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マルコヴィッチの穴(こゝろ)  川柳69句


セコハンとほかの物在る時間の日

南極に四郎が持ってゆくかぼす

歌手と死と胎蔵界に平家蟹

眷族を型番号で呼ぶハイジ

らいてうの頁ににじむキチン質

ふるさとの鉛くらべる十字軍

ネクタイを外す堀川大納言

象を書くときさまざまなめりけん粉

道三の餅に筆ペン触れぬまま

ヤクルトの多き戦後と戦前詩

弟の念波漂うビバ・メヒコ

日本語の範囲にからしめんたいこ

わさび漬け海洋国家滅びゆく

猿股の日々にかがやく文京区

花競りに韻を踏まないピカデリー

茶器として太陽電池みつめれば

探偵が牌捨てるとき雨降らず

ロケットを塩沢ときが演技する

忘却の笛に東京チャンドラー

くるしみをドライフルーツから移す

ドット絵の赤かぶに似た能登麻美子

北へ行く太田道灌像抱え

鳥取を現にあらわす鏡文字

砂肝を振袖火事と入力し

傍題にスペイン犬とある初夏だ

魂を髭男爵と移しかえ

みずからの雨にまつわる膝を書く

プレステを捨てるあいだの写経せず

虞美人の鐘が細かいハリウッド

戸の外で楚を出てからのうこん摺る

ギター減る運送会社弾くたびに

旅人の溶連菌が地球上

グラムシの腸きりひらく河合塾

アンソニー・ホプキンスから過去の栗

喪失家そろって消えた八王子

パノラマ視じぶんが鉢になるまでに

暗君がドクター・ノオを否認して

パテ盛って駱駝にみえている命

アルバムに背後から建つ姫路城

パン粉にてパン屋乗っ取る強き蟻

我孫子市の蟻酸あつめる梅雨のまえ

北条氏ナースコールが届くまで

パスワード以外につかう村田銃

ハンマーを天文台に投げず死よ

早朝を表音文字の前に書く

雨を飲むブリキの太鼓解体し

洗脳のマツキヨに錬る歯みがき粉

伏せられた𠮷野家日記ずっと雨

煉菓子を東海林さだおが詠み込む句

手長猿日記の二冊中どれか

真っ白な嘘にモーター廻り止む

病人のビデオデッキを奪い逃げ

数あふれ音楽都市の盗み喰い

出帆の朝に最小値を求め

釘落ちてジャミラの死後の映画館

光速のキリマンジャロを再話する

フルーチェを盛る食堂に不死の章魚

目をつむる東村山市のいたこ

ポッキーの呪文を梅雨にくり返す

桔梗屋のドラマツルギー反射して

マンションの丁度真上に流刑星

でぶ専が平均律を弾いている

倍達がビデオドローム観るひかり

アントニオ猪木の梅を魔都に置く

双生の殺陣師と書いている略譜

シェルターの蠅が死なない超兵器

偶然の短歌詠ませる自白剤

ソビエトと確かに在った粉ふき芋

寒天が寒天であるジョン・フォード


#川柳 #現代川柳 #詩歌 #文芸 #創作 #先生と私

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