おりど病院身体拘束裁判2022.5.11 証人尋問 看護大学教授 NO1 原告代理人弁護士との尋問

おりど病院身体拘束裁判
2022.5.11 証人尋問 看護大学教授 
NO1 原告代理人弁護士との尋問

教授『肺炎とは簡単に言うと肺胞とその周囲組織の炎症です。炎症を起こすと白血球などがその肺炎の炎症を収めようとして一生懸命活動します。それが結果痰として発生します。痰の処理を適切に行わなかった場合、痰が溜まります。それは外に出さないと今度は肺内部にどんどん溜まってきます。そうなるとガス交換の面積が少なくなり呼吸状態は悪化します。痰が多くなったり、粘稠度が高くなる。後は下手すると細菌が繁殖し痰の色が変わってきたりします。
気道以外の肺の内部にも溜まります。溜まった痰は上気道を通して排出しませんと溜まりっぱなしにり、そこにまた菌が増殖します。とにかく体位交換をして、その溜まった痰を気道に流れていくように左の肺がやられている場合は即右にしてどんどん肺から気道に痰が行くようにしなければいけません。痰が溜まっていくと病状が悪化しガス交換ができなくなってしまいます。
肺炎患者に対して体位交換は2時間に1度です。
患者の身体を拘束すると言う事は自由を奪うことになる。自分たちの自由が奪われたときのことを考えてもわかると思いますが、当然患者さんにとっては非常に苦痛です。そして、身体はその時点から動けなくなるので血栓ができたり、長期になると関節が拘縮する。心肺機能が低下し、そうすることによって新たな感染症を引き起こします。
精神的には非常に恐怖だと思います。恐怖のほかにとにかく自分の尊厳を奪われたと言う屈辱的なことを感じます。そういった精神的な不安はものすごく強いです。
肺炎患者特に焦点を当てたときに、肺炎患者に身体を拘束するのは弊害がある。特に心肺機能の低下、屈辱、それから恐怖等による強いストレスが加わりとても患者さんを衰弱させていく』

弁護士) そういう弊害を踏まえたときに肺炎患者さんの身体を拘束あるいは拘束を継続すると言うことに当たってどういう注意が必要になりますか?

教授『まぁ拘束しちゃいけないんです。拘束しなきゃいけないっていうのは本当に困りましたね。やらなきゃいけないとすれば本当に切迫しているかです。今、拘束しないとその患者さん及び周りの人に生命の危険が及ぶのかって言うことを考えなければいけません。
時間的なことだったりとかそういうことを考えてとにかく拘束に代わる方法を見つけることが必要です。』

弁護士)そもそも肺炎患者に対して身体拘束をすると言うこと自体あなたの立場から考えるとあまり考えられないことなんですか?

教授『考えられません』

弁護士) 看護婦の立場に立ったときに新たな患者を受け入れるとき、どうやって患者さんの病態を把握しますか?

教授『もちろん直接観察をします。看護師は必ず五感でまずちゃんと患者さんを見なければいけません。直接、体の状態、バイタルの測定をしてメンタル含めて直接観察をします。高齢だと言うことでやはり認知機能がどれぐらいなものか、それでなくても高齢者の場合環境が変わりますと認知が一過性に低下することがあります。これはもう常識です。
前の病院の情報提供、看護サマリーに書かれている事はほぼ注意して読まなければなりません』

弁護士) もし仮にあなたが看護師として看護に当たっていたら、前の病院で自己抜針があったと言う点についてどういう対応をされますか?

教授『自己抜針歴はそんなに珍しいことではないです。まず患者さんが自分の治療と言うものをどういう風に認識しているのかと言うことを、安全な環境の中で安心して話せるように、そういう雰囲気の中で認知の状態を確かめます』

弁護士) 筋力低下があることから転落転倒の危険性ありと言う記載があります。もしあなたがこの看護に当たっていたらどういう対応されましたか?

教授『91歳であることと栄養状態は良くないわけですから、当然筋力の低下はあるだろうなと思います。一応は低床ベッドを使用して、その下に弾力性のあるマットを敷く。それぐらいは最初の段階でします』

*カルテの時系列
7月7日16時4分上肢抑制確認・毎日・2時間おき。
17時17分上肢体幹抑制確認・毎日・2時間おき
"訪室すると上体起こし柵を外している"と言う記事がある。プランには3点柵、柵カバー、センサーマット設置、体幹上肢抑制開始。
この時点でフル抑制が始まった。

弁護士) 愛知医大の看護サマリーにはベッド上で起き上がり柵を自ら持ち上げることもある(そのほとんどは尿意のある時だ)と言う記述があります。入院当初、看護師が確認する記録だと思いますが、これを見ていたら柵を上げようとしていたと言う点に対して、貴女ならどういう対応をしますか?

教授『愛知医大でもそういう行動があったのでしょうから尿意がある時がほとんどであると。だけどその他のこともあろうかと思いますので、トイレですか?って言うことをお聞きします。あるいはそうでなかったら何をやりたいかとちゃんと落ち着いて聞きたいと思います』

弁護士) ちなみにもしトイレだと言われた場合はどういう対応をされますか?

