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中国のアンナ・カリーナ忌(ライト・マイ・ファイヤー)  川柳112句


一、プロパガンダ・エッセー


饅頭の鍵暗号を送りあう

鳥が好き英語講師の股を裂く

飛魚がすさみつづける鍋の中

ギニョールが最終回の文字染める

白樺派述語と共に村建たる

父の書く架空戦記に毒茸

イメージの回鍋肉に浄化され

長調に汚れた金魚滴化する

町長のはなくそをほる超童話

自我在りぬピラカンサスに描き足せば

メリーゴーラウンド極地にて廻り

探偵所扉の奥のハーモニー

ジャポニカの鰻と犬を貼り付ける

寒桜これも暗号文である

馬小舎のおそ松くんのチーズ盗り

妻の名を実験室に書き散らす

霊場のサブタイトルが酢に決まる

フォルムなき陸の孤島を清記して

エリツィンが首脳を辞める暗記術

ライオンに噛ます麻雀放浪記

ジャン=ポール・サルトルが凍鶴を折る

時絶えて御製盗作したばかり

ヤンマーのどれへも同じ視神経

泡雪や博物館の緯度書かれ

文字として夏子の酒を組み直す

横溝のシンドロームを略語する

重力の都市に年刊ポスト売る

年暮るるアンダルシアの犬に棒


二、暗黒神話・その話はすでに聴いた


連想の恐怖の世界切手剥ぐ

シベリアの役小角の痕を貼る

月蝕の蝶々夫人泥こねて

処女厨がくまなくつくる粉ふき芋

洪水がエミール・ゾラに及ぶまで

引越しのサカイとともに砂糖菓子

地下街のパン屋のたまの闘牛士

卯の年の瀬のひそかなるバカ博士

炭坑にバカSFを書き終えて

玄冬の狩矢警部にサウナ建て

芸術家夫妻と録ったプロゴルフ

倭人来て倭人消え去る唯我論

辞典書くコールタールの在る町で

バカボンの和製英語が消えて冬

法医学教室のねじ廻転す

法皇の卵あたため純喫茶

念話聴く八丈島を抜けてから

鱶浮くは沈むはマリヤ美容室

回遊の世に全能の天丼屋

つなぎ着る大列島の共時性

父の名を塗り消したあと酸化鉄

鉄器から河馬に名移す地方画家

戦争にジェリービーンズ無数なり

県を越えつのだじろうの排球部

豚まんの時代巡るや皮膚呼吸

歩みだす戦勝国の水泳部

火傷してモアイのなかの主人公

トルソーの位置に精神こわれつつ

冬花火とどろく時間管理局

模擬店に三島由紀夫のハムとハム

双生の兄の駱駝を盗み出す

王様のチャカに他人の名札貼る

歴博の隅のなかやまきんに君

腐男子がペプシコーラを消し終える

われ老いて脈絡の無い鯖を買う

老人と海の酒屋に世界消え

昆布を書くとき京都消え時間線

時間都市まわりつづける郷ひろみ

狂信の身に噛みつきしウナギイヌ

叉焼をべつのエスパーらが語る

武器店を埼玉県に換字する

街道を言祝ぎ歩くリュウとケン

大渦へガッツ石松漂流し

地図帳の演技をされる鍛冶屋たち

ラッセルを読まず刺客の父と子と

募金埋め掘って高橋ユニオンズ

貧民が糸寒天を笑い死ぬ

死を想えロッテ暗黒時代脱け

わらび餅以外在らざるレストラン

欲望という名を貼った食堂車

牛車燃え兄の戦場遠からむ

手で掴む埴谷雄高のスパゲティ

世紀末都市に名づける烏龍茶

星図引く蟹喰い船を降りてから

ホルモンと思ったまでの井戸を掘る

注射するアビイ・ロードの力士たち


三、エッシャーの武器店


砂漠果つ邪道外道に配膳し

心眼に配電盤の漢数字

読者拒否して三角の和を書きぬ

午睡屋とトートロジーに暮るる年

年末のラップの糸屋建ち並ぶ

大聖夜ガラスのうさぎ熔けるなか

うつくしい文体内に玄米茶

不死と死のオートレースや渡月橋

犬神のコンプレックスとして雪

ハレルヤ・ハレルヤのなかを姪求め

太陽の塔を意味するスガシカオ

熊を撃つ地球をどこかへこませて

陸つづき広瀬ちえみの時計買う

ラカン派が家庭菜園へとひそみ

酢豆腐をまざまざと視る聖なる夜

聖なるか絹漉し豆腐罅入れて

緯度変えて阿Q正伝書き変える

師走の市妻の狂人日記読む

象をみる外感覚が消えて雪

きちがいの挙句を付けるねずみ講

空海に重なってゆくツナサラダ

脳に充つ天皇的な烏龍茶

ヒトとして寺山セツのたけし城

蟹味噌が個人事務所を貫けば

ナビスコが皇太后に意味される

軍艦を八上桐子が分離する

冬晴れてグリーンさがす石炭紀

暁の寺に東松照明忌


#川柳 #現代川柳
#詩歌 #文芸 #創作 #短詩 #東松照明


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