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「感情」からの避難訓練。

ドラマ『ミステリと言う勿れ』の「どうしていじめられてる方が逃げなきゃならないんでしょう」というセリフが話題になっている。「(欧米では)いじめてなきゃやってられないほど病んでる。だから隔離して、カウンセリングを受けさせて、癒すべきだと考える」といった一連のセリフを聞きながら、ふと思った。感情からの避難訓練を、そろそろちゃんと考えてもいいんじゃないだろうか…と。

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「逃げてもいい」より逃げる方法

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いじめに限った話ではないけれど、定期的に「逃げてもいいよ」と伝える名文は話題になる。例えば、梨木果歩『西の魔女が死んだ』の一文。

「(略)自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」
梨木果歩『西の魔女が死んだ』P102

Twitterなんかでは、産経新聞に掲載された13歳の投書が度々話題になる。

『逃げ』

逃げて怒られるのは 
人間ぐらい
ほかの生き物たちは
本能で逃げないと
生きていけないのに
どうして人は

「逃げてはいけない」

なんて答えに
たどり着いたのだろう
産経新聞投書 森田真由

どちらも素直な言葉で、深く考えさせられる名文だと思う。

しかし先日、「思春期の男子はテストステロンが増え、攻撃性は増すものの理性で抑えられず、いじめが起きやすい」「オキシトシンの影響で、和を乱すものを攻撃してしまう」という解説を人気ゲーム『LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶』で見た。それでいくと、動物が本能で逃げるように、人間のいじめも本能で起こっているらしい。ではどうしたらいいのだろうか。

子どもがオトモダチに嫌がらせをされていて、親御さんが「やめて」「どうしてそういうこと言うの?」と伝える練習をさせたという話を以前Twitterで見かけた。その子が意を決して練習した通りに伝えると、相手は言葉を濁し嫌がらせをやめた…と記憶している。私はこれを読んで、「逃げてもいいよ」と伝える以上に「逃げ方」を教えた方がいいと思った。


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辛い感情から逃げる訓練

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「いじめって、気持ちが良いんですよ」と、脳科学者の中島信子さんが言ってた気がする。「制裁」を加えると快楽物質のドーパミンが出るんだとか。でも、いじめに至るまでに加害者は、辛い感情を抱くのではないかと思う。

▽認知:「バカにされた」「無視された」
▽感情:「むかつく」「恥ずかしい」
▽行動:いじめる

この「認知」→「感情」→「行動」の、感情に振り回されない方法を訓練できないだろうか(認知行動療法については割愛)。そう思ったのは、最近面白い言葉に出会ったからだ。

心こそ心迷わす心なれ 心に心 心許すな
最明寺入道時頼

玄侑宗久『禅的生活』で、「禅は心を信用せず、心をバカにしているのだ」という話で引用されていた。正確には「何かに染まり歪んだ心を」だが。
心や感情なんかに振り回されてたまるか、と思えたらちょっといい。それができたら私の黒歴史の大半は無かったことになる気がする(苦笑)。


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怒りの10分類

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私の好きな言葉に「分けると分かる、変わる」がある。なんだか簡単そうに見えて、結構奥が深い言葉だったりする。

さっき書いた辛い感情である「怒り」も、仏教では10分類できるそうだ。そして不思議なことに「あ、今私が感じている怒りはこれだ」と気が付くと、するりと収まったりする。こればかりは体験してみて欲しい。個人差はあるだろうけど。分類は以下の通り。

①基本的な怒り:暗い気分・嫌な感じ・退屈
②増悪:表出せずにはいられないほど①が高まった怒り
③怨み:①を繰り返し妄想し、増殖した怒り
④軽視:人の良いところを見ずに欠点を探す
   (大したことないヤツと思いたいのに思えないときの怒り)
⑤張り合い:際限なく相手と戦い、つぶしたいと思う
⑥嫉妬:人と比較し、自分にないものを理不尽に思う
   (④とは違い、相手の長所が見える)
⑦物惜しみ:自分の楽しみを他人にあげたくない
    (しかし共有できないからこその不幸スパイラルへ…)
⑧反抗心:かたくなで、人の言葉を聞き入れない
⑨後悔:過去の失敗を思い返す
   (自分に対しての怒り)
⑩異常な怒り:原因のない、破壊的な怒り

⑩は本当にヤバ過ぎて理解できないが、大量殺戮とかに繋がるのはコレなんだとか。

単純に「むかつくわー」で済まさず、ぜひ感情を分析してみて欲しい。そしてこの10分類のみならず「あ、私は怒ってるんじゃなくて、傷ついて拒絶してるんだな」とか理解できると、無暗に他人にあたらずに済むはず。女性の場合は「PMSだな」とかも大事。そんな感じで、自分を客観視することが「どうしようもない感情からの避難訓練」になると思う。

誤解を恐れずに言えば、守るべきは被害者だけではない。いじめをして「加害者」になる前の人たち。自分を含め、彼らが感情から自分を守る方法をたくさん身につけられたらいいと思った。

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余談:冬のメンタルの守り方

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前の投稿を「本日の注目記事」に選んでいただいたこと、そしてたくさんの反応をいただいたことに喜んでおります。本当にありがとうございます!

その一方、ライターの仕事がぱったりぷっつりと途絶えてしまい、メンタルがベッキベキにへし折れておりました(苦笑)。自己批判とか、それはもう感情に振り回されてひどかったです。

1人暮らしの時に身につけたことなのですが、原因が何であれ冬場にメンタルが落ちた時に浮上する私なりの方法があります。仮眠・肉・風呂・酒(少し)・日光の摂取です。大事なので太字にしちゃいます。

人間体温が下がるとろくな思考になりません。肉を食べる理由は…トリプトファンがどうとか色々後付けの理由はありますが「焼いた肉を食べて落ち込む気がしないから」です。どーん。

そんなわけで、肉を噛みちぎり、昼風呂しながらココナッツサブレアイス食べ、散歩をしたらちょっと回復しました。皆様もぜひ、メンタル落ち気味になったらお試しください。オススメです。あと、ライターのお仕事ください(切実)。


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