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一九八四年(柔らかい個人主義の誕生)  川柳66句



1.1948年のフリーマン・ダイソン(2023/04/24)

 
桃子らと狂人日記まわし読む

店子へと氷の世界ひび割れて

かた茹でをラムが突ついている描写

鉄人にかんてんぱぱの翻字見せ

ゴムの木を述語によって切りたおす

隕鉄を誰も持たない水泳部

主婦Aが無言のパクリ漫画積み

魚影ごとスタントマンが落ちてゆく

はちまきを置く太陽部部長宅

神視点からO嬢の耳かき機

未来編仙一の割る試験管

くら寿司を庭球社会内に置く

曲線を点に喩える三産婆

見つめあう涼しい庭の発明家

地の涯に支柱の折れる西松屋

ギニョールの代わりに芋を洗う猿

引力で猿の惑星へと座る

組長の防水服が象印

吹奏す極地探検隊音頭

たんぽぽの酒の同語を反復し

砂の庭いちめん埋めるフマキラー

エアギター研究会の無意識下

加工した富山山脈じゅうの螺子

烈しくも泣いて水族館不動

海底にひとりのサクマドロップス

瞬間に瞬間つなぎ愛社する

顔料の谷へ豆腐を提げてゆく

101の小泉今日子開山し


2.1984年のプロレス・スーパースター列伝(2023/04/25)


超自我のかたちを成した羊肉

積算のグリーンランドへの田植え

あん饅をたがみよしひさたちと切る

炎へと言語遊戯をしなかった

たのきんの一人が架ける丸木橋

みな滑車イラン映画をまとめると

死者みちて虚数のサラミソーセージ

戦艦でなかったようなアマリリス

プラトンを鍵暗号にしたたらせ

地方都市銀座にこぼす蛸の墨

昨年のてんとう虫を視る左官

クイズ解く九官鳥を連れ去れば

モーターを埋め込む月の値段表

表現の上に六番打者の死よ

背もたれを性欲として夜の寺

光秀語にて伝えあう頸の位置

精巣を数えていないユートピア

ペンギンの劇に今上陛下役

字義通り野坂昭如腐るまで

托鉢の僧がみあげる翼手竜

季語に無いロボット兵の指す将棋

博士らが負の銀弾を撃つ意識

ペンタゴン内部あらわす花言葉

鮭とばの黴をこそげるオーガズム

文字下に文字書かれざるきびだんご

美しい星の色塗るガスレンジ

念力と訳した人が海の中

柴犬のショーはじまって町滅ぶ

メレンゲについて教諭の膠着語

頭脳には暗闇がある河海豚

原野ゆくボンバーマンの頭陀袋

言語野が新青年にせまき日よ

黒幕の改名中の雨に量

我が子無き我が子の部屋に矛と盾

茶道部と永遠に在る蟻地獄

通話後のフランスパンを吐き出しぬ

遊星の五月みどりが象を撃つ

腹切りをする別人のパンケーキ


#川柳 #現代川柳 #詩歌 #文芸 #創作 #ヴァンヘイレン

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