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「異邦」に居たのは誰か

#異邦の騎士 #読書 #島田荘司 #ミステリ #推理小説 #推薦図書

初めて書いたnoteが「容疑者Xの献身」だったので「異邦の騎士」についても書いてしまおうと思う。というのも一つ前の記事に書いた容疑者Xが好きな人はきっと異邦の騎士も好きになってくれると思うからだ。

本作はミステリ界の大御所ともいえる島田荘司の代表的探偵・御手洗潔を主人公とする一連のシリーズの処女作だ。(実際には彼のデビュー作は「占星術殺人事件」だが、島田自身が本作がミステリ作家として筆を執った最初の作品であると明言している)

正直、本作を読んだことのあるほぼ全ての人が思うことだが、本作は御手洗シリーズの第一作「占星術殺人事件」を読了してから読んで欲しい。占星術を手に取って無理と思ったら「御手洗潔の挨拶」という短編集でもいい。

……が、占星術はミステリ界の金字塔である。御手洗のキャラクター像はシャーロックホームズのように破天荒で愉快(シャーロック愉快か?)な天才なので楽しく読めると思う。ただし冒頭の手記にだけは心折れる人の話をよく聞くので頑張って呼んで欲しい。それでもまあ容疑者Xの献身を楽しめれば余裕で読める。飛ばし読みして読み進めながら戻ってもいい。

楽しい読書であることが何よりなので占星術を読むかは当然お任せです。

ただ、きっと占星術を読んだ後の異邦は、クライマックスの寂寥感が段違いだ。溢れんばかりのリリシズム……改訂愛蔵版の帯にあったとおりだ。

そのときの余韻はまだ残っている気がする。

記憶を失った青年が美しい女と運命的に出会い、一緒に暮らし始めるが幸福な日々は彼の無くなったと思っていた運転免許証を彼女が隠し持っていたことで壊れ始める……。多くのことがネタバレに繋がってしまうのでこの程度のあらすじしか言えないが、この記憶を失った主人公がとても魅力的なのだ。彼が心中で言った「御手洗と良子が居れば俺は幸せだ」の一言が全てを表す。記憶を失い、嫌な仕事に向かう日々。たが見知らぬ土地で出会った恋人と友人が居る。今までのことは分らないが今は人生で一番幸せだと笑う。

そんな彼を待ち受ける運命をぜひ見届けて欲しい。

きっとラストスパートの疾走感と美しく叙情的な文章に撃ち抜かれるだろう。

異邦の騎士 改訂完全版 島田 荘司 https://www.amazon.co.jp/dp/4062637707/ref=cm_sw_r_tw_dp_sULYFbXGT73WH?_x_encoding=UTF8&psc=1 @amazonJPより

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