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経営の技法 #58

6-8 事業分野の専門性
 社会には数多くの種類の事業があり、それぞれの事業分野ごとに固有のルールや規制がある。専門領域が極めて狭いかわりに、当該事業分野のことは何でも知っているような専門家も出現し始めたが、その数や領域はまだまだ限定的である。

2つの会社組織論の図

1.概要
 ここでは、以下のような解説がされています。
 第1に、社内弁護士のキャリアを考えたとき、折角頑張っているその会社の業務分野の専門性を身に付ける方法を検討する、と問題提起しています。
 第2に、残念ながら、社外の弁護士が重宝がられる背景を説明しています。
 第3に、社内弁護士自身が専門性を身に付けるための社外弁護士との関わり方を、いくつか説明しています。
 第4に、内部統制(下の正三角形)の観点から、法的リスクへの対応方法や社外弁護士の使い方に2通りあること、1つはコンプライアンス的に、リスクを避けるため、一定のルールを社内に徹底する場面であり、2つは法務的に、リスクを取るため、デュープロセスを果たす場面であること、を説明しています。
 第5に、社内弁護士だからこそ、リスクを避ける場合とリスクを取る場合の対応の違いを理解できるので、そこに専門性が認められる、と説明しています。

2.事業分野の専門性
 例えばアメリカのエンロン事件(電力会社の不祥事)で明らかになったのは、法律事務所と電力会社の癒着です。この業界では、電力会社の社内弁護士、電力業界専門の法律事務所の弁護士、電力関係の監督官庁の官僚、の3つをグルグルと回りながら専門性とキャリアを高めていました。
 癒着が良い、という意味ではなく、弁護士の専門性が高まっていく中、業界ごとの専門家が増えてくるだろう、という将来予想の話です。実際、金融庁が任期付き公務員として大量の弁護士を雇用するようになり、地味だった保険業界にも保険業界専門の弁護士が増えてきました。そこでは、保険会社の中にいた経験と臨場感も、非常に強い武器になります。
 しかも、一つの事業にじっくりと腰を落ち着けて取り組まなければ、経験や臨場感は身に付きません。
 社内弁護士出身でも十分戦える環境があるのです。

3.おわりに
 さらに、若手の社内弁護士に期待したいことは、経営者になって欲しい、ということです。
 せっかく取った弁護士の資格が生きない、と思うかもしれませんが、そんなことはありません。経営は、利潤を生みだす仕事です。利潤は、チャレンジなければ生みだされず、リスクを取る必要があります。リスクも、無暗矢鱈に取るのであれば、ただのギャンブルです。ビジネスですから、リスクは適切にコントロールして取らなければいけません。そして、弁護士だからこそリスクコントロールが上手にできるはずです。
 つまり、弁護士資格ではなく、弁護士のセンスを生かし、上手にリスクを取れる経営者になれば良いのです。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月



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