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こんな舞台を観てきた(2023年7月)

これまでは2ヶ月まとめて書いていたけれど、放置しておくとすぐに記憶が薄れてしまうので、7月分からは1ヶ月ごとに書いてみます…!

↑これまでの観劇記録はこちら↑


SUNNY

物語はベタなんだけれど、ラストは思いがけず感動してしまった。

私は、日常を描いた現代劇のミュージカルが好きなので、そういう意味でドンピシャの作品だった。(原作の映画は未見)

キャストも皆さんハマり役だった。
奈美役の花總まりさんは、エリザベートのイメージがあまりにも強いので、こういうお芝居で見るのは少し不思議な感じだった笑 
千夏役の瀬奈じゅんさんは、グループをまとめるリーダー的な役回りがとても似合っていた。ラストシーンでは燕尾服のような格好で踊っていて、「宝塚時代はこんな感じだったんだろうな」と思った。
主演のお二人のナチュラルなお芝居で、どんどん作品に惹き込まれた。
また、高校時代の奈美を演じた渡邉美穂さんの演技も印象的だった。田舎から出てきた垢抜けないところのある奈美のキャラクターが嫌味なく表現されていた。

この作品では、既存のJ-Pop(特に懐メロ)が使われていて、場面によっては無理歌を入れた感じもあったけれど、概ねストーリーと歌がリンクしていたように思う。
一幕ラストでは、H2Oさんの「想い出がいっぱい」が、現代パートと回想パートがクロスする形で使用されていて、グッときた。

セットが「とりあえず空間を埋めてみました」という感じでチープだったのが、少し気になった。

初めてブリリアの3階席(センターブロック最後列)に座ったけれど、思ったより普通に観られたなという印象。(映像を使った演出は、上部が見切れてしまったけれど、気になったのはそれくらい)
音響もまずまずで、セリフや歌詞が聞き取れないことは、ほぼなかった。
9月はスクール・オブ・ロックを観る予定なので、そちらの音響が気になるところ。


ジーザス・クライスト=スーパースター[ジャポネスク・バージョン]

初めましてのジャポネスクバージョン。
四季のJCSを初めて観たのが2012年。それ以来ずっとエルサレムバージョンでしか観たことがなかったので、今回が念願の観劇。

*以下、結構辛口です

全体的に舞台上の熱量が低く、少し物足りなさを感じた。
最初から最後までサクサクと進行し、盛り上がりに欠けるような印象を受けた。
JCSという作品が好きゆえに、期待値を上げすぎたのかもしれない。

初のジャポネスク版だったが、ところどころ日本っぽい要素を付け足した中途半端なものに感じられた。
この点に関しては、浅利さんご本人が演出されていたら、異なる印象を抱いたかもしれない。

キャストについても何名か触れておきたい。

ジーザス役の神永さんは、白塗りも相まって、感情の起伏が見えづらく、淡白な印象を受けた。元々神永さんのジーザスは「静」の印象だが、ジャポネスクの演出ではより「淡々と運命を受け入れる青年」という風に映った。

マグダラのマリア役の江畑さん。これまでの四季では、オペラ座のクリスティーヌを演じているようなソプラノ枠の方が、マリアを演じる機会が多かったので、意外な配役だなと思い、楽しみにしていた。
歌声は相変わらず素晴らしいけれど、あまり江畑さんのマリア像が見えてこなくて、ちょっと残念だった。

カヤパ役の高井さんと、ピラト役の村さんは、安定の歌声。
帰ってから調べると、お二人とも還暦を過ぎていらっしゃったので、何だかしみじみとした。

あと、やっぱり生オケがいいなと思った。JCSはカラオケの音源が何だかうっすらしているので、カラオケにしても、せめて撮り直してアラジン並みの迫力にして欲しい。

開演前に舞台の写真が撮れるようになったのは嬉しい

Devil

日韓合同キャストによる韓国ミュージカルの日本初演。

シアターオーブのJCSコンで、素晴らしい歌声を披露してくださったマイケル・K・リーさんが来日されるということで観劇。


JCSコンサートの記録はこちら

ミュージカルという表記ではあるものの、物語付きのコンサートという感じ。
この日は終演後にトークショーがあり、韓国オリジナル版の作者の方が登壇されていた。その方曰く「物語重視ではなく、コンセプト重視のミュージカルがあってもいいのではないかと思って作った作品」ということだったけれど、まさにそんな感じ。

