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望郷(おーい でてこーい)  川柳111句

ずぼん買う時らっきょうを剥く言葉

澱おとすみなで歌垣をしていると

茄子塗ってジャージほしがるキキとララ

嬰児寝て鉛筆会社燃えさかる

ヨドバ氏が秘仏の前を後じさる

鳥瞰に旧たまねぎが割れている

パロディーに翔子が黙すやぶしらず

箱庭のつぎに親鸞上人図

言語論たどりつけないピザを焼き

ごまだれと埼京線を架空する

雨のなかユパ・ミラルダが割った土器

対称の胡瓜売られてゆくだけの

六道のめぐりにヘヴィスモーカー

われ老いて鏡の国に金魚鉢

猿を撃つ英字新聞たたみつつ

赤狩りにするめの束がはこばれる

運痴らの朗読劇の空に月

京平のスターバックス複製す

たい焼の貸借つづくゼロ次元

義和団のオカメインコが羽根をまく

鯖缶を語りつづける主人公

皮膚呼吸してもらくだで無いらくだ

貸金庫ジェームス三木が死んでいた

コーン立つ掟の門に仏陀L

シベ超に祖国さがしの水野たち

一念に山椒魚を引き寄せる

ハーブ播き相撲に勝っている傘屋

胃薬を探索隊にぶちまける

神の子が踊る悟性の庭のなか

西東のニューバランスに立つ醤油

脱腸のあとに思惟へと低い波

まんじゅうをみにくいひととみる朧

球型の幸田露伴のおもう海

テレヴィジョン・シティを覆う野のいちご

三吉のパラドックスが街を消え

ホルモンの栓ひらくなり春に老ゆ

落雁を出雲大社にみうしなう

くじの名がコンプレックスにて決まる

ユリオカを茂吉のなかで書きなおす

動物の医者の相撲にまわし脱ぐ

字義しらべ顕彰会に愛しあえ

女難してボールペンにも研磨剤

嫌人のポパイが書いている楽譜

輪唱にスコラ学派の馬の唄

鍋島がイースト菌でありながら

子宮みて子宮のなかに梅の花

桃の花遠し海棲哺乳類

ばくぜんと忍者部隊を折りたたむ

ナボコフの掌篇ありぬ義士祭り

理由なくアンゴルモアの耳とざす

クロマティ高校という韃靼茶

鯉こくをあがなう二十一世紀

戦場のビートたけしにうこぎ飯

めしを炊く時計の裏にある時計

ヤン坊をマー坊が抱く地上界

倭の国に非対称なるコカ/ペプシ

官兵衛の吸い取り口がねじくれて

はりつけのカムパネルラを隠す靄

アメリカに消し護謨を置く彼岸過

羅睺星いちどこの世に生まれれば

蝶を書くひとともろとも蝶を書く

「釘」という大工が死んでゆく噺

義士が死にキリストが死に胡瓜蒔く

受難日にきのこの山のくぼみ撫で

亀虫とわれにまつわる死者無限

惑星の黄梅を視る靴みがき

小数に点が打たれる下田港

バリトンの畸人あつまる区民館

かまぼこを立体に切る冒険者

意識なす世界落語に夜来たる

魔太郎がねらうペーパーカンパニー

さるぼぼにドロップアウトした美僧

治療塔じょんから節のなりひびき

被写体にⒶの印押す永い春

T80テラヤマに集合をする88745ははなしご

世のなかの子音のなかに味噌を買う

ナビスコを完成させる負のちから

詐欺師らがくじらを撫でている図解

隊長の電池が切れる万国旗

D坂を転がりおちるダーティペア

中島と砂漠の星にみるやきう

こんにゃくと二物衝撃しない皇

ニュートンがふやけるままの大桟敷

あまつさえ変態仮名を米に書く

文体をなしてジャマイカ駐在所

雨のなかボリス・ヴィアンのうなぎの日

錯角のひとつを持った指揮者たち

隣房のカート・コバーン無季句詠む

大愚問読者にとって気泡とは

にわとりをむしる総てのタンジェント

既知の世にあらゆるからしめんたいこ

真田ひも理論に拠って魔女を焼く

虫生れあらゆる朝のガスパール

ゆうばりの不法フレンチレストラン

漫才師たちが忘れる宇宙服

浮き彫りの鈴木みのるにきょうの雨

想像の東京に塗るみやこ鳥

図面焼く交響楽を訊きわすれ

抜歯するはずの蜷川新右衛門

人として地球に還る浪曲師

ごんずいをピエール瀧がえらばせる

豆腐屋がピーターパンを溶かすまま

房総を墨書するミル・マスカラス

わたくしと云う現象に野球帽

人として誰よりながくにがい米

モンゴルに現代つづく抱きまくら

屍姦したはずの粘土をもってくる

UFOに模型零戦むけて置く

ブニュエルの方舟おりる象と象

魔の山にシコルスキーのかたちなす

密室に故郷は地球念じつつ


#川柳 #現代川柳 #詩歌 #文芸 #エンターテインメント #100句越え #ピエール瀧 #ブニュエル #キキとララ #シベリア超特急

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