見汐麻衣

singer,musician / writer ✍️. 初エッセイ集『もう一度 猫と…

見汐麻衣

singer,musician / writer ✍️. 初エッセイ集『もう一度 猫と暮らしたい』(Lemon House Inc. )発売中。 Lemonhouse https://lemonhouse.jp/artist/mishio-mai

マガジン

  • 寿司日乗または雑記

    日記。雑感。

  • おはよう、荒野。

    見汐麻衣による連載エッセイ。毎月、隔週土曜日の更新です。

  • NEWS

    新作、新譜リリース、ライブスケジュール等についてのお知らせなどになります。

  • 音楽

    音楽にまつわる雑文。 寿司日記に書いていたものをアーカイブしていこうと思います。

  • お茶のお供に

    ■毎日なんでもないことを繰り返す中で、発見と気付きの中間に佇む様な瞬間が度々訪れる。見てみぬふりをして通り過ぎたって構わない、忘れられる過去からの賜物。皆様の一服のお供に。 別のサイトにアップしていたエッセイをこちらにまとめました。

記事一覧

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見汐麻衣エッセイ集『もう一度 猫と暮らしたい』お取り扱い店舗

見汐麻衣 エッセイ集 「もう一度 猫と暮らしたい」 著者:見汐麻衣 仕様:四六判 変形 上製本 192ページ 装画・デザイン:横山雄 編集:花井優太(Source McCartney) …

見汐麻衣
10か月前
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寿司日乗499〜505

2024年4月8日(月)曇りのち雨 朝、東京に戻り井の頭線に乗って俯きウトウトしている視線の先、いつもより多いピカピカの革靴、ローファーが行ったり来たりしていて「あぁ、…

見汐麻衣
3日前
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寿司日乗492〜498

2024年4月1日(月)晴れ 朝、起きてラジオをつける。用事で外出すると近所の桜が咲いていた。去年末まで所用で13年間よく通っていた渋谷の桜丘辺りを歩くたびに春を感じてい…

見汐麻衣
3日前
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鉄の匂い

 父と母の共通の友人に早川夫妻が居た。早川家の大黒柱、ブンちゃんは大型トラック運転手で面倒見のいい人だった。ブンちゃんはとても気前のいい男で誰彼構わず親身になっ…

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見汐麻衣
13日前
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寿司日乗485〜491

2024年3月25日(月)雨 しとしと雨の音、春雨けぶる空の色。やっと春のしっぽり感が。寒くもなく気分がいいのでこのまま飛び起きて掃除機をかけて拭き掃除。アジフライが頭…

見汐麻衣
2週間前
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寿司日乗478〜484

2024年3月18日(月) 晴れ 昼、どーしても一風堂のラーメンが食べたくなり食べに行く。旨い。白飯に高菜ともやしを乗せて良く混ぜて食べる。至福。歩いて隣駅のスーパーへ。…

見汐麻衣
3週間前
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とまとおじさん3

 どんな仕事でもそうだろうが、その仕事に従事した人だからこそ得ることのできる知識、経験に基づき新たに生まれる視点がある。成熟するために必要な時間を経て言葉にでき…

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見汐麻衣
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寿司日乗471〜477

2024年3月11日(月) 晴れ 朝、起きてラジオをつける。洗濯機を回している間、昼飯に出る。冷麺が食べたいので焼肉屋のランチにして旨くも不味くもない冷麺を啜りながら失敗…

見汐麻衣
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寿司日乗464〜470

2024年3月4日(月)晴れ 朝、起きるも気分が優れないので洗濯機を回してカカオチョコレートを食べる。夕刻まで作業に勤しむもどうも効率が悪いなとうすうす気付いているがや…

見汐麻衣
1か月前
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とまとおじさん 2

「お母さんはさぁ、とまとおじさんのことどやん思っとる?」 「どやんもこやんもなかやろ。みんないいお客さんやんね。なんでそやんかこと聞くとね?」 「別に、ただお客さ…

