見出し画像

松下幸之助と『経営の技法』#294

12/5 天分の発見

~自分の天分を発見したい。まずはそう強く願うことから始めたい。~

 天分とか特質というものがどこにあるのかということは、これは実はそう容易にはわからないのです。つまり、そう簡単に見出せない形で与えられていると思うのです。そのことはちょっと不合理のように思えるかもしれませんが、ここに人生の面白味といいますか、味わいというものがあると思います。そんなに簡単に分かってしまったのでは面白味も薄いのではないでしょうか。容易くはわからないが、それを求めて努力していく、そこに、いい知れぬ人生の味わいがひそんでいると思うのです。
 天分の発見とはそのようなものであることをまず知っておいて、さてそれではいかなる方法で求めていけばよいかと申しますと、まず何といっても、自分の天分を見出したいという強い願いをもたなければならないと思います。成功したいが、そのためには自分の天分を発見しなければならない、どうにかしてこれを見出したいものだという強い思いを、常に心にひめることが第一に必要でしょう。その願いが強いと、日常の生活の中から自然に、自分の天分が見いだせてくると思います。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 よく、仕事の満足感は、金銭だけでなく、達成感、さらに自己実現、と言われます。経営学でも、このような従業員の欲求や満足感を理解し、経営するように、と説かれています。
 すなわち、ここで指摘される「天分」を探し、見つけ出すことの機会を、会社が提供することが、従業員に仕事をしてもらい、成果をあげていくために必要なのです。
 そのためには、従業員自身も自分に合った会社を見つけることが必要ですが、会社の側も、それぞれ社内に様々な仕事と、それに見合っただけの様々な機会があるわけですから、それを従業員の自己実現のために上手に提供し、活用すべきです。そのために、従業員を配置転換したりして様々な機会を与え、適切な人事考課やフィードバックによって成長のための情報提供を行うなど、人事権を適切に使うことが求められます。
 会社の人事権は、仕事の効率性のためだけにあるのではなく、従業員の自己実現のためにもあり、経営のためにも従業員のためにも、非常に重要な役割を担っているのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 経営者が、上記のような会社を従えて勝負を挑む場は市場です。特に起業したての会社などは、ターゲットや会社のポリシー、特色などを最初から考えている場合が多いでしょうから、会社自身の「天分」探しは、それほど必要でないかもしれません。
 けれども、例えば商品やサービス一つだけで会社がある程度大きくなったとしても、経営を安定させたり継続性を高めたりするために、複数の商品やサービスを揃えたくなりますが、その際には、単純にそれまでの延長で良いとは限りません。会社自身の新たな可能性を模索しなければならない場合もあるでしょう。
 また、日本の長寿企業の長寿の秘訣などを研究する「老舗学」の研究成果を見ると、長寿の秘訣は異口同音に、コアな部分へのこだわりと、時代の変化への柔軟な対応がポイントになるようです。例えば、西陣織という伝統産業の業者が、IT関連の素材メーカーに変身した、昔ながらの酒造会社が、酒の製造方法を変えた、等様々な変革、しかも会社のポリシーやメンバーをそっくり入れ替えてしまうくらいの根本的な大変革を行う場合も、多く見受けられます。
 このような場合は、経営者自身だけでなく、会社自身の「天分」を探す苦しみを突き抜けなければなりません。つまり、経営者は会社自身の「天分」を探すべき場合もあるのです。

3.おわりに
 自分探しの旅は、若者だけのものではありません。成熟した大人や会社ほど、惰性と固定観念で固まってしまった自分自身に対する認識をみつめ直すべき場合が多いかもしれません。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。

労務トラブル表面

#書評
#松下幸之助
#コンテンツ会議
#天分の発見

この記事が参加している募集

推薦図書

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?