一緒に死んでみますか

生きていることに価値を見出せないという君は、側にいてほしいと願うわたしに、一緒に死んでみますかと言った。

君の提案にわたしはあまり驚かなかったけれど、それでも側にいられるならと二人で準備を進めた。場所や日程、方法について話し合うのだけれど、不思議と楽しくてこれから死ぬんだっていう感覚があまりにもなかった。

「ねえ、君の両親はどう思うのかな」
問いかけるわたしに、多分興味ないと思いますよと答える君。
「わたしの両親はどう思うかな」
少し考えて、逆にどう思いますかと問われた。正直悲しむと思うけれど、一ヶ月も経てばきっとすぐにわたしのことなんか考えなくなると思った。紙で指が切れるような痛さで需要のなさを感じた。

「ねえ、どうせ死ぬなら結婚しようよ」
君はうーんと唸って、いいですよ、と一言。漂白剤なんかでは消せない染みがどこまでも続いて、柔軟剤のような甘い香りが漂った。

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