経営の技法 #68
7-10 政治リスクと為替リスク
会社が国際的に事業展開すると、新たにさまざまなリスクを背負うことになる。製品の海外輸出だけのつもりが、輸出が拡大すると、製品輸出に伴うリスク(品質、価格の安定、納期など)を減らすために物流や製造を現地化するなど、事業拡大に応じてさらにのめり込んでいく傾向がある。
1.概要
ここでは、以下のような解説がされています。
第1に、『経営学入門』の中でも明確にリスクとして検討されている重要な問題である、として重要性を指摘しています。
第2に、政治リスクについて、「リスクセンサー機能」によってリスクの種類に分類しています。次に、「リスクコントロール機能」によって、対応策を検討しています。
第3に、為替リスクについても、「リスクセンサー機能」「リスクコントロール機能」によって議論を整理し、対応策を検討しています。
第4に、以上が『経営学入門』の記載内容の整理ですが、実際に現地化する、という選択肢を選択し、現地法人を作った場合には、現地法人の経営管理が問題になること、その際の問題点は、本書の様々な個所で検討されていること、を指摘しています。
2.法と経営学
「法と経営学」に関する問題意識が、本書執筆の最大の動機です。
「法と経済学」は、結果がモデルとしてわかりやすく示されるので、既に研究分野として確立していますが、「法と経営学」は、どこから手を付けたらいいのか分からない領域です。
しかし、社内弁護士の立場からリスク管理に関わってきて感じることは、社内でのリスク管理は決して「演繹的」に抽象的な命題から議論が始まるのではなく、数多くの事例や経験から「帰納的」に蓄積されたノウハウなどを整理している点が共通しています。
しかも、経営はチャレンジすることであり、適切にリスク管理してリスクを取る決断をする必要がありますから、社内弁護士として関わってきた「リスク管理」は、経営の重要な一部でなければなりません。
ところが、多くの経営書の中で、リスク管理の在り方を正面から検討する場面は、なかなかお目にかかりません。業務品質など、リスク管理の内容がそのまま経営資産となる場面があれば、リスク管理などお構いなしに経営の在り方が論じられる場面もあります。
このように、法と経営の間のコミュニケーションがうまくいっていない理由は、双方にあります。
法の側では、会社のガバナンス(上の逆三角形)について検討が進んでいるものの、内部統制(下の正三角形)については、「会社ごとのご判断」として、検討を回避しています。さらには、ガバナンス(上の逆三角形)さえしっかりすれば、それで会社経営は必ずうまくいく、と本気で勘違いしている法律家や研究者もいる始末です。
他方、経営の側では、リスク管理や法務は専門家の仕事であり、経営はこれに関知せず、お任せしておけばよい、という意識が見受けられます。つまり、経営の側でも、リスク管理を自分自身の業務として責任を負う、という自覚と実績が必要なのです。
その中で、『経営学入門』で明確にリスク対応の必要性を議論している部分が、この「政治リスク」「為替リスク」に関する部分です。
経営の側でもリスク管理の在り方を体系的に議論して欲しいと思い、『経営の技法』で取り上げることにしたのです。
3.おわりに
海外で事業を展開する場合、特にアジア地域で問題になるのが、贈収賄のリスクです。
これは、徹底的に排除するのか、そこそこで折り合いをつけるのか、政策方針の決定から難しい問題となりますが、この点は『国際法務の技法』でかなり具体的に検討されていますので、そちらを参考にしてください。
※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月
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