なぜ私やあなたは2022年に生きているのか、スマホやタブレットを当たり前のように操っているのか。千年前に生まれなかったのはなぜか。ここにいる我々とはいったい誰なのか。

 承前。話がずれるので道具論のほうへ。(と、ここまで書いて発表会の時刻になったので、公式で見てきた。映像オサレ。欲しい新型iPad Airと新型iPhone SEのとこまで見た)ペンと紙、というのは私はまだ使っている。万年筆を一本、他は十本かそこらのボールペン、紙のノート各種、京大式カード、手帳二種。やはり自在に書けることにおいて、ペンと紙と手、というやり方は気に入っている。Appleがタブレット用にペン型のアクセサリを出すのもわかる。より自然にアウトプットするためには手書きの感覚のほうがいいのだろう。身体感覚として自然というか。とはいえキーボードを叩くのもいまでは広く自然なことになってはいるが、まだまだ、ペンで書くことを最先端のところでもやめていないね、人間。絵もキーボードじゃ書けんからね。こちらはペンタブというものが担当した。話の結論はなんだかわからなくなっているが、とにかく、道具によって人間に何ができるかというと、ラスコーの壁画を見よ、イマジネーションによってはあのようなことさえもできる。道具とはそのための手段だ。想像と創造に関わるものだ。そうして新たな力を求めて、私は今回のiPad Airを買うでしょう。いま持っている第一世代のものもほぼ使い潰してしまっている。noteを開くのにも時間がかかるようになった。ボロボロじゃんかよ。なけなしのカネで買いますよ新型。

 クラシックから離れた。いまだけ離れてる。ロックを聴いている。先ほどはマキシマム ザ ホルモンをヘッドホンで聴いててノリノリ、頭痛は悪化。昔から音楽は好きで、昔というと少年期だが、少年らしくロックから入りましたね。あの頃の愛聴盤はエアロスミスと黒夢だったことよ。わかりやすいとんがり方をしていた。世代が違えば尾崎豊とかに行ってたのかもしれないな。しかしブルーハーツは世代じゃなくても聴いてた。MDで何枚か持ってた。さてロックとはどういうものとしていま世界にありますか、というとさっぱりわからない。グリーンデイはわかる。オアシスもレディオヘッドもわかる。これがフォールアウトボーイあたりから怪しくなってきて、現在のアーティストなどほぼ知らないようだ。邦楽のほうでかろうじて中村一義と米津玄師とピロウズなら、というくらいか。若い子はいま何を聴いているの、と問うおじさんになった私がいる。何がいま新しいの。うっせえわってなぜキレているの。

 アンブローズ・ビアスの短編集を読んでいるが進まない。一編一編がバシバシ響いてきて、なかなか続けて読めないのだった。これけっこうすごいんじゃないのか。あまりにおもしろい。いま読んでるのは光文社古典新訳のものだが、全五巻の全集も古本で買って放置してあるので、読めばこの作家からは学べることが多そうだ。だいたい『悪魔の辞典』のファンだったからな、相性はいいのだろう。ファンでも半分くらいでやめちゃったんだけども。それでも良書だったと思うような、あの筒井訳のデッカい一冊。



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