見出し画像

【要約】苦しかったときの話をしようか / 森岡 毅 著 (前編)


簡単解説

この本は私が2022年で読んだ中でベスト3に入る良書です。

本書は著者が自身の子どもたちのために書き溜めたものをほぼそのままの形で書かれており、著者がP&Gに在籍していたときのことが書かれていたり、「キャリア戦略のフレームワーク」を通じてある種の自己分析を行えるようになっています。本書を読むことで自身のキャリアについて深く考えることができ、今後のキャリアを明るく照らしてくれるような本です。

ぜひこの要約を読んで面白そうと思った人は書籍も読んでみてください!

こんな人におすすめ!

・キャリアに悩む人

・就活に不安を抱いてる人

・マーケティングの仕事について知りたい人

・自分の強みを知りたい人

著者紹介

森岡 毅

戦略家・マーケッター

高等数学を用いた独自の戦略理論、革新的なアイデアを生み出すノウハウ、マーケティング理論等、一連の暗黙知であったマーケティングノウハウを形式知化し「森岡メソッド」を開発。経営危機にあったUSJに導入し、わずか数年で劇的に経営再建した。

1972年生まれ。神戸大学経営学部卒業後、1996年P&G入社。ブランドマネージャーとして日本ヴィダルサスーンの黄金期を築いた後、2004年P&G世界本社(米国シンシナティ)へ転籍、北米パンテーンのブランドマネージャー、ヘアケアカテゴリー アソシエイトマーケティングディレクター、ウエラジャパン副代表を経て、2010年にUSJ入社。2012年、同社CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、執行役員、マーケティング本部長。USJ再建の使命完了後、2017年、マーケティング精鋭集団「株式会社刀」を設立。マーケティングとエンターテイメントで日本を元気に」という大義の下、数々のプロジェクトを推進。刀の精鋭チームを率いて、USJ時代に断念した沖縄テーマパーク構想に再び着手し注目を集める。また、破綻した旧グリーンピア三木(現ネスタリゾート神戸)をわずか1年でV字回復させるなど、早くも抜群の実績を上げている。

※参照元:森岡 毅:作品一覧、著者略歴 – アマゾン

要約

第一章 やりたいことがわからなくて悩む君へ

大学生になって社会人になる時期が近づいてきたら、自分の進むべき道は自然に見えるようになると思ってたのに、そうはならなかった!

そんな君に役立ちそうな私なりの“集積”をまとめて、餞別として書き記すことにした。二十数年先のキャリアを歩き、就職活動も採用活動も多くの現場を見てきた私のパースペクティブの中には、君にとって有用なものも、そうでないものもあるだろう。くれぐれも自分でよく考えて取捨選択してほしい。

やりたいことがわからないのはなぜか?

やりたいことが見つからないのは、自分の中に「軸」がないからだ。そして軸がないのは自分自身を知るための努力を十分に行ってこなかったことに起因している。自分の中に基準となる「軸」がなければ、やりたいことが生まれるはずも、選べるはずもない。人が重大な選択を迫られるとき、「軸」がないこと自体が大きな苦しみの原因になるのだから。

 例えば私の場合、「①経営者に必要なスキルが身につくこと、②成長のスピードが早いこと」の2つの軸で考えていた。人によって大切なことは違うので、この軸はまさに「人それぞれ」なのだ。したがって、君に向けてこれから私が書き記す内容は、君自身の「軸」を君なりに考えて形成していくために必要な視点を集約していくことになるだろう。

「経験がないのに考えても仕方がない」は間違い!

 自分のことを知っている度合いをSelf Awarenessという。これが未成熟なまま、己の軸がないまま就活が始めてしまった大人に限って、「仕事もしたことがないのに強みや軸なんて分かるわけがない」という。こういう大人は愚かで、しかも無責任だ。Self Awarenessは、いつ考えても早すぎることも遅すぎることもない。「経験がないから考えてもわからない」という愚かな言葉を信じて、就活のときまで悩む努力を怠ってきたツケの大きさが苦しみの原因だと認識できるならば、今考えないとそのツケがもっと大きくなることも理解できるだろう。

君の宝物はなんだろう?

 「宝物」はすべての人が持っている。すべての特徴は宝物になり得るし、全く特徴がないというのもそれ自体が極めてレアな特徴だ。つまり特徴のない人はいない。同じ特徴が強みになるのか弱みになるのか決めているのは文脈である。「空気を読めない」と言われる人の同じ特徴が、別の文脈では「他人に流されずに、自己主張をしっかりできる」という宝物になる。キャリア戦略とは、その人の目的達成のために、その人が持っている“特徴”を認識して、その特徴が強みに変わる文脈を探して泳いでいく、その勝ち筋を考えるということだ。

 君の人生における時間の使い方として、その宝物を必死に磨くことよりも大切なことが他にあるのだろうか?宝物は正しく磨けば武器になる。そして同じような武器を持つ人たちと評価される中で、相対的に秀でていかなくてはならないのだ。そのスキルこそが、相対的に最も持続可能な個人資産となる。

会社と結婚するな、職能と結婚せよ!

 日本社会をよく見てごらん。ホワイトカラーの領域にも機会化による合理化の可能性があるのに、会社の看板がないと仕事ができない人や、会社の外で通用するスキルを身に着けずに便利に使われている人で溢れているだろう。会社がちゃんと続いて自分の職も守られて最後まで待遇がハッピーならば、それでもいいだろう。彼らの世代ならば逃げ切れるかもしれない。しかし、たとえ逃げ切れたとしても、その人生は君にとって魅力的か?