お目当てのマイケル・K・リーさんは、優しく包み込むように歌う役どころで、Wキャストのもう一人があっきーだというのが非常に納得。
X-Black役のハン・ジサンさんは、人間を誘惑する存在として、激しくガンガン歌っていたので、役柄としてはこちらの方が美味しいのかも。

会場の「ところざわサクラタウン ジャパンパビリオン ホールA」(名称が長い!)は今回初めて行ったけれど、劇場というより、ライブハウスに近い感じ。
雰囲気は、「国際フォーラム ホールB7」と少し似ているかも。
音響はそんなに悪くなかった。2列おきにしか段差がないので、むしろ視覚面が少しストレスだった。

ここ数年は、海外のミュージカル俳優と日本で活躍しているキャストがコラボレーションする作品が多い印象だ。円安が止まらない昨今ではあるが、ぜひこのような試みは続けて欲しいなと思う。

2023/07/09 マチネ

ブラウン管より愛をこめてー宇宙人と異邦人ー

劇団チョコレートケーキの最新作。


劇団チョコレートケーキの観劇記録まとめ

チョコレートケーキといえば、日本の近代史を題材にした作品というイメージだった。しかし、今回の舞台は、昭和のテレビ制作現場と、これまでとは少し毛色が異なる感じ。
今までの作品は観劇後どっと疲れるような余韻があったけれど、今回は少しソフトな印象だった。これまでの作品同様、扱っているテーマは重厚だけれど、どの登場人物も最終的には良い人(身も蓋もない表現方法だけど)で、希望の持てるラストだったからかもしれない。

俳優では、前回の「帰還不能点」でも拝見した緒方 晋さんが印象に残った。(劇団四季に在籍されていた川原洋一郎さんにどこか雰囲気が似ていると思う。)
関西弁のキャラクターで、何か意味があるのかなと思ったら、最後にちょっとした伏線回収があって面白かった。

来年の公演も楽しみだ。


兎、波を走る

NODA・MAPの最新作。
NODA・MAPは、19年の「Q:A Night At The Kabuki」ぶり2度目の観劇だった。

野田さんの作品で、私が特に好きなのは、「見立て」など演劇的な要素を散りばめた演出だ。今回の「兎、波を走る」でも、大縄を国境線に見立てるなど、その演出は健在だった。
また今回は、野田さんの舞台にしては珍しく映像を多く用いていたが、いずれも必要性が感じられる使い方で、マイナスの印象は受けなかった。正直、映像の使われ方で辟易してしまう舞台も一定数あるので、この辺りの嫌味のなさは、さすがだなと思う。

ちょっと乗り切れなかったのは、AIやVRに関する描写である。AIやVRといったいわゆる最新技術に対して、野田さんはあまり良い印象を持たれていないのかなと思った。
技術の進歩に対して、法整備が進んでいないとか、倫理上の問題が解決されていないとか、課題は山積みだと思う。しかし、この戯曲での扱われ方は、少し負の側面にフォーカスし過ぎた見方であるような印象を受けた。

キャストに関しては、高橋 一生さんと松 たか子さんが、さすがの上手さで、日本の演劇界でも指折りの実力なのではないかと思う。野田さんの難解な台詞も、このお二人がしゃべれば、するすると耳に入ってくる。(私がその台詞を理解できているかどうかは、別の話だけれど…)
多部 未華子さんを拝見するのは、2016年の蜷川さんの遺作となった「尺には尺を」以来。口跡が非常に良くて、また別の作品でも拝見したいなと思う。
大倉 孝二さんは、随所で笑いを誘う役どころで、後半のシリアスな展開の中でも、大倉さんが出てくると舞台上も客席もパッと明るい雰囲気になるのが印象的だった。私の知り合いで、大倉さんのお芝居をすごく好きな方がいるのだが、今回のお芝居を観てその理由がわかった気がした。

色々書いたけれど、野田さんの作品は、唯一無二の作風で演劇の面白さを感じられるので、今後も見続けたい。

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