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詩「嵐の夜は君とともに」 2018 5 22

片隅にあるボトルの中にどよめきが詰まっている
蓋を開けるには抵抗があるが必要ならそうするしかない
猫の鳴き声が聞こえる
猫はいない
初めからこんな感じになろうとは思っていなかった
そんなことを言っても仕方がない

つまるところここには逃げ込んできた
しなければいけない必要なことを極限まで減らすため
出会う必要のない人にできるだけ出会わないようにするため
動揺は正しい判断を曇らせる
そんなことを言っても仕方がない

夕べ父からかけられた言葉はいただけないものだった
彼は下手にでて小遣いをくれといった
仕事もない彼の生活を断ち切る勇気はない
だた今は父のことを思う余裕はないというだけ
迫ってくるものがあれば身を潜めるのも悪くない選択

マーマレードのビンの中には不信と断罪が詰まっている
蓋を開けるには抵抗があるが必要ならそうするしかない
味を占めた亡霊たちが辺りを囲っているのがよくわかる
ここに留まることは決して安直な撤退なのではない
主語の欠いた文のようにごく自然な多少の不均衡だ

嵐がやってくる粗暴な風体で
互いを守ることはできなくても
恐怖を分担することはできる

嵐がやってくる粗暴な風体で
戦慄く暇はいくらでもある
なぜかときめくものもある

朝食と昼食の間隔があまりにも狭すぎる
ついさっきパンを食べた
昼にはベアリングを食えと
消化が追い付かないように不真面目も追い付かない
そう
嵐の前には不思議な高揚が誰にも巻き起こる
変身を好み倒壊を好み散財と降り掛かる実存は敬遠する

数えるのは危険で無鉄砲な行為だと誰かが言った
それには全くの同感で明るみに出してはいけない念がある
焼き討ちをかけられた教会には7人のシスターがいた
道徳は常に童心を地道に打ち貫き素直を凌辱する
返り討つ覇気がなくとも武器の一つは持ちたいもの

味気ない日々にアクセントやスタッカートを潜りこませる
振り回す強雨も不躾な強風も目で確認することはできない
クリーピング
胃も腸もさりげなく回転してクリーピング
そこでは誰もがクリープであると分別される運命にある
あたかも現実と参画と分別が同義であるかのごとく

焼き討ちにあったシスターの一人の言葉を伝聞した
「まさか神聖である教会を本当に焼くとは思わなかった」
助ける人がいればいるほど偽善が立ち込める穴になる
今夜は荒れるらしいと伝えた予報も立ち込める穴になる
そこに穴があるのであれば仕掛ける狩人もいるということ

嵐がやってくる粗暴な風体で
互いを守ることはできなくても
恐怖を分担することはできる

嵐がやってくる粗暴な風体で
戦慄く暇はいくらでもある
なぜかときめくものもある



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最後まで読んでいただいてありがとうございます。あなたに会えて幸せです。

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