 スキルを身につけるということはその真逆の生き方だ。プロとして十分なスキルを身につければ主導権は君に移る。配偶者が転勤になっても転勤先でスキルを活かした仕事が選べるだろう。会社から言われた仕事をまんべんなく薄く分散して、経った先に、君は何らかのプロになっているだろうか?「私はどこに勤めている」といえる人になれても、「私は何ができます」と言える人になっているだろうか?

大丈夫、不正解以外はすべて正解!

 この章で最後に話しておきたいことがある。それは就職活動や転職活動の全般において当てはまると私が信じていることだ。君にとってキャリアの正解はたくさんあることを覚えておいて欲しい。万が一最初の会社で失敗しても、2つ目を選べばいいだけだ。どこかにたった1つのキャリアの正解を探さないといけないと思っていないかな?しかし、社会人になることも、仕事に就くことも、そういうことでは全くない。

 では不正解とは何か?不正解とは、自分にとって決定的に向いてない仕事に就いてしまうことである。不正解パターンは、やってみてから自分に向いていないことに気がつくのが典型だ。そういう人は会社に入る前と後で大きなギャップを感じている。そういう人を突き詰めると、こんなはずではなかったのは会社ではなく、自分自身であることが多いのだ。不正解をつかんだ原因の大半は、自己分析不足に起因していると私は思う。私は自己分析さえしっかりやっておけば、大半の不幸は回避できると考えている。要するに、たった1つの大正解、大吉を引こうとするな!という話。大吉かどうかを決めるのは会社ではない、入社後の君自身なのだ。

第2章 学校では教えてくれない世界の秘密

 社会人になろうとする君に伝えておきたい事がある。私がもっと早く知っておきたかったと思う、この世界の本質についてだ。

ここで伝える内容は5つのポイントに絞る。予め伝えておくが、今から話す事は私自身の現在のパースペクティブにすぎない。あくまで、私がそう世界を捉えているということで君なりの根拠で否定してくれるのは大歓迎だ

そもそも人間は平等ではない

 「人間は、みんな違って、極めて不平等」なのだ。考えてみれば明らかだろう。確かにみんな違って生まれてきている。そして大きな格差を生むのが「知力の違い」だ。実際、東大生の親の平均世帯年収が高いのは本当は東大生の親の「知力」が高いからだ。この事実は、実に私をワクワクさせてくれる!そこには私なりの理由がある。自分のユニークな特徴さえ認識できれば、一人一人が特別な価値を生む可能性があるということに他ならないからだ。君がコントロールできる変数は、①己の特徴の理解と、②それを磨く努力と、③環境の選択、最初からこの3つしかない。君にとってのキャリアの勝ち筋を見つけるための大切なスタートラインになるだろう。

資本主義の本質とはなにか?

 どんな物事にも必ず本質がある。その本質によって構造が決まり、その構造に従って複雑な現象が生まれてくる。「本質→構造→現象」の順に上位が下位を拘束している。本質を理解することができれば、その物事が今後どのような変遷を辿るかさえも、ある程度予測することができるだろう。

 資本主義の本質とは何か?私は、資本主義の本質は人間の「欲」だと考えている。資本主義は人間の「欲」をエネルギー源にして、人々を競争させることで社会を発展させる構造を持つ。資本主義は「欲」を本質とし、「競争」が主な構造だ。そこに先述した「人間は平等ではない」という真実を重ね合わせると、君の生きているこの社会がより明瞭に理解できるようになる。

資本主義の本質とは何か?

 その資本主義社会においては、大きく分けると2種類の人間しかいないことを知っておかねばならない。自分の24時間を使って稼ぐ人と、他人の24時間を使って稼ぐ人。前者を「サラリーマン」と呼び、後者を「資本家」と呼ぶ。わかりやすく言うと、資本主義社会とは、サラリーマンを働かせて、資本家が儲ける構造のことだと言える。多くのサラリーマンが資本家側の世界に行こうと思えば行けるのに、パースペクティブが無ければそのオプションを意識すらできないのだ。覚えておいた方がいい。資本主義とは、無知であることと、愚かであることに、罰金を科す社会のことである。

私が君に伝えたいのは、サラリーマンの外に資本家の世界があることを知った上で、自分を活かす機会にアンテナを張れる人であって欲しいということだ。

君の年収を決める法則

 人の年収はどうやって決まるのか?実は君が決めた瞬間にほぼ自動的に決まってしまうのだ。ここでは君の年収を決めている3つの大きなドライバーを紹介し、最後に私からの助言も加えたいと思う。

  • ① 職能の価値

モノの値段が決まるときと同様に、その人の持っている職能(スキル)に対する需要と供給で年収が決まる。”代替のききにくい人”は給料が高く、その逆は低くなる。したがって自分の給料が上がらないのは、自分の価値が上がっていないことに起因している。

  • ② 所属する「業界の構造」

払える人件費にはその業界特有の構造的な限界がある。市場構造が払える人件費を決定しているからだ。年収を上げるために転職するならば、「自分の職能が活きる」かつ「もっと給料が払える他業界へ転職する」というのが正しい。

  • ③ 成功度合による違い

サラリーマンならば、年収200万円と2000万円の違いは、その人がどれだけ重要で代替不可能な能力を有しているかによって決まっている。

以上3つのドライバーを組み合わせて人の年収は決まっている。この3つをちゃんと考えた上で就職や転職を進めなければならない。

 すべては自分が成功する確率を高めるために、年収の期待値がわかった上で、敢えて情熱を傾けられる好きな道に進むことだ。そこでの成功を足がかりにして、職能や業界の構造を飛び越えてステップアップする。成功を積み重ねれば、キャリアのステップアップがどんどん可能になり、お金は後からついてくる。成功→お金であって、その逆では決してないことを忘れてはいけない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?