表紙_最終_

経営の技法 #55

6-5 定期便
 法務部門は、「甘やかすと各部門が自分で考えなくなる」等の口実で、自ら業務開拓しない傾向があるが、各部門が自分で考えなくなることは運用次第で克服できる問題であり、それを上回るメリットを正しく理解することが重要である。

2つの会社組織論の図

1.概要
 ここでは、以下のような解説がされています。
 第1に、「定期便」は、内部統制(下の正三角形)に関し、社内の巡回法律事務所のようなもの、等と説明しています。
 第2に、「定期便」は、内部統制(下の正三角形)に関し、現場各部門のリスクセンサー機能を高める、と説明しています。
 第3に、「定期便」は、内部統制(下の正三角形)に関し、現場各部門のリスクコントロール機能を高める、と説明しています。
 第4に、「定期便」には、突発的な質問や相談を減らすなどの副次的な効果もある、と説明しています。

2.「定期便」導入プロセス
 このように話をすると、自分の会社でも正式に「定期便」を導入したい、早速、企画しよう、という反応が出ます。
 導入するのは嬉しいことなのですが、正式に企画する点は問題です。
 というのも、法務部が定期的に押しかけてくることに対し、警戒したり、反感を抱いたりする部門が出てくるからです。特に、正式に導入、ということになると、忙しいのにそんな自己満足に付き合ってられない、という反応が出され、賛成が得られない、ということになりかねません。
 ポイントは、ゲリラ作戦です。
 これは、法務部への相談や契約書審査の依頼の多い「お得意様」である部門から、試しに定期訪問を開始する、という方法です。複数の案件が同時に動いていますので、それらをまとめて、しかも面と向かって直接やりとりしましょう、と声がけします。最初は、その都度予定を調整しますが、そのうち定期的に訪問する方が良いね、ということになります。
 そして、定期的な訪問がかえって効率的で、助かる、という当該事業部門の賛同を得たうえで、訪問先を増やしていきます。アレルギーを減らし、かつ、実績をもって他部門への説得材料とするのです。

3.おわりに
 法務部員にとって、定期的に担当する部門を訪問することは、非常に楽しい機会となります。受け身の仕事が多く、外に出る機会は貴重なのです。
 さらに、実際に現場の様子を見ることで、会社業務への理解も深まりますし、担当部門の従業員と仲良くなれ、人脈も広がります。
 「定期便」は、法務部に活気を与えてくれるのです。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月



この記事が参加している募集

推薦図書

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?