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親孝行ならぬ祖父孝行、生きてるだけでいい

先日。と言っても、2023年11月の紅葉が見ごろの時期になるのですが、祖父を連れて浜松の山奥へドライブに行きました。

祖父の年齢は・・・だいたい90歳オーバーです。
だいたいね。数年前に米寿のお祝いをしましたから。

祖父は、農家・林業育ち、戦争を経験し、結婚してから定年までは安月給の会社勤め。労働環境が今とはずいぶん違う当時の話を聞くと、たかだか27年生きた僕では考えれないレベルの苦労人だと思います。そんな祖父ですが、定年後に仲の良い仲間と始めた庭師の仕事が楽しく充実していたようで、年金+αのお小遣いで今までと比較すれば割と充実した生活を送っているようでした。

ちなみに僕は、定年後の充実して幸せそうにしている祖父しか見たことがありません。僕が在りたい姿のひとつです。

僕の趣味が山登りということもあって、浜松のすごーく山奥・水窪町に行ってみたいと軽はずみに言ったら、祖父も行きたいと。それなら一緒に行こう。

水窪町は浜松駅から70km、車で2時間の場所にあります。後で調べたところ、直線距離で東京駅から栃木県南部の古河市までに相当して、びっくりしたことを鮮明に覚えています。静岡って東西にも、南北にも長い・・・。

かつて、良質な木材が採れたことによる林業バブルで栄えた水窪町。祖父も一時期この水窪町まで来て、林業をしていた思い出の地らしい。山住神社・足神神社。むかーしむかしの思い出話が尽きません。

もともと寡黙だった祖父ですが、数年前に入院したことがあり、それを機に思い出話をよく話すようになりました。知らなかった地域の歴史・祖父個人の歴史があったんだなあ。話している様子が嬉しそうです。

長いし、何度も同じ話だなと思うこともありますが。

前置きが長くなりました。

僕がなぜ祖父とわざわざ山奥までドライブに行きたいと思ったのか。それは宇宙兄弟のシャロンのこの言葉が胸の奥にあったから。ALSを患って身体が動かなくなっていくシャロン。人工呼吸器をつけることに迷いがあるシャロンに対して、六太がかつてシャロンに言われたことを回想するシーンです。

「人は何のために生きてるの?」
―(中略)―
人はね―誰かに―"生きる勇気"を与えるために生きてるのよ
誰かに―勇気をもらいながら

宇宙兄弟 小山宙哉 24巻 #232 答え

胸アツです。親孝行や祖父孝行を考えるきっかけとなった言葉。

僕自身の心の葛藤を言語化するために、もう少しだけ僕自身が置かれている状況をお話しします。

僕には、このnoteに登場する祖父の家系だけで、いとこが9人います。僕以外の8人は既婚者で、僕だけが独身です。おそらく僕のパートナーを紹介してくれるのを、祖父は待ち望んでいることでしょう。僕個人として結婚願望があり紹介したいのは山々ですが、まだ予定はありません。

祖父はまだまだ元気に畑仕事を行っています。しかし、前述したように祖父は90歳オーバーでだんだん弱ってきているのをひしひしと感じています。正直いつ万事尽きる状態になってもおかしくないなと思います。本人が一番そのように悟っているのかもしれません。

僕は、報告できるように好いパートナーを見つけるぞという生きる勇気を。
祖父は、孫9人全員が結婚しました!という報告を聞くために生き続ける勇気を。

言葉にしたことはないけれど、祖父の頭の片隅にも同じ思いがあると思います。生きる勇気の享受ですね。

ただ、僕の人生で重要な決断でもあるので、慎重に決断したい。考えた末に時間稼ぎのようなつなぎとして、浜松の山奥へドライブという祖父孝行を決行するに至りました。

ドライブに行って嬉しそうにする祖父を見て、心の底から連れて行ってよかったなと思いました。それからずっと抱えていた僕自身の心のモヤモヤの正体が分かって少しだけ晴れた気がして。

モヤモヤの正体。兄二人の結婚式の日に、僕は恥ずかしいくらい大号泣しました。孫5番目と8番目の結婚式でした。当時は新婦のスピーチに感動したと思っていましたが、実はちがう。大号泣の原因すなわちモヤモヤの正体は、結婚に対するプレッシャー。

兄弟でもいとこの中でも末っ子ということもあり、順番通りになら最後だしとお気楽に考えていましたが、いざ自分の番が現実味を帯びてきて脳内がパンク。周囲からの無言の注目と期待。未知の経験過ぎて情報と感情を処理できていない状態でした。

27歳になり、仕事も多少こなれてきて、趣味の山登りで山道の運転も鍛えられ、気持ちと自分ができることのギャップが縮まってきたこの頃。今だから提案できたドライブに行こう。行ってよかったです。

孝行とは、自分も親も祖父母も、みんなが元気な内にやっておくもんだ。何回したって好いもんね。

理想とする一番の形ではまだないですが、今回祖父孝行ができたことでモヤモヤの50%が解消された気分です。本当に楽になりました。

心に余裕ができた分だけ、別の形で祖父だったり別の人へ生きる勇気を還元しよう。それが今の自分にできることだと信じて。

生きててほしいんだよ。

おわり。

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