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ボケの花が教えてくれる「拙を守る」生き方とは?
ボケという名前の由来は何だろうか?
千駄木の路地裏でボケを見かけました。梅に続いて春の訪れを知らせてくれる花です(まだ寒いけど)。微妙な色合いで丸みのある花は愛嬌がありますね。原産地は中国、平安時代に日本に渡来して各地に広がったそうです。
ところで前から気になっていたのですが、「ボケ」という名前の由来は何だろうか。「ボケる」「とぼける」とは関係ないと思うけど。
中国では果実が瓜に似ていることからボケは「木になる瓜=木瓜」と表記されます。この「木瓜」が「もけ」あるいは「ぼっくわ」と読まれ、転訛したものがボケの名前の由来といわれます。
「木瓜咲くや 漱石拙を 守るべく」
明治時代の文豪、夏目漱石はボケを愛した一人です。『草枕』にこんな一文があります。木瓜の花の描写が独特で、そして意味深い内容です。
木瓜は面白い花である。枝は頑固で、かつて曲った事がない。そんなら真直かと云うと、けっして真直でもない。ただ真直な短かい枝に、真直な短かい枝が、ある角度で衝突して、斜に構えつつ全体が出来上っている。そこへ、紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲く。柔らかい葉さえちらちら着ける。評して見ると木瓜は花のうちで、愚かにして悟ったものであろう。世間には拙を守ると云う人がある。この人が来世に生れ変るときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい。
下から2行目の「拙を守る」とはどういうことなのか?初めて知りましたが、「目先の利に走らず、不器用でも愚直に生きる」ことを意味するそうです。どうやら出典は「陶淵明」の五言詩のようです。
「余も木瓜になりたい」と綴るくらいですから、「愚直に生きる」ことへの思いが強かったんでしょうね。漱石は「拙を守る」ことへの思いを込めたこんな俳句も残しています。
木瓜咲くや 漱石拙を 守るべく
成功されている経営者は軸が明確でぶれません。「目先の利に走らず、不器用でも愚直に生きる」ことを大事されているのだと思います。ボケの花を見るたびに、「拙を守る」ことを自覚しようと思います。