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経営の技法 #57

6-7 人事部門との関わり
 人事部門は、間接部門・管理部門であり、直接ビジネスに関わらないことから、ビジネス上のリスクへの対応には直接かかわらないが、会社全体の重要な労働リスクに関わるだけでなく、内部統制そのものを強化するうえでも重要な役割を果たすので、法務部門との密接な協力関係を構築しなければならない。

2つの会社組織論の図

1.概要
 ここでは、以下のような解説がされています。
 第1に、内部統制(下の正三角形)上、人事の重要性が確認されています。
 第2に、会社の中での人事部門の役割について、非常に強力な場合と、非常に貧弱な場合の2つのモデルがあることを、説明しています。
 第3に、労働紛争の質が変化してきて、行政通達などの知識よりも、デュープロセスへの理解と配慮が重要になっている、と説明しています。
 第4に、内部統制(下の正三角形)上、全従業員のリスクセンサー機能を高める必要があるが、そのために人事が重要、と説明しています。
 第5に、法務部員のキャリアパスや、法務部の社内での存在感の観点からも、人事部が重要であると説明しています。

2.指導者としての人事部
 さらに、人事部は管理職にとって頼りになる指導者です。
 私自身も、法務部の部長をしていて困ったり悩んだりしたことが沢山あります。そこで学んだノウハウは「法務の技法」の中で数多く紹介していますので、参考にしてください。
 このように、人事部が管理職にとって指導者の役割を果たすのは、各部門の部門長が会社の有する人事権の一部を行使すべき立場にあるからです。
 「ローマ人の物語」で、塩野七海氏が、ローマ軍の強さは「百人隊長」と呼ばれる中間管理職の指導力にあった、と説明していますが、会社も同じです。単にイケイケドンドンでも、逆にただ厳しいだけでもだめで、チームの力を最大限発揮させ、同時に、従業員一人ひとりを成長させる中間管理職が、会社を活気づかせ、成長させます。
 そして、会社全体の人事を担う人事部門だからこそ、各部門長の良き指導者とならなければなりません。各部門長が適切に人事権を行使し、単に業務を遂行するだけでなく、将来の人材の育成までやり遂げてもらわなければならないのです。

3.おわりに
 『経営学入門』(伊丹・加護野)でも、経営は人を使うこと、と説明しています。
 しかも、専門家を単発で雇うのは、この仕事をやってくれ、という形でその仕事だけの繋がりで済む問題です。しかし、会社組織としてまとめ上げ、使いこなしていくのは、より幅広い付き合いとなり、しかも一対一の関係でなく複数対複数の、立体的な関係です。
 そのような組織を運営するノウハウと責任を負うのが人事部です。
 法務部も人事の重要性を十分理解し、内部統制(下の正三角形)のためにこれと上手に付き合えるようになりましょう。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月

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