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合同誌をつくった感想

※BLについて書いています。オタクの日記です。
三冊目の同人誌を出しました。今回は合同誌(R-18)です。


◇合同誌を出すことになったきっかけ


ある冬の日、フォロワーTさんがTwitterにて「次のイベントにAB本出したいので誰か寄稿してくれませんか」と呟いておられました。
私は「TさんがAB本出すなら喜んでー」とリプをしました。

自ジャンルは海の向こうのデカジャンルですが私達の推すABはなんと本国に一件もないらしいのです。
おかしい。世界はこんなに人で溢れているというのに。まるで孤独な宇宙です。
ABという星は確かにここで光っています。今はまだ淡い光ですが確かにこの宇宙に存在しているのです。
誰か気づいてこの光に。ABの輝きを見て。

Tさんと私はAB星に旗を立て「ここにあるよ!」と示す為、世界で一冊目のAB本(多分)を出す為に原稿ロケットへと乗り込みました。年明けの冬の日、私がこの時の原稿中のことでした。

当初はTさんの本に寄稿するという話だったのですが打ち合わせを重ねるうちに二人とも熱くなってしまい、最終的には120pの合同誌になりました。


◇まずは合同誌について調べよう


わからないことは調べなくてはいけません。
個人誌なら失敗しても自分が恥をかくだけで済みますが人と一緒につくる本でそういうわけにはいきません。
合同誌のつくりかたやありがちなトラブルについてお互いに調べることにしました。

連絡は基本DMで行い、込み入った話になりそうな時はもくりで通話をしました。
この同じカプを推すオタクと話す時間にとても助けられました。
原稿中は孤独です。ですが相手がいると

「これって大丈夫ですかね…」
「とりあえず途中なんですが見てくれませんか」


が出来るのです。
TLに投げられないしょうもない下書きも見せ合えます。

「いいじゃないですか!」
「ここ最高ですよ!このAくん好きですー」


正気に戻りそうになる(幻覚が見えなくなってくる)と「大丈夫ですよ、もっと狂っていきましょう」と殴ってもらえるのです。つまり常に幻覚を見続けられる。

日常生活において相手を殴って正気を奪うのは犯罪ですが私達は幻覚をカタチにする行為を楽しんでやっているので効果は抜群です。ありがたいぐらいです。

◇合同誌づくりについて


二人の本なので少しでも疑問を持ったところは話し合うようにしました。
通話の日までに確認したいことをリストアップして細かく確認していきました。

①作品のレーティングを決める


まず最初に全年齢か年齢指定あり(R-18)か決めなければいけません。

今回はTさんと私の二人だけの合同誌なので色々とゆるく進めることが出来ました。レーティングもそのうちのひとつでした。

「とりあえず各々好きにかいて、ABが致しちゃったらR-18にしましょう」

ということで一旦は保留になりました。
通話を重ねるうちに「これ致しちゃいますね」となったので「おっしゃ!R-18でいこう!」とのんびりと決まりました。


②本のページ数を決める


数人が集まって作る合同誌は一人何ページ、とページの指定があるかと思うのですが、今回は二人きりということでここも自由でした。

「出来たページでやりましょ〜」
「ページ数はあとですり合わせましょ〜」

というゆるゆるスタイルです。

私も当初は「40ページいけるかな〜がんばってみます〜」と言っていたのですが、結局50ページになりました。

これは執筆者がTさんと私の二人だけの合同誌だったからなんとかなっただけです。
多人数集まる合同誌やアンソロだとしばかれ案件なので注意が必要です。


③装丁を決める


Tさんは漫画、私は小説です。
ここはA5でいいんじゃないかということですっきり決まりした。表紙や本紙、遊び紙もどうするかもスムーズに決まりました。


④印刷所を決める


フォロワーさんからおすすめ印刷所を教えてもらったり各々調べたりして印刷所Dがいいかな、と目星をつけていた段階で発覚したのですが、
なんと印刷所Dのホームページには「未成年に見えるすけべ漫画はお断りさせていただく場合があります」と明記されていたのです。
今回学パロR-18を出そうとしていた私達は震え上がりました。
入稿してからお断りされたら泣いてしまうので
別の印刷所Eに決めました。

