夜よりほかに聴くものもなし（ver.2023）　　川柳55句

鉄人の死にふりかかる雪のいろ

民族の移動の果ての水中花

蚊を想え白のパンツを乾かして

地上絵の冬の火の鳥大地編

カスタードクリームを塗る麿赤兒

潜水す土方巽乗せたまま

孔明の天気図をふと複写する

春近き上野動物園に鋲

フラミンゴ放つ風力発電所

空澄んで黄色い松田優作車

珈琲をケンペーくんが投げ売った

空間に軍人くんのさるすべり

銀閣寺ごときに蝿を潰される

長芋を巨人レスラーみつめる日

能楽がプレパラートをあらわして

毒を持つちくわが仏間埋めつくし

剥製のままの大統領の汁

みそ汁で居られなかった極北地

白痴から世界に焼いたソーセージ

蟹という蟹に隠語でしねと言う

寓話にて蛸をとらえるアメフト部

小松菜をサイコダイブの後で視る

始皇帝まで赤髪の演劇部

輪のなかに吉田茂の宇宙食

どこまでが尾崎豊のパンシロン

スシローの真横に建てる阿弥陀堂

くじによるスカンジナビア脱走記

森永が在るはずだろう夕暮れる

弱視者の眼鏡に見えるくさりがま

世界果てどのコーラにも曲が着く

関節と詩嚢のどこがはるみの名

関取にひろがってゆくポル・ポト派

千葉市長選のさなかのライディーン

皇太子立ちつくすなり雪けむり

投書欄みなが反語で言う吹き矢

南極をみたまま語る漫才師

仮定での落語作家が被子される

疑問符で終わらなかったフライパン

パンの木をゆらせば老いてゆく僕ら

アマゾンの八宝菜に偽薬混ぜ

ふんどしをかつぎ光の国の門

デパ地下に光合成をする流刑

駅前のソニー・ロリンズ相談所

銃を撃つ小説を置く十三夜

近親と交配をして槍投げる

ドーナツの分割つづく売笑婦

エネオスでふいに傾くやじろべえ

数独に全体主義のはじまりぬ

時を超え木星号に玉春日

ニューロンに湊圭伍の呼ぶ産婆

堕落して千代大海の鼠蹊撲つ

父の書に大部近藤真彦記

鰭の日にマトリョーシカの冬終われ

信長の野望に水を汲む義妹

旋盤もかんてんぱぱも無い夜だ

#川柳 #現代川柳 #詩歌 #文芸 #創作 #詩 #ホワイダニット