脳波（荒馬と女）　　川柳80句

六月の寺に豆乳プリンス・恕

症状の笑福亭をひもづける

噺家の乳母のすべてがみどりいろ

なわとびが士農工商からはずれ

砂づくりらくだ相撲の夜ふけて

詩嚢には柴田恭兵までがある

ゾンビふえ地にひとりきり由美かおる

牛窓に鮭のほろびる世界観

どんたくをしないあいだのヨブの皮膚

レーザーのきりさく闇にヨイトマケ

獣神のずっとはちみつプレイかな

雨乞いて沢田研二のナチス服

東鳩のジョブズもろとも揮発する

雲仙をアルカトラズにかさね書く

添削の回鍋肉を信じぬく

シンボルのぬかを視ている三次元

西東のしびれ薬をもらうたび

ぷれざんすたこ八郎をかえす海

五輪書もやしてうつくしい地球

雨つぶに捕物帖の点字うつ

草加市のしんどばっどの徴兵所

子と母が白黒映画館をでず

鍋を投げウォルト・ディズニーひとりの死

アメーバにふれて六月終わりけり

トラックの襞がどれほど納豆屋

梅雨昏しかんてんぱぱの楽譜盗る

たてじまのひとがつぶやく老夏の記

うつくしくふさぎあいする画家と蟹

よだれかけ父をも超える父と父

薬莢が異常なひとのあまりりす

モノリスを割ってしばらく蚊がとまる

死後の世が異常なひとの印刷機

ミサイルのとびかう星にちゃんこ鍋

主体なく半獣神のつゆをぬけ

暴力に暴力つかう伊勢まいり

六月のくち果てるまでスヌーピー

神田家を昭和の塔にぬすみ撮る

立像に誰たがはりつけるあめふらし

海音寺潮五郎へと雨を乞う

卒塔婆書き換えたる時間犯罪者

メビウスの環にこれという附子がない

天皇のばらばらになる米菓群

アンテナのかぎりすなめり解きはなつ

加トケンの店にわだつみ魚人軍

寛斎がシュプレヒコールする無闇

スケバンとともに空飛ぶ大納言

探偵の貝が腐っているあいだ

ホームランバーをみつをの墓として

合成の田上明がぬるガラス

味平にニューバランスの意味を問う

鉄下駄をためし買いする雨の日々

記念日によくわからない稲荷寿司

揚げものがつながっているユリ・ゲラー

国びらきタッグマッチを撮りながら

表徴の金太まさしく冒険し

アンドレ・ザ・ジャイアントとの夏ごたつ

能記する小幡のいない天文所

チョロＱが金剛界にすててある

うなぎ屋がレキシントンをめざす釘

くちぶえがかわる念仏整体師

豚テキがとおいところの都知事選

箱沼の箱がみつかるビッグ錠

都々逸でいうとリヴァイアサンだった

あさってのドーナツマンに狙われる

漉しあんをレム睡眠のあいだ漉す

章魚の死を渡哲也の花押から

レナードの夜に水引大事典

小松屋に脳をやかれたかげの群れ

被占領国にかがやく沖雅也

ダルシムをつかって雨のつづきかな

犬ころがタカとユージのまえで死ぬ

しをまねき23区の宇宙船

古舘が逆スポイトにたどりつく

そとはあめ二重牛図をみていたり

噴火機をイクラの墓へ押してゆく

ゲーブルもクリフトも死に銀河雲

ロコモコがおおかった日に書く梵字

自瀆するおまえのためのげそ背負い

頬傷のあるいもうとの誕生日

六月が終わるスタミナ美術館

　　＊——「むちうち」が少しだけよくなってきたので、リハビリ作句。2024.6.30

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