バベルの塔(1563年頃)【140字絵画小説】
作 ピーテル・ブリューゲル
所蔵 美術史博物館 ウィーン
140字小説
「ここもか……」
王は深く項垂れた。目の前にいる民は相変わらず訳の分からない言葉を話している。
今朝方、世界が一夜にして一新した。突然わけのわからぬ言葉を話す奇病が発症したのだ。
一つにまとまっていた世界が分断を始めた。
塔を見上げた王は、これが神の御業であることを静かに悟った。
個人的解釈
一度は聞いたことのある「バベルの塔」
その目的は天にいる神の領域まで手を伸ばすためだったとされています。
絵にも描いてありますが、塔の周りには街が広がっています。つまり、世界が言葉による分断をされる前まで人間は一つの民族であったということです。
そもそもこのバベルの塔は、ノアの箱舟による洪水を免れた人たちの子孫が建てようとしたといわれています。(諸説あり)
ですが、そんな人間たちの業に怒ったのか、神は人間の言葉を乱します。
それは天に届く塔を建てようとしたことへの罰だというのが一般的ですが、人間が世界各地に散らばらなかったからともいわれています。
つまりノアの箱舟以降、神は人間を世界各地に散らばせたかったが意図せず一つの民族として暮らし始めたので、言葉を乱したというわけです。もしそうだとすれば随分と身勝手にも感じられますが、きっとそうしないといけない理由でもあったのでしょう。
世界がひとつになるというのはある意味平和なことかと私は思います。ですが現代でも人々は多種多様な言語を話し、決してひとつにはまとまっていません。それを踏まえて絵を見ていると、世界は決してひとつにはなれないという比喩にも見えてきます。
同時に、ひとつにはなれなくても互いに協力することはできるという意味も見えてきます。
世界がひとつにならないのは言語のせいか、はたまた欲のせいか。そんなことも感じさせてくれる一枚です。
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