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【エッセイ】「詩のことば」から思うこと。

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「詩のことば」から思うこと。 さまざまな詩のことばから、こぼれ落ちる思いをつづります。
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ゆびは 花咲く

ゆびは 花咲く

2021年、新しい年が始まった。

毎朝、窓の向こうにオレンジ色に輝く朝陽がのぼる。

日々、わけへだてなく世界を照らす、その光に手のひらを合わせる。

そっと、自分の手のひら、一本一本のゆびをみつめていると、ゆっくりとある詩のことばたちが思い浮かんだ。

 ひざの うえに

 てを ひろげてみるたびに

 むねが つまる

ちいさな ゆびたちが

 わたしに さいた

 わたしの はなの

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秋、ひかりこぼれる

秋、ひかりこぼれる

朝目覚めて、窓を開けると少しひんやりする。

すこしずつ秋が深まってゆくのだ。

透明な空気を吸い込む。

澄んだ空の青がまぶたの内側へと広がってゆく。

秋になると、ひもとくのは

八木重吉の詩。

 

 ひかりがこぼれてくる

 秋のひかりは地におちてひろがる

 (ここで遊ぼうかしら)

 このひかりのなかで遊ぼう

『八木重吉詩画集』(童話屋)より「秋のひかり」

ひかえめな短いフレーズ

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エリオット『荒地』より

エリオット『荒地』より

春分の日に、お引越しをして一ヶ月半。

仕事の資料をダンボールの城から探し出すのに、
日々、迷い子のよう。

探し出してきた本は
イギリスの詩人、T・S・エリオットの『荒地』。

混迷する時代状況をうたった詩「荒地」の有名な一行目が4月中、ずっと心に響いていた。

「四月は最も残酷な月」

時代が異なっても、詩の言葉は、ときに「今」を映し出すときがある。

だからこそ、支え

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