今日会いに行きたい!気になる土偶 #008釈迦堂遺跡博物館
失ってしまった顔は、
慈愛に満ちたやさしい顔であったのでしょうか。
首から上は失ってしまいましたが、
それでも、
両手でやさしく、大きなお腹を抱えている姿であるのは分かります。
円錐形の花瓶のような形で、中は空洞になった円錐形土偶と呼ばれるものです。
縄文時代中期に中部高地から北陸にかけて作られました。
どっしりと立たせるために、あえて脚を作らないでこの形になったと思われます。
実はこの土偶の体形や手のしぐさは、南アルプス市の子宝の女神として知られるラヴィ にそっくりなのです。
ラヴィは、まるで子どもを宿したお母さんが子どもを慈しむような姿に見えることから、妊婦さんに人気の土偶として知られています。
同じ南アルプス周辺地域の遺跡から出土したことからも、顔を失ってしまった土偶もラヴィと同じような妊婦さんであったようです。
ラヴィについてはこちら▽をご覧ください。
顔を失った土偶の現在の高さは約10㎝弱、仮に顔があったとしても高さは15㎝ぐらいでしょうか。
それに比べてラヴィは高さ25.5㎝と大型の部類に入る土偶です。
さらによく見てみると、ラヴィは全体的に精工に作られていて、顔を失った土偶は粗い作りのようにも見えます。
よく似ている2つの土偶ですが、この違いにはどんな意味はあるのでしょうか。
一説では、大型の土偶はその地域のシンボル的な土偶であって、それを真似して作られたのが小さな土偶であったのではないかと考えられています。
大型の土偶は、地域の祭祀などの女神となるように大切に作られ、その後も壊れることのないように、石で囲んだりするなどして土に埋められたようです。
そして真似してつくられた小さな土偶は、小さな集落などの土偶であって、
大切にされたものや、時には身代わりや信仰のために故意に壊されたりと様々な運命をたどったと考えられています。
大きさは違っても、
2つの土偶お母さんの手からは、
じんわりと優しい温かさが伝わってきますね。
お読みいただき有難うございました。
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