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あの夏の。(投影)  川柳200句


送り盆。千春さんとふたり、向かいあって(うつむきあって)ひたすら川柳を書いていた。今日書けたのは163句。盆入りに書いていた分とまとめて210句になったが、量はあんまり重要ではない。という「重要ではない」ことがじぶんにとってはたいせつだったりする。前口上も大概にしておきたいが、自分にとってたのしい時間だった。たのしい時間は、いつもかなしい。尚、どうしてもひどい出来だったものは削って、合計200句放流する。

追記 2024年8月18日(日)21:00〜、Twitter(Xとか呼んでいる人もいるらしい)の「スペース」で200句朗読会をひらく予定です。ご興味ありましたら、どうか是非。


Ⅰ.ブルータス、わたしもか  一〇〇句


白日に恥の文化のシュノーケル

颱風の前夜スミスがいなかった

豚吉の公園に散る合唱部

水疱をちりばめすぎた鮮魚館

草を刈る言語遊戯に舌もつれ

われらこそ肺ある魚残暑かな

陰膳がバッドエンドでない館

虎刈りの男女を多重放送す

秋はじめ息のできない阿弥陀籤

くじら肉つぎつぎくれる牛魔王

うつくしい鼻炎が書いてある詩篇

狂死して卵の数の数そろう

青の都市赤の都市からひとしい喪

バカボンにちぎられて居るルチャドール

ユンピョウが写真時代に載ると秋

方舟の季節にとっておく流砂

バンギャらがふたたび津市でありうるか

キャプテンが緯度にかわってゆく尾行

人うらむ心のいわしハンバーグ

マコンドに金太冒険する批評

氷山のララバイ猿を容れる箱

ドムドムが流れていった長良川

畜生を阿房列車にのせて秋

誤字として垢のポーズをしていると

グレイシー一族外にねるつみれ

史劇屋の毬のかたちがさびしいか

燃えつきた地図にドードー鳥の糞

肋骨をいっきにもらう美容室

タービンをみまもるなかで脳が沸く

鏃から合理主義者にみえるナナ

意外でもなくあらわれるふで忍者

空壕がない野郎から干すプリン

三重県の歌を輪唱するのり子

トンファーの政教分離されるおれ

一局のメトロポリスの蝶死ねり

蛾が死んでおまえとガムが立っている

グレゴール・ザムザが老いてゆくたわみ

感想にくすんだひとが立っている

鮫島の文明ほろぶビスケット

WASPとのばってら鮨を読み合わす

のべ棒に祖父の名つけるレンズマン

日暮里の兇悪すぎるうさぎの名

ドン・中矢・ニールセン忌の環を嵌める

バット振る微妙のさくらももこの忌

異次元を覗く家からしまい盆

逃げ水のありかたを問う談話室

症例にひとつをつつむ赤マント

にがうりを頭脳警察まではこぶ

悪として詩人をのせるさくら丸

厠から犀よ犀よとさけび声

酢をもって獄門島の夏おわる

禁止語に秋はじまるなヌーディスト

大脳に暗槓そろう終戦忌

乳ぶさ揉むあの奥山に冷蔵庫

オバQが社会詠して消えてゆく

ゴダールの画面のそとにぐりとぐら

発症をしている秋の蝶かぞえ

友人が味噌じゃがいもに死んで居る

空間をイヴ・モンタンにかたちどる

寄生虫館へひとりであゆむ妻

ロボットの劇に再現する寝ぐせ

語源まで鉤をもちいるヨブの母

マチャアキのからだを濠にもってゆく

見るまえに鳥羽法皇の識にとべ

罪というきらきら星のあるところ

嵐くるダブルプレーの妻抱けば

くつ下にくつ下つめて眠る美女

うかんむりからの宇宙を呪いだす

角栄の守備隊形に嵐ふく

川柳に不正アクセスする帆布

字義に沿い饅頭会社滅びだす

外診のまんじゅう蟹が立ち上がる

まんじゅうの刑事の貌をとりあげる

父死なず糸寒天を糸として

母死なずブラックホール模型組み

妹が死なない螺子を録りわすれ

猿島の鼻の模型が組み上がる

ゲルとして人に対する成田山

EDWINの頓智をつかう嵐の日

目つむりてみよイベリコの薔薇そだつ

懲役のしるしに章魚を切りきざむ

神々の黄昏れるなか大乃国

酢の箱の酢を演技する相撲フェチ

校庭のひとりが狂うかぶとがに

白亜紀に鯖そのものを重ね撮る

大老の意味で病みたるチャップリン

舞妓まで喚ばれる銀河裁判所

けだものを凡打におさえ比喩の神

ミステリートレインとして心病む

ぶぶ漬をプラトニックにかぶりつく

リリックに温泉芸者がぶり寄る