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見汐麻衣
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寿司日乗457〜463

2024年2月26日(月)曇 朝起きてジャッキー・チェンの映画を観るでもなく観てホテルをチェックアウト。帰京は関西国際空港経由羽田(トランジット5時間!)ただ移動する1日。…

見汐麻衣
1か月前
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見汐麻衣エッセイ『もう一度 猫と暮らしたい』発売イベントのお知らせ

見汐麻衣初のエッセイ集 『もう一度 猫と暮らしたい』(Lemon House Inc.) 2023年5月発売からはや9ヶ月、引き続き好評頂いております。 ひとえに皆様のおかげです。 今回、…

見汐麻衣
1か月前
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とまとおじさん 1

 1989年、10歳だった私は週末の殆どを母の営むスナックで過ごしていた。学校と家の往来、近場の公園や友人の家、近所をうろつき回るだけの世界では味わえない社会の縮図の…

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見汐麻衣
1か月前
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寿司日乗450〜456

2024年2月19日(月)晴れ 朝、起きれないラジオもつけていない。締切のある諸々が停滞しているが気にしないようにして近所の食堂で昼飯。ここ数年通っていたのだが徐々に味…

見汐麻衣
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【note】隔週土曜日更新の『おはよう、荒野』ご購入頂いている皆様、2月24日(土)更新の回が遅れてましてごめんなさい。27日(火)に更新します。お待ちください🙇‍♀️🙇‍♀️🙇‍♀️

見汐麻衣
1か月前
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寿司日乗443〜449

2024年2月12日(月)晴れ 昼、先週から続く鬱屈した気分と体調が漫画や映画をひたすら観続けることと毎日のルーティンによりなんとか持ち直してくる。 ヤマシタトモコ『違国…

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見汐麻衣エッセイ集『もう一度 猫と暮らしたい』お取り扱い店舗

見汐麻衣 エッセイ集 「もう一度 猫と暮らしたい」 著者:見汐麻衣 仕様:四六判 変形 上製本 192ページ 装画・デザイン:横山雄 編集:花井優太(Source McCartney) 価格:2,000円(税込) 発売日:2023年5月27日(土) 発売元:Lemon House Inc. 随時更新していきます。 皆様の暮らす街の本屋さんで見かけた際は是非、手にとってみて頂けたら嬉しいです。 宮城 仙台 button / ペンギン文庫 岩手 盛岡 BOOKN

寿司日乗499〜505

2024年4月8日(月)曇りのち雨 朝、東京に戻り井の頭線に乗って俯きウトウトしている視線の先、いつもより多いピカピカの革靴、ローファーが行ったり来たりしていて「あぁ、春だなぁ」と思うなど。 睡眠不足の為、昼寝をと思い横になるものの寝付けず。仕方なし明日のみしお食堂の買い出しと仕込みなどやり、疲れきったところで22時半には就寝。疲れが足りない、とは変な言い方だが疲れ果てた後の睡眠はこの世でなにより幸せかもしれないと思います。 2024年4月9日(火)雨のち曇り強風 朝、

寿司日乗492〜498

2024年4月1日(月)晴れ 朝、起きてラジオをつける。用事で外出すると近所の桜が咲いていた。去年末まで所用で13年間よく通っていた渋谷の桜丘辺りを歩くたびに春を感じていたけれど、それも今年からはなくなったと思うと少し寂しい。同じく13年間渋谷のあの一帯の変容する様を見てきた。都市開発ばかりしている東京には決まった顔がないですね。まぁ土地や街、都市の風景はそれぞれ思い出の中にあるものなんだろう。2011年から2023年の鶯谷町へ向かう道順沿いの全てが私にとっての渋谷の風景。

