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【創作童話】サンタさんのお手つだい

クリスマスイブのサンタさんは、
ひとばんで、たくさんのプレゼントをくばります。
道をまちがえてしまうと、じかんがかかってしまい、ぜんぶのプレゼントをくばることができなくなるからたいへんです。
なので、じぜんに、きちんとじゅんびをしておくことが大切。
道じゅんはこれでだいじょうぶかな、
子どもたちにくばるプレゼントはそろっているかな、
そのほかにもいろんなことをきちんとかくにんします。

ことしは、じぜんのじゅんびが、クリスマスイブの前の日のぎりぎりまでつづきました。
もう、みんながねしずまって、夜もおそい時間。
サンタさんは、プレゼントをくばる子どもたちの家のかくにんをしていました。
しんとした冬の夜空から、ちらちらと雪がふっています。
そんななかです。
ぼんやりした明かりがこぼれている家がありました。
おやっ?
サンタさんは、明かりがこぼれている、その小さなまどをそお~っとのぞいてみました。
そのむこうには、女の子がひとり、ベットにすわったまま、ぼんやりとしていました。
その女の子は、はぁーっとためいきをして、なんだかさびしそうです。
コンコンコン
サンタさんが、まどガラスをかるくたたきました。
はっとした、その女の子は、まどの外からこちらをのぞいているサンタさんに、おどろきました。
「あら。クリスマスイブは明日のはずなのに、サンタさんがもう来ているわ。」
サンタさんは、じぶんから女の子に近づいたものの、ちょっとはずかしくなりました。
ふだんは、みんながねているところに、こっそりプレゼントをおいているのに、こうやって、子どもと話をするのがはじめてだったからです。
「えっと…、きみがなんだか元気がないように見えたから、声をかけてみました…。」
女の子は、
「サンタさんは、やさしいのね。」といって、
ちょっとだけうれしそうにしました。
女の子は、とてもなかよくしていた友だちが、外国にひっこしてしまい、会えなくなってさびしいのだと、話してくれました。
女の子は、しょんぼりしていて、まるで心が冬の海のおくそこにしずんでしまったかのようです。
クリスマスのじきの子どもたちは、いろどられたクリスマスツリーにはしゃいだり、プレゼントを楽しみにしてわくわくしているというのに。
サンタさんは、女の子に元気になってもらおうと、少し早いけど、プレゼントをあげようとしました。
だけど、女の子は、プレゼントをうけとってくれませんし、しょんぼりしたままです。
う~ん。サンタさんは、こまってしまいました。
だけど、ちょっと考えてから、女の子にあるおねがいをしました。
「明日、わたしのプレゼントくばりを手伝ってくれませんか。」
サンタさんのとつぜんのおねがいに、
女の子も、「え?」と、少しとまどいましたが、
しばらくして、「うん。いいよ。」といいました。

そして、クリスマスイブの日です。
夜になって、サンタさんと女の子は、プレゼントをソリにつめこんで、
茶色い毛をもわもわっとさせたトナカイとともに、
冬の夜空へとかけ上がりました。
しゃんしゃん、しゃんしゃん
冬のつめたい空気をけりながら空をかけるトナカイの足音は、ちょっとおかしな音をさせていました。
プレゼントは、たくさんありましたが、サンタさんが、きのうまでにしっかりとじゅんびをしていたので、子どもたちの家をすいすいとまわっていくことができました。
サンタさんは、子どもたちに気づかれないように、そっとプレゼントをくばるのが仕事です。
それに、こんやは、女の子もいっしょ。
「子どもたちをおどろかせたらいけないので、みつからないようにしましょうね。」
と、ふたりは話し合いました。

それなのに、ちょっとひやっとしたことがありました。
ある家の子どものまくらもとに、女の子が、そっとプレゼントをおいたときです。その子どもが、少しねぼけた声で、「サンタさん…。」といいました。
サンタさんと女の子は、「みつかった!」と思い、さっとベットの下にかがんでかくれました。
でも、その子どもは、ちょっと横にねがえりして、またすやすやとねむりました。ふたりは、しずかな声でほっとしました。
「きっと、クリスマスプレゼントをうけとっている夢でもみているのでしょう。」女の子は、あらためて、その子どものねがおを見ました。
ほっぺたをピンク色にさせて、とても心地よさそうなねがおをしています。
女の子は、心の中に、ぽっと小さな明かりがともされたようなかんじがしました。

こんなこともありながら、サンタさんと女の子は、ぜんぶのプレゼントをくばりおえました。
しゃんしゃん、しゃんしゃん
しゃんしゃん、しゃんしゃん
トナカイは、プレゼントがなくなって、サンタさんと女の子だけをのせたソリをひきながら、やっぱりおかしな足音をさせていました。
「どの子どもたちも、わらったまま、ねむっているようだったわ。」
「みんな、プレゼントをとても楽しみにしていたのでしょうね。」
「なんだか、すてきね。」
女の子は、なにかにきづいたかのように、くすくすと、つめたい空気に白い息をはきながらわらいました。

ところで、サンタさんには、さいごの仕事がのこっていました。
「はい。クリスマスプレゼントです。」
サンタさんは、女の子に、プレゼントをわたしました。
それは、せかいちずがかかれた、ポストカードでした。
女の子は、プレゼントをうけとると、いちだんと明るくわらいました。
サンタさんは、女の子がわらったかおを見て、体じゅうが、なんだかぽかぽかしました。

そして、ふたりで、月あかりとゆきできらきらとかがやく空をみあげて、くすくすと、あたたかくわらいました。

(おわり)

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