タメ年の人形つかいから無言

完結をみる小説のアロハシャツ

歯車をポルノ・スターにうばわれる

土瓶蒸す十七音に他者ありや

トナカイに秋をおしえる雑学者

マシリトがいっきに歪む函館市

札幌の聖なるひとへ紙つぶて

つぶつぶの日本人から読む靈歌

茄子をくれ火星人面石くずれ


Ⅱ.あなたはわたし、わたしはわたし  一〇〇句


いかだへとインベーダーを積みのこす

聖堂のあなたのためのカルシウム

電話魔の魔をとりのぞく仏教徒

文学の都市にウェイン・シャムロック

レオナルド熊をうみだす鬼子母神

海底をしらないままの問屋たち

妊婦らに棒棒鶏という時空

そうめんが第三項にゆであがる

世界観競争というアルマイト

秋の蚊の名まえがレオン・スピンクス

しまい盆ピンクパンサー棄てに棄て

胡桃割り一語たりとも信ずるな

もういちど情報学の弁当よ

チョコレート屋から天地がまだ溟い

垢として怪獣都市をおとずれず

おとがいがあってしまった秋の雷

ふりかえるジョジョの奇妙な発電所

ココナッツ・クラッシュうける楯の会

かぎ爪の計画くるう盆おどり

一句なす言葉と物のあれちうり

たてじまが魯迅の森に立っていた

中国のスロウ・ボートの補遺つづく

妄想のあずさ2号に菓子溶ける

断定をすると黄色い井戸である

ナルニアの幕間劇に自慰おぼえ

アラレらのつなぐ手はずれ茸雲

弁当の意味よりひらく核の傘

息とめてスーパー毬藻ぬすみ出す

戦艦をみなかった日の姉妹都市

季違いのニューバランスにπ書かれ

楡家まで星の王子をひきずりぬ

猿の手をそれぞれくばる火刑都市

さすまたの名まえの朱鷺が死んで居る

こぶ平を大陸棚にとり残す

ブッチャーに永遠がある小津映画

サディストを主語におくなり家族葬

ホームランバーを三島の母語で云う

低炭素社会をおかめいんこ飛ぶ

さようなら窒素のなかのオロカメン

生と死の刺青をいれる風の谷

こんにゃくのイデアとしての物わすれ

もの憑いて憑きかえすまで草野球

くちびるの支笏湖にビル・クリントン

正憲とこの世をつなぐ鉤つかい

絵にすれば魔法少女のアコギ折れ

言語学講義演ずる能舞台

秋の田に骨川さんの落下傘

フロイトの家になますを持ってゆく

ウィトゲンシュタインの部屋に満賀道雄

新橋にはじまりかける太閤記

秋暑しグラハム・ベルを盗聴す

完全の父をころして秋の風

季語もなく魚眼レンズをまた失くす

鉄砲のまじわる位置を換えてみる

幻覚にないものばかりかまどうま

たわぶれにうつくしくなる五味太郎

酸化してそこまでおれの男性器

過去の句をつぶやいているアポロチョコ

釣り堀にデンセンマンの眠りかた

グローバル化する春巻分析者

中世の秋のコンパスとの流罪

罪人がバンドTシャツ買い換える

焼鮭のこのわたしから大念波

入り口を象がでてゆく新悲劇

詩の否定してこぶ平の突端部

神不在たなびくケント・デリカット

モツ煮から真探偵があらわれる

猫ばばの歌が分割されたまま

変名のままもぐり込むじゃんけん屋

巻末に妄想された秋の雷

僧正のこころが痛むマスコット

蜘蛛を買うありとあらゆる交差点

王城の守護者がひとり追うくじら

近藤が潜水すると鳴るピアノ

確率の海まきもどす海の箱

緞帳がゆがむロバチェフスキー劇

流刑して犀一頭もなくなりぬ

戦乱の神奈川県に撮るバター

地の塩と宦官役がきまらない

麦茶漬け昭和プロレス終わりけり

ケロッグの時間をわける瓜畑

帝国に乳きょうだいをみなされる

幸福の街の外から外宇宙

ハレの日にただにがうりを炒めつつ

隕石にふれて誰かの唯我論

小豆色王様ばかり眠りおり

湯切りして世界の位置が切れている

ケ涸れして反重力のかかる井戸

或るもめんどうふの重き蟻の街

老人の糞巨大なる誘蛾都市

地図上のどのムエタイもひとのもの

軍団が髪型あわすひも理論

噴霧者が零になるまで夜を這う

預言者のガムシロップの大なだれ

狂言のカッパドキアに陽は落ちて

つまようじ突き立て世界共和国

ボクシング・ジムにふたりの深津絵里

言霊が過剰適応する飯場

納豆のカモフラージュすばかぢから

いきしちに模造の記憶うくすつぬ


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