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勇者又は勇者のパーティーになれと王様に命令されたが 超絶面倒臭いので断りました 2話

     櫻井 澪からの貰い物
 輝は約束の日を忘れてしまっていた、全速力で走りながら田所に電話を掛けるが繋がらない、画面を良く見るとメールが来ていた。輝は信号待ちを利用してその間にメールを開く、メールは田所からで今日行けなくなったと書いてあり、信号が変わりスマホをポケットに押し込むと再び全速力で走り始めた。
 駅までもう少し、そう思った矢先にスマホが振動を始めた、輝はポケットからスマホを取り出すと待ち合わせの彼女からだった、直ぐに耳に当て落ち着きのない呼吸を整え小さな声で「もしもし」と話し掛ける。
澪「あの、櫻井 澪(さくらい みお)です、待っていますので急がなくて良いですから」
輝「え?···あ、すみません!!もう近くに来ていますのでもう少しだけお待たせします」
 輝はスマホを再びポケットに押し込むと、今まで以上に速く走った。
 息を切らして辿り着くと、彼女は優しく微笑んでハンカチで輝の汗を拭き取り始めた。
輝「あ、汚れますから」
澪「使われないハンカチを持っていても仕方ないですので」
 そう言って息を整えている輝の汗を拭き取った、呼吸が落ち着いて来た所で輝は澪に話し掛ける。
輝「あの、何で会った事も無い俺なんかに会いたいって」
澪「詳しくは話せません···それと突然不躾な質問をしますが許して下さい」
 輝は首を少し方向けるが直ぐに小さく頷いた、彼女の声は透き通る様に優しくその声に聞き入っていると話し始めた。
澪「アナタは今の人生に満足していますか?」
 本当に不躾な質問だ、何かの宗教でも勧誘するつもりなのか?まぁだけどこの人は田所の紹介だから一応相手しないと···一瞬間を開けて「いいえ」と小さく首を振る。
澪「では目の前で困っている人が居たらアナタは勇者になれますか?」
 は?何だ勇者って···ってか目が真剣だよ、真面目にそんな質問されてもなぁ······仕方ない付き合ってやるか、輝は頭を掻きながらボソボソと話し始めた。
輝「状況にもよります、俺は基本人と係るのが好きでは無いんです、それに助ける相手に害があると判断したら助ける事はしないでしょう」
 それを聞いた彼女の顔は少し寂しそうだった。拙い事言ったかもと再び頭を掻きながら1つ溜め息を付いて話しを続けた。
輝「正直な気持ち、命のやり取りが目の前で行われていたのなら助けるかもしれません、ですが矢張りその時の状況が最優先である事には変わりありませんね?助ける価値の無い者を助けようとはしないでしょう」
彼女はそっと輝の手を握ると切ない顔で見詰めて言った。
澪「救って欲しい」
 聞き取れない程の小さな声でそう呟くと、輝の右手首に白く平べったいブレスレットを取り付け、聞き取れない程の小さな声で『お願い』と呟くと、初めからそこには存在していなかったかの様に姿が消えた。
輝「はぁ?ちょっと待ってくれ!!何が起こったんだよ!!ひ、人が消えた······え?周りの奴は誰も気付いて···ないんだ」
 輝は田所に事の説明をする為に電話を掛ける···が何故かスマホは圏外になっていて掛けられない、それに付けられたブレスレットは外れないと来た、現状の処理が全く出来ていない。
 家に帰り落ち着いて考えてみるしか無いが、折角駅まで来たのだからとゲームショップに足を運ばせてから帰る事にした。
 テンパっているのか落ち着いているのか、さっぱり分からない行動だ·········。
 エレベーターに乗り7階を押す、ドアがゆっくり閉じて上昇した。
 7階に着きフロアに出ると田所からの着信が来た、慌ててエレベーターに戻り1階を押すが、扉が閉まるギリギリに一人の女性が飛び込んで来た。
紬「あ、悪いねオジサン、私も乗っけて?」
輝「おじ···」
 何だこの常識外れの女は···年は見た目二十代後半か?可愛らしいとは思うが服装が派手だ、それに両目の下に広がるソバカスが残念だ、スタイルはそんなに悪くないのに···矢張りネックはソバカスか。
 そんな事を考えていると扉が閉まった、エレベーターが下降し始めた瞬間突然大きく揺れ始めた。左右に大きくそして激しく、女は地べたに這いずり悲鳴を上げている、輝は壁に手を当て踏ん張るも体が壁に叩き付けられてしまう。
 女の悲鳴が耳障りだ···そう思った瞬間「ガコン!!」と言う音と共にほんの少し体が浮いた。
輝「お、落ちてる!!」
 輝の言葉を聞いた女はパニックからか、悲鳴の音量が2ランク上がった。
 輝は余りの不快感から両耳を塞いだ、それと同時に目の前が真っ暗になり激しい衝撃が身体全体を襲った。
 輝「·········な、何か可笑しい···物音が一切しない、それに全身を叩き付けられた筈なのに痛みが全く無い···落ち着け、確かにエレベーターは落下していた、落下後の衝撃も感じた······無事?だったのか?」
 そんな事を考えていると近くでゴソゴソと音がする、恐らく喧しいあの女なのだろう。
輝「大丈夫ですか?」
 と小さく声を掛けるも応答は無い、女の事は一旦保留にしてもう1つ確かめなければならない事があった。それは壁だ、何を言っているのか分からないと思うがそれは輝も同様だった。エレベーターボックスの中に居たままならば手を伸ばす程度で壁に触れられる、だが幾ら手を伸しても壁に触れる事は出来ない。
「ここはどこだ?」そう呟いた時、目の前の奥の方に僅かだが小さな明かり見付ける、輝は恐る恐るそこに向かって歩き出す事にした。
輝「何だよこれ」
 輝の目の前には一脚の椅子、そしてタッチパネル式のモニターがあった。画面に何か映し出された様だが全く見えない、どうやら椅子に座らないと見えない仕組みになっているらしい、輝は罠を警戒しながら椅子に座ると、モニターには驚愕な事が書いてあった。