鉄の匂い

 父と母の共通の友人に早川夫妻が居た。早川家の大黒柱、ブンちゃんは大型トラック運転手で面倒見のいい人だった。ブンちゃんはとても気前のいい男で誰彼構わず親身になって世話を焼いてしまうものだから皆んなに慕われ、どこに出向いても「ブンちゃんブンちゃん」と町内の人や商店のご主人や奥様に至るまで幅広く愛されていた。ブンちゃんの奥さんテツコおばちゃんは美容室を営んでいた。母は私が生まれる前から早川美容室に通っており、父もまた店に通っていたらしい。母と父との関係が芳しくなかった時も、母は早

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寿司日乗485〜491

2024年3月25日(月)雨 しとしと雨の音、春雨けぶる空の色。やっと春のしっぽり感が。寒くもなく気分がいいのでこのまま飛び起きて掃除機をかけて拭き掃除。アジフライが頭に浮かんだので定食を食べに外出。アジフライはレモンをかけてそのまま一枚、もう一枚はソースにチョンとつけて食べる。旨い。 近所に咲く木蓮が雨に打たれてセクシー。 帰宅後音楽など聴いて久しぶりに好きな曲のコードを耳でひろうなどする。 「はぁー!」「ここでこの展開なんだ、へぇ!」など感嘆しながら構成の自由さを改め

寿司日乗478〜484

2024年3月18日(月) 晴れ 昼、どーしても一風堂のラーメンが食べたくなり食べに行く。旨い。白飯に高菜ともやしを乗せて良く混ぜて食べる。至福。歩いて隣駅のスーパーへ。明日のみしお食堂の食材を購入し、豆腐屋で豆腐と揚げを買う。半日かけて仕込みをやる。 老舗の八百屋が更地になってしまい、豆腐屋の店主と話す。「寂しいけど仕方ないね」そう、全部がだいたいそうだ。寂しいけど仕方ないのだ。人生。しかしやるしかないことの繰り返し。 久しぶりに沢山料理をしたらスッキリしていた。 明日は

とまとおじさん3

 どんな仕事でもそうだろうが、その仕事に従事した人だからこそ得ることのできる知識、経験に基づき新たに生まれる視点がある。成熟するために必要な時間を経て言葉にできる時が訪れる。言葉にすることで理解できるものごとがある。懸命に毎日を過ごす中で言葉にせずとも身体に吸収され消えていくだけの真意もある。試行錯誤を繰り返し社会の中で何者かに成っていく私達はただ、目の前のことを実直に真っ当にやっているだけに過ぎないのだが、人との交わりの中で時として自身の正義が誰かにとっての悪にもなることも

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寿司日乗471〜477

2024年3月11日(月) 晴れ 朝、起きてラジオをつける。洗濯機を回している間、昼飯に出る。冷麺が食べたいので焼肉屋のランチにして旨くも不味くもない冷麺を啜りながら失敗したと思うが時すでに遅し。某大学の男女学生集団の高らかな笑い声と話し声が耳をつんざくものの、四方八方放たれる若さは一瞬だもの。いいじゃない。ただ、大きな声で話している内容には眉をひそめてしまう。 19歳男は言う。「〇〇の親が年寄り過ぎてウケる。入学式の時、みた?おじいちゃんおばあちゃん過ぎてマジかと思った」

寿司日乗464〜470

2024年3月4日(月)晴れ 朝、起きるも気分が優れないので洗濯機を回してカカオチョコレートを食べる。夕刻まで作業に勤しむもどうも効率が悪いなとうすうす気付いているがやる。孤独にもグラデーションがあるのか、優劣があるのかなどと作業している時に考えるようになっており頭を左右に振るなどする。不意に自分の名前を何度も何度も紙に書いてゲシュタルト崩壊する瞬間に解放された気分になる。暗い。 夕方、Kと食事。台湾土産を渡し、酒など飲み2軒目は馴染みの店に移動しKが普段飲まない酒を飲ん