今まで小説本しか出したことのない私にはわからなかったことです。印刷所さんのホームページを熟読するのは大切なことだと身に染みました。


◇仕事分担


原稿の他に奥付や諸注意の文言の作成、編集、入稿などやることは山積みです。
二人で仕事分担をし、どちらかに負担が多くなることは避けたいと思いました。

しかし私はセンス皆無な人間です。
絵を描けば特級呪物を生み出してしまうし表紙の文字の配置もなんとなく雰囲気でやっています。
なので「センスを要するところはお任せしたいです」と正直にお願いしてみました。
具体的に言うと表紙の作成や編集(レイアウト)などです。
入稿もTさんがやってくださることになり、私は文章関係担当になりました。
前書きや(この本は〜)、奥付の文言、対談ページのまとめとテキストデータの作成です。

なお、Tさんは表紙・ご自身の漫画原稿・おまけ漫画のほかに私の小説の挿絵まで描いてくださり「ジャッキーチェン化」していました。(脚本監督主演)
(個人誌まで出しておられたので鉄人かもしれません)


◇原稿生活について


ここからは私の原稿生活について振り返ります。

初めてのカプ本

まずA視点で書くかB視点で書くか迷いました。
どちらの気持ちも読みたいし、「A視点で進んでいたあの場面ではBはこう思っていた」というのも書きたかったので交互にどちらの視点も書くことにしました。

一章 B視点
二章 A視点
三章 B視点
四章 A視点
五章 B視点

という風に。

私は書きたいことや登場人物の気持ち、部屋の間取りなど頭の中でモヤモヤ考えていることをすべて紙に書き出してノートにまとめないと一文字も書けません。
頭の中を文字にするとすっきりするし、手を動かして紙に書くことで新しいアイディアも浮かんできます。

カプ物は二人の感情や気持ちの変化を書くことがなにより大事だと思ったので、登場人物の気持ちを把握する為にかなりの時間(と紙)を使いました。
この時の二人の気持ちはこう!と、AとBそれぞれの気持ちのバロメーターをつくって対比させてみたりもしました。

そして私を悩ます物がもうひとつありました。今回は年齢制限あり。そう、濡れ場があるのです。


"そこ"なんて書く?


ついつい入り口と書きたくなってしまいますがそこは入り口ではありません。かと言って出口と書くことも出来ません。だって今からそこに入ろうとしているからです。

以前から濡れ場のあるBLを書いてはいたのですがこの"そこ"どうやって表現するか問題に直面する度に、本番はぼかして書くとか攻め一人称にするとかでなんとなくやり過ごしていました。
しかし今回は本にするししかも合同誌だし三人称単一だしで、もうちょっといい感じの表現はないものかなあと悩んでいたのです。

悩みすぎて禿げるかと思いました。
先人達のお知恵を拝借し、「なるほどこの単語(この表現)で書くのか」と早速取り入れてみたのですがその単語(表現)だけ浮きまくっています。

なんか小学生の作文にいきなり明治の文豪の語彙が出てきたみたい。

そこだけ作画崩壊を起こしていました。
合ってない。私のアホみたいな文体にここだけ合ってない。

とは言え「これは二次創作でもよく見るし私でも使えそう」という表現もあって、これならいけそうと使ってみたんですがどうもしっくり来ません。
使い慣れていない(見慣れていない)からか、私自身の照れもあるんでしょうか…。

ここで私はひとつの仮説を立てました。

私の書く小説は年齢制限ありといっても匂い立つような描写で行為を描いている物ではありません。

つまりすけべがすけべじゃない説

すけべありと言ってもさらっと水みたいな薄さ。無味無臭。

こんな濃度の薄いすけべなら体のそこについて詳しく書く必要ないのでは?だってそこだけ浮いちゃってるじゃん!

こうして"そこ"どうやって表現するか問題は特定の単語を使わずに、自分の文体でもなんとか馴染むような違和感のない表現を探すことで解決しました。

これから濃密すけべを書くことがあればまた考えていきたいと思います。


◇最後に


誰かと一緒に本をつくることははじめてでしたがとても楽しかったです。

何より孤独じゃなかったことが大きかったです。
励まし合ったり、時には原稿にまったく関係ない話をして息抜きをしたり。
 
Tさんと私は原稿スタイルが似ていました。
二人とも最初に決めた内容から大きく変更せず、コツコツ毎日進めるタイプでした。
原稿スタイルが似ていたからこそスムーズに作業出来たのかなと思います。

私達の本を手に取ってくれた人がABの良さに気づいてくれたら嬉しいです。そして一緒にABという星のきらめきで宇宙を照らし出してくれたら最高だなと思います。

その星は確かに輝いています。




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