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戦争とハチミツ(2024年4月の観劇記録)

4月は、井上ひさし作品とオフ・ブロードウェイ初のディズニーミュージカルの2作品を観劇。

↑これまでの観劇記録はこちら↑


夢の泪

「夢の裂け目」「夢の泪」「夢の痂」からなる「東京裁判三部作」の二作目。
新国立劇場のために書き下ろされた作品なので、こまつ座での上演は今回が初めてだったらしい。

夢の裂け目と比較して

2018年に「東京裁判三部作」の一作目である「夢の裂け目」を観劇したことがある。
約6年前のことなので、記憶がおぼろげなところもあるが、何となく今回の「夢の泪」と共通する部分はあるなと感じた。

まず、両作品ともに「戦後ひょんなことから、一般市民の(少し調子のいい)中年男性が東京裁判に関わることになり、公にされていない事実に気付き…」といった共通するプロットが確認できる。
(とはいえ、同じような話だなというようなネガティブな感想を抱かせないほどには、全く異なる物語)

加えて両作品とも、井上ひさし作品の中でも特に音楽や歌唱が多い気がする。
その影響もあってか、2018年の「夢の裂け目」にはミュージカル俳優も複数名出演していた。

また「戦争責任はお上にあるのであって、一般市民は被害者にほかならない」というような視点が貫かれているように感じた。

作品について

どれだけ音楽で楽しく彩っても、井上作品には戦争への怒りを根底に感じる。
一見楽しげな幕切れだが、最後のピアノの一音に「ハッピーエンドではないんだぞ」という作者の声を聞いた気がした。

2024年に観劇しても、ドキッとするような芯を食った台詞がたくさんあり、それだけでも観にきた甲斐があったなと思った。

栗山民也さんの演出はハズレがなく、好きだなとここ数年は特に感じている。
シンプルで説明し過ぎない舞台空間が今回も素敵だった。

キャスト

瀬戸さおりさんのお芝居が特に印象的だった。
登場時のか弱い雰囲気から、様々なことを経験して、一人の女性として自立していく様子が3時間のお芝居の中で感じられた。
頭痛肩こり樋口一葉」を観劇した際にも思ったが、この辺りの女性の描き方に作者の技量を感じる。

私が観劇したのは、上演2日目だったのだが、二日落ちという言葉がある通り、ちょっとモゴモゴしたり、台詞を間違えて言い直すキャストが複数いたのは、少し残念だった。

↑「頭痛肩こり樋口一葉」の感想はこちら↑


「夢の裂け目」・「夢の泪」と観たので、残すは「夢の痂」のみだ。
来年あたりこまつ座さんで上演してくれないだろうか…?


ディズニー くまのプーさん

「くまのプーさん」のミュージカルが日本初上演。
コンテンツの大ファンというわけではないけれど、オフ・ブロードウェイでの上演が決まったときから、「どんな感じになるのだろう?」と気になっていた作品。

↑オフ・ブロードウェイ版のトレイラー↑

あまりにも上演に適さない会場

作品の中身より、まずは東京公演の会場がこの作品の上演にあまりにも適さないものだったことを書き記しておきたい。

東京公演の会場である日本橋三井ホールは、劇場というより、会議や展示会でも使用される多目的ホールらしい。
会場に行ってみると、客席の約半分を占めるA-M列は、段差がないフラットな構造になっていた。
その上、この作品ではパペットが主役なので、背丈の低いキャラクター(ピグレットやイーヨなど)の姿はほとんど見えなかった。

平均的な座高の私ですらこんな感じだったので、子どもたちはもっと見えなかったことだろう。
この辺りは上演に際してもっと配慮がなされるべきだったのではないかと思う。

作品について

最初に苦言を呈してしまったが、作品自体の完成度は高かった。
子ども向けの作品ではあると思うが、大人が観ても楽しめる作品に仕上がっていたと思う。

上演時間は1時間と随分と短いが、物語が原作同様ふわふわなので、観終わった後は適切な上演時間だと感じた。

観客層としては、ファミリー層だけでなく、ディズニーやプーさんのファンであろう大人たちの姿も多く見受けられたのが印象的だった。

基本的には、ハチミツを探しているプーのエピソードが1時間展開されるが、最後のクリストファー・ロビンとのシーンは、いつか来る別れを想起させる、少しグッとくる場面になっていた。
(周囲のガチ勢っぽい方々はこのシーンで泣いていた)

キャスト

キャストは実力派揃いで、アニメの声に寄せながらも、決してモノマネにはならない塩梅がとてもよかった。
(そういえば、全ての役柄が、トリプルキャストやダブルキャストでありながら、劇場にキャストボードがない珍しい公演だった。)

※下記は、私が観劇した4月28日のキャストの感想

くまのプーさん役の養田陸矢さんは、アニメの声そっくりの仕上がり。ポワポワとしたプーの温かな雰囲気が伝わるお芝居だった。

ティガー役の伊藤広祥さんは、弾んだ声や楽しげなジャンプなど特徴を押さえたお芝居で、当たり役だと感じた。

クリストファー・ロビン役の村山董絃さんは、冒頭と最後の短い間しか登場しないが、口跡が良くかつ堂々としたお芝居で、しっかりと印象に残った。
(※昨年のラグタイムでも拝見しているが、一人の俳優さんとして作品の世界観にしっかりと馴染んでいて、すごいの一言である)

↑ラグタイムの感想はこちら↑



同じ作品を観ていても、子どもたちは、大人が反応しないところで声をあげたりと、反応が面白いなと思った。
5月に観劇する作品にも、子どもたちがターゲットの作品があるので、観劇時は客席の雰囲気も楽しみだ。


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