568○ マザー
「マザー」
忘れないでおこうと思ったことは
しっかり閉まってきたつもりだったけど
写真が色褪せるように
鍵は錆び付き入れ物は傾き
まずの所在も曖昧になってしまって
ようやく見つけた思い出は
手に取った途端に綻びてしまった
あなたと共に暮らした日々が
前世くらいに思えてしまえても
僕は覚えている
ただ一人唯一無二の物語を
これからどこまで連れていけるだろう
僕の崩壊はどこから始まるかによるが
鮮明な海はぼやけて
青さに白さが増える度に
強く想えればいいな
起きしなの眼鏡が頼りなくなるまで
輪郭が景色に溶けるまで
段幕の下降がそこまで
あなたを想う
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NAKAJI
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