とまとおじさん 2

「お母さんはさぁ、とまとおじさんのことどやん思っとる?」 「どやんもこやんもなかやろ。みんないいお客さんやんね。なんでそやんかこと聞くとね?」 「別に、ただお客さんの中でいちばん話しやすいけん」 「……麻衣よ、話しやすいけんがいいひとやと思わんこと。やさしいけん、親切やけん、話しやすいけんてそいはね、その人間の質とはなんも関係なかけん。気をつけにゃならんとよ」 店に向かう車中、母にそれとなく尋ねてみたものの諭されただけだった。 「あんたはどう思っとるかわからんばってん、お母さ

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寿司日乗457〜463

2024年2月26日(月)曇 朝起きてジャッキー・チェンの映画を観るでもなく観てホテルをチェックアウト。帰京は関西国際空港経由羽田(トランジット5時間!)ただ移動する1日。飛行機で「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years」観る。インタビュアーがジョンに質問する。「ライブが素晴らしいね。熱量を維持する秘訣は?」23歳のジョン・レノンはこう言う。 「コツコツやるだけさ」素直な答えだと思う。本当にコツコツやるだけだ。 関空到着、搭

見汐麻衣エッセイ『もう一度 猫と暮らしたい』発売イベントのお知らせ

見汐麻衣初のエッセイ集 『もう一度 猫と暮らしたい』(Lemon House Inc.) 2023年5月発売からはや9ヶ月、引き続き好評頂いております。 ひとえに皆様のおかげです。 今回、東京と大阪にてトークショウ(大阪はライブもあります)開催します。東京は文筆家、僕のマリさんとご一緒させて頂きます。 大阪はトークゲストに「blackbird books」店主、吉川祥一郎さんをお迎えし色々なお話ができればと思っております。 ご来場、お待ちしております。 【東京】 三軒茶屋 

とまとおじさん 1

 1989年、10歳だった私は週末の殆どを母の営むスナックで過ごしていた。学校と家の往来、近場の公園や友人の家、近所をうろつき回るだけの世界では味わえない社会の縮図のような、店に集まる普段あまり会うこともない大人達に場合によって子供として扱われ、態度や言葉が私に対するおべんちゃらだと察した途端に意気消沈、次の瞬間には腹が立つような子供だった。 子供は子供なりに大人に気を遣い、その気遣い方は物知らず故、大人のそれより鋭い割に表現は下手くそ。常に敏感になってしまうのだが大人ときた

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寿司日乗450〜456

2024年2月19日(月)晴れ 朝、起きれないラジオもつけていない。締切のある諸々が停滞しているが気にしないようにして近所の食堂で昼飯。ここ数年通っていたのだが徐々に味が落ちていくことがつらい。今日初めてオカズを残してしまう。店主のおじいちゃんも多分引き際を考えているのかもしれない。せつない昼食。 タモリ本が面白いので読み終わりたくないが読む。のち夕刻まで作業。 夜は友達がレゲエマンデーという企画をやると知り阿佐ヶ谷の馴染みの店へ。音楽がいいと静かにうまい酒が飲めるし、話

【note】隔週土曜日更新の『おはよう、荒野』ご購入頂いている皆様、2月24日(土)更新の回が遅れてましてごめんなさい。27日(火)に更新します。お待ちください🙇‍♀️🙇‍♀️🙇‍♀️

寿司日乗443〜449

2024年2月12日(月)晴れ 昼、先週から続く鬱屈した気分と体調が漫画や映画をひたすら観続けることと毎日のルーティンによりなんとか持ち直してくる。 ヤマシタトモコ『違国日記』安藤ゆき『町田くんの世界』はいつ読んでも泣く。生きていくことで軋みが酷くなる心身に油をさすような漫画があることのありがたさ。 夕方、散歩にでて前を歩く人と同じテンポ、同じ歩き方を模写して歩く、をやる。時々そういうことをする。自分のそれとは全く異なる他者が備えた歩き方、テンポをただ真似ることで知らない