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どしゃぶりの中、環状列石を歩く -岩手の縄文時代 -

先月の半ば、岩手県世界遺産「御所野ごしょの遺跡」を訪ねた翌日のこと、前日の晴天が嘘のような大雨、明日はさらにもっとひどくなるとの予想。

その日は、盛岡市からバスで30分程の縄文遺跡を訪れる予定。
世界遺産の遺跡とは違い規模も小さく知名度もぐっと低い、それだけに情報も少なく逆に興味がそそられていました。

2泊3日の旅、もうこの日しかチャンスがなさそう…ということで、大雨の中向かうことに。これこそ旅の醍醐味というのでしょうか。



向かったのは湯舟沢環状列石ゆふねざわかんじょうれっせき
盛岡駅からバスで40分弱、途中で次々と乗客が降り、たった一人になった私、大規模ニュータウンの端に降り立ちました。遺跡はニュータウンの開発で発見された約4000年前(縄文時代後期)の環状列石です。

人っ子一人いない中、バス停から歩くこと3分。雨も風も容赦なく、このわずかな間に全身ビショビショ。

そして見つけた看板!
可愛い?土偶が手招きしている!もうこれだけで嬉しさひとしお。
この嬉しさも大雨のお陰と思うと、悪くはないようにも感じます。


環状列石に併設するのは「滝沢市埋蔵文化財センター・縄文ふれあい館」
職員の方がびっくりした顔で迎えてくれました。こんな日は当然のごとく来館者は他にはいないようです。


そして入って直ぐに目にしたのは、この石。
なになに、この石は?

何とホンモノの環状列石の石
約4000年前に縄文人が運んできて並べた石が、ここに展示されています。

え⁈触っていいの!

もう感激、本当は頬ずりしたいぐらい!
ひんやり冷たく、見た目以上にザラザラしています。
約4000年前の人もこうして手を置いたのかしら…と一頻り石の感触を楽しみます。

そして、
いよいよ環状列石を見に行きます。
因みに外の環状列石の石は、出土した石と同じ形状のものを、実際に縄文人が石を採ったと思われる場所で探し、再現したものです。

職員の方が用意してくれた〝黒い長靴〟と〝大きな傘〟で、雨にも負けず‥の意気込みが沸いてきます。


これが湯舟沢環状列石ゆふねざわかんじょうれっせき
環状列石はストーンサークルとも呼ばれ、墓地と考えられている場所です。石を〝一定の形〟に並べ、それをいくつも配置して大きな環状にしています。


この辺りには、大きく厚みのある石が多いみたいです。2~3人でやっと運ぶことができそうな大きさです。
〝石を運んだ道〟の跡が発見されていることから、計画的に石を運んでいたと考えられています。


こちらは小さめの石で構成されています。
両脇に縦にした3つの石、その中央にいくつかの小さい平たい石を並べているようです。
この下に死者が眠る穴がありました。この石の置き方には何等かの意味が込められているようです。


見つけた!
さっきロビーにあった石と同じ形をしています。
両脇に大きい石、その間に縦に石を並べています。


石の大きさや形は様々で、それを組み合わせた〝一定の形〟は、いくつかの種類があるように思えます。
こうやって一つ一つ見ていくと、それぞれに工夫を凝らした墓標のようにも見えてきます。

あいにくのお天気で遠くまでは見渡せませんが、環状列石は西方向にそびえる山の正面に作られています。
春分の日に環状列石の中央に立つと、山頂に沈む夕日を見ることができるそうです。その日には人々が集まり、祭祀が行われたと考えられています。

石を選び、運び、組み合わせて、死者を弔う。
1年に1度、神聖なる山の頂に夕日が沈む日に、皆が集まりマツリが行われれる…沈む夕日を人間の死と重ね合わせていたのでしょうか。

私たちがお盆に〝先祖の霊を迎い入れる〟のと似ているような…そんな意味もあったのかもしれませんね。




気が付くと大雨であることもすっかり忘れ、環状列石を一歩、また一歩と一周していました。
遠いご先祖様のお墓参りをしたように、心はとても清々しく穏やかに。

環状列石をたった一人で噛みしめるように歩く…大雨もまた良しと思えた訪問となりました。


参考図書
滝沢市の文化財  滝沢市教育委員会

最後までお読みくださり有難うございました。

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