31歳中年、ロードバイクは落車でゴー!

ドモ!
Nakasoneです。
今日は誕生日。
特別なにかしようってワケでもないし、平日で仕事だし、夜は車の点検があるし、Amazonはブラックフライデーだし。
帰宅後、自分自身には何ひとつ目新しいことは無いけれど、歳をひとつ重ねた事もあり「そろそろ真面目に人生設計するか!」と唐突に思い立ち、ノートとペンを用意したところで力尽きてスマホをタップ。
Amazonをサーフィン。

「やっべ、充電式電池のAmazonベーシックあったのかよ。しかも安い。買っとくか。」
「あ、自転車の鍵もあるじゃん。ごっついなぁ。買っとくか。」
「モビルスーツの教科書。買っとくか。」

片っ端からカートに入れていくNakasone。
引き落としの事など考えない。そう、今は考えていない。
人間万事塞翁が馬。その時々に身を任せるのもまた一興。
しかしこの数十秒後、Nakasoneは少しだけ悩むこととなる。

ダイエットサプリをカートに入れようとしたその時、Nakasoneの頭を一瞬なにかがよぎった。
こういうのは気になりだすと頭の中の体積を大きく占めだすから大変だ。
Nakasoneは天井を見るようでも見ないようでもなく宙を捉え「うぁー」と鳴いた。
頭をよぎる「一回健康診断行ってきたら?(C.V.友人)」というありがたいご忠告。
ちくしょう、こんな時に限って脳内サラウンドシステムで再生されやがって。

確かにNakasoneは肉付きが良くなった。
いや、肉付いている。
ここ8年で言葉にしにくい変貌をした。
このままでいいのか。
右足の親指の付け根が痛い事を突然に思い出し、足の指をグーパーしてみると、案の定痛みが走る。刺すような痛み。
「痛風」
でAmazonを検索してみると関連商品が山のようにヒットする。
この中から明るい未来を掴んでやろう。さぁ来い!なんて思う事は無く、無表情にタブブラウザを閉じる。

「認めてない。認めない。」
Nakasoneは健康であると思い込む事にした。
どうよ、この31歳。

アルコールにもカロリーなんてのがあると知った30歳。
20代のうちに痩せないと一生太ったままだぞ、と言われ続けた20代。

苦しい現実は見ないように生きてきた。
それはひとつ、現実逃避というライフハックではあるが根本的解決には何ひとつ結び付かない。
ダイエットは続かなかった。
腹十二分目。
服のサイズはラージエル。

ダイエット。というカタカナが頭の中を支配する。
突然だがNakasoneの好きなものに自転車がある。
小学生の頃、スポーツバイクという存在を知り、人力で世界最速を叩き出す乗り物にNakasoneは心を掴まれた。
そこから十数年。
当時の体重の倍を超えたNakasoneは慣性の法則や位置エネルギーで考えれば、なかなかのスピードジャンキーであるという考えはできる。
しかし上り坂ではどうか。
持ち前のウエイトが重力と結託しNakasoneを追い詰める。
「重力さんのイジワル〜」なんて言っても誰も笑ってくれないし聞いてもいない。

自転車で痩せようと思った事はあれど、理想とするスピードが脚力の無さから生まれない。
なんなら、自転車の耐荷重に自分の体重が収まっているか不安になるNakasone。
極めて物理的かつスポーツ論理に制御された自転車という存在に、Nakasoneは久しく乗っていない。
体力の無さ、筋力の無さ、怪我が怖い。等の理由をつけたNakasoneは室内で自転車を漕ぐローラーを入手した。
しかしコレはコレで退屈に負けて遠のいてしまった。

初めてピアノの前に座った人がベートーヴェンの運命の冒頭を真似する感じ。アレアレ。
だって初日からベートーヴェンやショパンになりたいさ。

新しく何かを始めるのは知識も体力も財力も要る。
つまりは自分を削るのだ。
Nakasoneにはその感覚が楽しいと思っていた時期もあったが、次第にこの感覚とも疎遠になっていった。

結局の所ブラックフライデーでAmazonベーシックの充電式電池を買うくらいの誕生日がちょうどいいのかもしれない。

そんな事を思いながらメールをチェックしていると、旧友からメールが来ていた。
なぜ今時メール?添付ファイルもあるな。
メールを開くと、かしこまった文体と共に晴れの舞台の写真が添付されていた。
あ、そうか。確かにそんな歳だもんなぁ。
しかしNakasoneの興味は写真に向いた。
「…ピン、ボケてね?」
目薬をさしても変わらなかった。解像度も問題ない。
Nakasoneは久しく撮影していない事や撮影時に動き回る体力が無かった事、かがむ際に贅肉が邪魔をしていた事を思い出した。
「うぁー痩せたいなぁ」
また宙に鳴いた。

人生100年時代とは言っても健康に過ごせるのは何歳までなのか。
特に、自分のような体型だと年齢も早まるだろう。
何かしなくては。
しかも具体的に。

NakasoneはAmazonで「バーテープ」と検索した。
バーテープとは、ロードバイクのドロップハンドルに巻き付ける滑り止めのようなテープだ。
愛車だったスポーツバイクから落車してテープがボロボロになっていたのを突発的に思い出したからだった。
Nakasoneの思い出しは基本的に感情的かつ反射的である。

Nakasoneは、ふと昔乗っていた黒いロードバイクに乗ることができるのではないかと思いついた。
Nakasoneの思いつきは基本的に(以下略
もしかしたらブレーキシューの寿命が来ているかもしれない。
タイヤも寿命かもしれない。
他にも調子の悪い所があるかもしれない。

バーテープにはおしゃれなヤツがあると聞いたことがあるNakasoneはどんどんページをスクロールしていく。
有名なメーカーのものがあった。
あったのだが
「うぁー黒か。ちょい地味だなぁ。でも、まぁ、安心を買うか。」
Nakasoneはそのままカートに入れた。

今はまだ、カートに入れただけ。
まずは第一歩。
明日は晴れのち雨らしい。
足の親指の付け根は痛むけど、しばらく先の楽しみを見つけたNakasoneは今日31歳になったのだった。

おわり。

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