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松下幸之助と『経営の技法』#357

2/6 責任ある行動

~一個人の失敗は周囲や社会に迷惑を及ぼす。その自覚をもって、責任ある行動をとりたい。~

 今日の社会では、人々は密接につながりあっている。誰でも、自分1人ということは考えられないのである。このような社会にあって、自分の適性にかなった仕事に成功するということは、これは単に自分1人の幸せだけではなく、それは同時に、社会全体に対する貢献でもあると思うのである。
 一方、適性をもたないのに、個人的な感情や欲望にとらわれて仕事をする場合は、失敗することが多いと思う。しかも、その失敗は単に自分だけの失敗ではないのであって、一個人の失敗は周囲の人々はもとより社会全体に迷惑を及ぼし、損害を与えることになるといえよう。
 私は、このことを、すべての人々がはっきりと自覚しなければならないと思う。この自覚をしっかりともって責任ある行動をとるところに、その社会の発展があると考えるのである。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

2つの会社組織論の図

1.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 まず、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者の関係で見た場合、経営者は投資先です。しっかりと儲けてもらわなければ困りますが、投資家も、経営者の資質を見極めなければなりません。
 ここで、松下幸之助氏は、結局、自分に合わない仕事にこだわるのは周りに迷惑、ということを言っています。
 つまり、自分の適性を見極めることこそが、経営者に求められる資質と言えるでしょう。それだけ社会的影響と社会的責任が大きいのです。

2.内部統制(下の正三角形)の問題
 次に、社長が率いる会社の内部の問題を考えましょう。
 1つ目のポイントは、社長の適性に合った組織を作り上げることです。
 例えば、親族会社で創業者の息子が2代目社長として経営を継いだものの、なかなか業績があがらない、という話をよく聞きます。それは、先代社長の作り上げた組織や社風がわか社長に合わない場合が多いようです。もちろん、漠然とした言い方ですから、実際には経営陣が合わないとか、権限移譲の範囲が狭すぎてこっちの顔色を窺う従業員ばかりだとか、分析によって炙り出される原因は多様です。
 2つ目のポイントは、従業員それぞれが適性に合った仕事を担当することです。
 もちろん、特に日本の組織の場合には、従業員の移動をかなり自由に行えますし、それぞれの部門で人事が淀んでしまって活力が失われたり、不正の温床になったりしないように、むしろ上手に人事交流を行う必要があります。ですから、適性に合った仕事を1つだけずっとやり続ける、ということは、人事異動を前提とする日本の会社では難しいところがあります。
 けれども、従業員が完全に意欲を失ってしまうような人事異動を行うことが好ましくない、ということは常識的に理解できます。そして、人事異動には、会社の側から見て、この従業員にはこうなって欲しい、という面と、本人の側からこうなりたい、という面の両方が考慮されるのが普通です。
 つまり、従業員自身にも、自分の適性を見極めることが必要なのです。

3.おわりに
 問題は、適性がそれほど簡単に分からないだろう、ということです。こだわって頑張ることが無ければ、本当の適性はわからないでしょうが、しかし逆に、諦めや見極めも大事です。自分に適性のある仕事を見つけることの重要性は、今日の話でよくわかりました。ですから、適性を探す際にも、このような目標を意識して臨みましょう。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。

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