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芸術の秋はどこ?(2024年10月の観劇記録)

急に寒い。
芸術の秋なんて言葉もあるが、秋を飛ばして、夏から冬へ、にわかに突入した気がする。

↑これまでの観劇記録はこちら↑


諸国を遍歴する二人の騎士の物語

初めて観る別役実さんの作品。
とっつきにくい感じを想像していたが、意外と観やすいなという印象。

ケラさんが敬愛していたということもあって、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品と少し近い雰囲気を感じた。
もしかすると不条理劇が好きなのかもしれないと思った観劇だった。

吉祥寺シアターについて

初めて行った劇場だったので、劇場自体の感想も少しだけ。

キャパが200人弱ということで、濃密な空間ながらも落ち着いた雰囲気のある劇場だった。
座席は千鳥配置ではないものの、段差がしっかりと設けられているので、視界も良好だった。

作品について

「年配の二人の騎士に、登場人物が次々に殺されていく」という物語の展開にも関わらず、観終わった後の気分は意外と重くない。

騎士役の二人、山本龍二さんと山路和弘さんの演技が非常に魅力的で、不気味さもありながら笑いを誘う場面もあり、二人の芝居によって絶妙なバランスで物語が進行していた。
物語の終盤、鎧を脱ぎ、二人で椅子に座って喋っている姿は、騎士というより、暇を持て余して公園のベンチで喋っている年配の男性のようで、何とも言えない趣があった。
もしかすると、人生の無常感とか、そういったことが作品のテーマなんじゃないかなと感じた。

また、パーカッション(演奏:朝里奈津美さん)が物語のアクセントになっていて、とても良かった。

ワタシタチはモノガタリ

渋谷のPARCO劇場ではなく、新潟のりゅーとぴあで観劇。
りゅーとぴあも、前列との段差がしっかりと設けられているので、とても観やすくて嬉しい。

とてもポップで観やすい作品だなという印象。
とはいえ、今日的なトピックも取り入れていて、「作品の権利に関する問題」や「SNSのライブ配信でバズる」など、現実社会でもよく聞く話が多く取り上げられているのが、とても良かった。

冒頭の江口のりこさん演じる肘森富子の独白のシーンで、「金原ひとみ綿谷りさみたいに若くして作家として売れたかったねん」みたいな台詞があった。
個人的には、具体的な作家の名前が出てきたことで、「この人は、この二人と同じくらいの年齢の方なんだな」とか、冒頭から物語の解像度が上がった気がして、グッと引き込まれた。

正直、今回の劇作家と演出家は、それぞれ他の作品を観た際に、あまりピンと来なかったのだが、この作品ではお二人の手腕を存分に感じられた。
特に、二幕の現実と小説の世界が交差するシーンは、ともすると概念的で非常にわかりにくいシーンになりそうだが、演劇の手触りが感じられるいいシーンになっていた。

観劇した日は、たまたま大千穐楽ということもあり、客席はスタンディングオベーションで大盛り上がりだった。
最近「拾われた男」という松尾諭さんの自伝的ドラマを観ていたのだが、カーテンコールでの松尾さんの言動が、ドラマの中の少し出しゃばりの松尾さんそのままで、思わず笑ってしまった。


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