教授『車椅子あるいは歩行器で移動できるということがサマリーにありました。車椅子か歩行器を持ってきて移動させます』

弁護士) あなたの見解だと自分だったらやらないと言う事ですが、実際には身体拘束が開始されています。おりど病院の看護師はどういう検討した上で身体拘束を開始したと考えられますか?

教授『何も検討していないと思います。速やかな拘束だったと思います。確か3時ごろに入室して4時何分の時点に上肢抑制をしております。そして5時20分には柵を持ち上げていたと言うことがあり、体幹拘束帯もその時につけたんだろうと思います。体幹以外の拘束はセンサーマットも置いていましたし、拘束は早い段階から始まったと思います』

弁護士) 愛知医大の時からせん妄があったようなんですけど、今回被告おりど病院の記録を見てせん妄の症状にどういう特徴があると考えられましたか?

教授『通常、見当識障害と言うものがあります。患者さんには見当識障害があったと思います。
普通は時間、場所、人の順番に障害されていくものです。でもこの方の場合は人の認知が障害されておりません。人をちゃんと区別できると言う特徴がありました。もう一つは言葉の障害が非常に少なく、とても言語機能を保たれていました』

弁護士)せん妄の患者さんに対して身体拘束をすると言う事はせん妄への対応としては適切なんでしょうか?

教授『いいえ適切ではありません。有害です。
この方は人の認知が障害されていなかったと言うこともありますし、おりど病院の看護婦を非常に怖がっておりました。やはり身体拘束を5時20分に受けているので7時20分ごろには"人殺し助けて"と言っております。多少の認知の歪みがあったとしても、自分を縛ったり危害を加える人に対して被害的になって殺人者だみたいに思っていたんだと思います。ですからSTの人とかピーチセラピーですね、それからPTの人なんかにも"自分は殺されるかもしれない逃げ方を教えてよー"と言うことを言っていて、明らかに看護師は危害を加える人。ST、PTは助けてくれるかもしれない人と認識しています』

弁護士) 改めて被告おりど病院の看護師はせん妄に対してどういう対応を取るべきだったと考えられますか?

教授『まずせん妄を起こさないことが基本です。とにかく安全安心感を与えるなくては収まりません。拘束を早く解いて安全であることを患者さんが思えるようにしなければいけない。
被告病院の身体拘束について記録がないです。
電子カルテ上では"上肢体幹抑制確認と2時間毎"にチェックされている項目がありますが、体位交換をされた記録がありません』

弁護士) 体位交換についてどのような記載がされていますか?

教授『褥瘡のチェックリストのようなものがあります。評価表がありますが、そこに最初7月7日 6時5分 "自力で体位交換可能"と言うような記載がありました。それだけです。"ベッド上 自力で体位変換"と。
自力で体位交換可能】この記録は身体拘束を受ける転院直後の状態ですが、死亡する日までコピペして毎日記載されていました。

弁護士) 上肢体幹抑制が行われていた状態で、患者さんが実際に自ら体位変換を行うことが可能だったと言うふうに考えられますか?

教授『いいえ、無理です』

弁護士)被告病院のS医師はご家族に対する説明の場で、3から4時間ごとの体位変換で1日5〜6回行っていたと説明をしています。
実際、こういう説明に合致するような記載は病院の記録にありますか?

教授『ありません。医師が体位交換の場面に立ち会うのを、見たことも聞いたこともありません』

弁護士) 体位交換が行われていなかったとすれば、痰の排出にはどういう影響がありますか?

教授『どんどん溜まっていったと思います』

弁護士)被告病院の記録だと身体拘束が確認されて以来、痰の発生の量とか粘稠度とか何か記録で変化を追っている形跡はありましたか?

教授『10日の日の記載にピーチクセラピストの方が最初に端を口の中に白いものがあると言う形で記事に載せました。が、看護婦が本格的に記載するようになったのは12日以降です。
被告病院の看護師は患者さんの痰をきちんと吸引できていなかった。肺炎が重篤言うのは痰吸引をしてもSPO2は改善しなくなるんです。ある程度しますと改善しなくなります。
7月12日午前6時30分に"経鼻酸素 2リットルにてSPO2 89%であったが吸痰後95%へ"と言う記載があります。この記載からすると痰吸引で酸素濃度が回復していたと言うふうに読み取れます。
7月12日午前10時33分"口腔内痰貯留 SPO2が吸引にて上昇する"と言う記載があります。この時点でも吸引で酸素濃度は回復していたと読み取れます。一時的ですが』

弁護士) 身体拘束が続いている状態で体内の痰はどういう風になっていたと考えられますか?

教授『どんどん溜まっていったと思います。肺炎が悪化していると思います。
7月13日 "SP O2 67%" と言うことが書いてありますが、かなり意識障害も出ています。60%位になりますと意識がなくなったり、昏睡状態に入ったりします』

弁護士) 最後に今回の被告病院のこの身体拘束についての評価なんですけど、人員が充分でなかったから、身体拘束を継続させせざるを得なかったと言うふうに考える事はできますか?

教授『できないと思います。おりど病院(2階病棟)は10対1の入院基本料金をとっています。そんなに看護婦が少なくて"もう"って言うような状況ではないだろうと思います。この7月7日の拘束された当日は看護師の数が12人いました。12人の看護師がいて拘束しなければいけないほど忙しくてと言うような状況ではないと思います』


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