 アナタハ タヒ ニマシタ

輝「タヒ?···これは恐らく死と言う意味だろう」
輝は唾を飲み込み手の汗を握った、すると画面が切り替わり新しい言葉が現れた。

 アナタハ選バレシ者 コレカライクツカ質問シマス 正確二答エ パネル二触レナサイ

 輝は再度唾を飲み込むと画面が切り代わり質問が映し出された。

 『自然ガ好きデスカ?』 Yes No

輝「は?何だこの質問は、ってか何で漢字と片仮名なんだよ······これ、答えないとどうなるんだ?」
 暫く放ったらかしにしてみるが、矢張り予想通り画面は一向に変化しない、そこで仕方なく輝はNoを選択、すると次の質問が現れた。

 『仲間意識ガ強イ?』 Yes No

輝「Noだ」

 『少数ヨリ多数?』 Yes No

輝「No」

 『長ク生キラレルノハ良イ?』 Yes No

輝「Yes」

 『空想ヤ幻想ハ好キ?』 Yes No

輝「Yes···これって、若しかして転送する為の診断だったり···ってんな事ある訳無いか」

 『神ヲ信ジル?』 Yes No

輝「絶対にNoだ!!」

 『知ラヌ種族ト対応出来ル?』 Yes No

輝「おいおい本当かよ、まさか本当に転生の為の質問なんじゃ······Yes」

 『旅ハ好キ?』 Yes No

輝「Noだ」

 『生マレ変ワル年齢』

輝「内容が変わった、今度は数字を入れるのか······新しく転生するのならば若い方が、いっそ0歳の新生児から···いや駄目か、産まれたてから身体を作るのはリスクがある、若しかしたら今までの質問に意味があったんじゃ·····だったらここは異世界でのテンプレで大人になる平均年齢の15歳だ」

 『容姿ヲ変更出来マス』

 画面が二分割され左側には輝の顔のアップ、右側には身体全体が移し出された、これは面白い、指で操作すれば俺の顔や身体が変えられる、輝は色々と操作し自身のアバターを作りあげた。すると画面に最後の質問と表示され、その内容が『好きなものを1つ記入せよ』とあった。
 随分ざっくりした質問だ、輝は直ぐに選択はしなかった、時間を掛け有効なものを考えている。
輝「これは凄く重要な質問だぞ?···道具にするのかそれとも魔法か、だが若し転生先で自由に魔法が使えるのならば必要無い、道具にしたって良し悪しが分からないし、力など身体能力に関する事も選択出来るのだろうが、それは鍛錬次第でどうにか出来るスキルだし······スキル?···そうか!!まぁでもこれは一種の賭けだ、上手く行けば有効的に、果たして通用するのか」
 ゲーマーの勘が冴え渡った、さっきまでの質問は試験だと思ったからだ。ならばこれは色々と試されているのだと、そして輝が導き出した答えを打ち込む。
ピッピッピッ
 暫く画面が変わらなかった、輝は駄目かと諦めかけた時画面が切り替わった。

 必要ナスキルヲ六ツマデ記入

輝「よし上手く行った!!6個だけか···いや、これは可也りの譲歩なんだろうな?···6個か、ならば1つ目は」
ピッピッピッピ

 1ツ目ソウゾウ

輝「······迷うな、初めに思った通りの6個で」
ピッピッピッピッ

 2ツ目セイゾウ

ピッピッピッピッ

 3ツ目ユウゴウ

ピッピッピッピッ

 4ツ目シュウゾウ

ピッピッピッピッ

  5ツ目カンゾウ

ピッピッピッピッ

 6ツ目マゾウ コレラヲ変換シマス
  1創造 2製造 3融合 
  4修蔵 5肝臓 6魔増

輝「待て待て待て待て!!4.5.6は滅茶苦茶だ、クソ音声システムなら楽なんだが」

 「認証しました、これより音声システムに切り替えます」

輝「出来んのかよ!!···ったく、4番は蔵じゃない造るだ」

 修造

輝「Yes、5は内蔵じゃない、感覚を造るだ」

 感造

輝「Yes、で6は魔を増やすのではなく造るだ」

 魔造

輝「Yesだ」
 画面が切り替わるが現れた言葉には目を疑った、だが輝は直ぐに微笑み静かに目を閉じた。

 貴方の次なる命に神の加護があります様に

輝「神は信じてないけどな?それよかヤッパ好きなものってチートって答えた方が良かったかなぁ」

 ······ニン·············ョウ················シタ



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