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オタクの夏の思い出〜初めて同人誌を作った〜

今年の夏もどこにも行けなかったけど人生で初めて同人誌を作りwebイベントにも初参加しました。オタクのひと夏の思い出をまとめました。




オン専のオタクがなぜ同人誌を作ろうと思ったのか


私は今まで同人誌を買った事がなく、また同人誌を出した事もありませんでした。
俗に言うオン専(オンライン専門)です。
書いた話をpixivに公開したり同サイトで二次創作を読んだりしていました。
本を読む事は好きだけど好きな小説家の本を読むばかりで、同人誌を買って読む経験がありませんでした。
つまり我が家には同人誌作りでお手本にすべき同人誌が一冊もないという事です。
これが後に私を苦しめる事になるのでした。


とある春の日、自ジャンルで夏にwebオンリーが開催されるというお知らせがTwitter上にあがりました。
フォロイーさん達は喜んでいましたが、私はその様子をどこか遠巻きに見ていました。遠い世界のように思っていたと言ってもいいと思います。 
なぜなら「同人誌を買う」ましてや「自分がサークル側としてイベントに出る」「自分が同人誌を出す」という考えが私の頭に全く浮かんでいなかったからです。
作品をネットに公開してそれを読んでくれる人がいる。自分の作品がお金を払ってまで読みたいかと言われればそんな事は考えられないと思いました。無料だから読んでもらえると思っていました。今でもこれは思っています。
なので「みんなイベント楽しんでね」という気持ちでタイムラインを眺めていました。


ですが心境に変化が訪れました。
当初主催様が予定していたスペースがすぐに埋まり、スペースを倍に拡張したのです。
私は「こんなにこのジャンルに人がいるんだ」と驚きました。
私のいるジャンルは大きくありません。
旬ジャンルというほど人もいない。二次創作をする人もそれを読む人も多くないと、pixivに作品を公開している身で薄らと気づいていました。

なのに『当初のスペースから拡張!』という事実に「こんなにこのジャンルを好きな人がいるんだ!」と嬉しくなったのです。
webオンリーということで現地に行く必要もありません。要項を読んでみると展示のみでokとありました。
(展示とはpixivやプライベッターなどの作品リンクを貼る事を言います。つまり本を出さなくてもいいという事です)

「本を出さなくてもいいなら出来るかも」「新作を書けなくてもpixivのリンクを貼ればいいか」
webオンリーという気軽さから、私はイベントにサークル参加を決めたのでした。

とは言え「せっかくイベント参加するなら同人誌を作るのもいいなあ」と思いました。
私は後ろ向きな人間です。
「サークル側でイベント参加はこれが最後かもしれない。人生の思い出に本を出すのもいいかな」と、まるで死花を咲かせる気持ちでした。

「難しそうならやめよう。とりあえず調べるだけ調べるか」と思い至りました。









何をすればいいか分からん

とりあえずネットで『初めての同人誌づくり』のページを調べまくりました。

ざっくり分かったことは
・本の仕様を決める(A5とか文庫サイズかとか)
・ページ数を決める
・本文を書く
・表紙を決める
・奥付を書く


やる事めっちゃ多いなと思いました。
私がいつも二次創作としてやっていた事は↑の『本文を書く』ぐらいです。
本を出すオタクはこんなにもたくさんの工程を踏んでいるのだと知り、「めちゃくちゃ熱いな」と思いました。世の中のオタクすげえ。




どうしてもスマホで同人誌を作りたい


ここまでで私はひとつの疑問を持ちました。

パソコン使わないと無理なのか?

私はどうしてもスマホだけで同人誌を作りたかったのでパソコン必須だとつらいと思いました。
というのも、家でパソコンを使うと仕事をしているようでめちゃくちゃ疲れてしまい精神的につらいからです。
家では仕事に関係がある要素からは絶対に離れたい。(メンタル弱)

なので私は同人誌をスマホだけで作る方法を調べる事にしました。

ネットの海を泳いだ結果、スマホだけでも出来ると書いてあり、「やれない事はない」という結論に至りました。

ここで初めて「スマホだけで同人誌を作るぞ!」と決意をかためたのでした。






印刷所を決める


私はヒヨコどころか卵レベルの素人です。
なのでwebオンリーの『ご支援いただける印刷所一覧』から少数部印刷を受けてくれる印刷所に決めました。
これはさくっと決まりました。











仕様を決める


小説本は大抵A5かA6(文庫サイズ)だと知りました。(私は小説を書いています)
初めは「文庫サイズ(A6)って小説っぽくてかわいいな」と思っていたのですが、↑で決めた印刷所さんがA6を取り扱っていなかったのでA5で作る事にしました。

※今(8月30日)印刷所さんのホームページで確認したところA6取り扱っておられました。ひ〜申し訳ありません!次はA6で出します!


なんでも本の仕様を二段組か一段組かに決めるようでした。
私が普段読んでいる小説は一段組(売られている小説はだいたいはこれですよね)だったので、二段組には馴染みなかったので戸惑いました。
が、『A5小説本は二段組が基本』と見たので「素人は黙って従おう精神」で二段組でいく事にしました。




表紙を決める


まず本文を書く前に表紙を見に行きました。なんで?まず本文を書け。
気持ちがたかぶってしまい、とりあえず「本作るっぽい事したい」と思ったのでいきなり表紙を決める事にしました。

私は絵が描けません。センスも皆無です。
色のあわせを考えるのが面倒だからと毎日黒と紺の服をローテーションして着るような女です。
自分で表紙をデザインすることは不可能だと思いました。

そこでまずpixivへ行きました。
『同人誌の表紙デザイン例』を見て「へ〜、同人誌ってオシャレだなあ。こんなの作れないよトホホ」と思いました。
『オーダー承ります!』ともありましたが、初心者の中の初心者の私にとって、印刷所以外ともコンタクトを取ってオーダーする事は完全にキャパオーバーでした。
よく見てみるとboothで表紙デザインを販売しておられる方が何人もいらっしゃいました。これしかない!
私はboothにとびました。
表紙のテンプレートがたくさん販売されていました。字を入れるだけで表紙が完成するという素晴らしい物でした。これしかない!

どんな話になるかも分からないので(それはそう)どんな内容でも合いそうなデザイン表紙テンプレを購入しました。
後に本文を書き終えた私は、土壇場でまたもや表紙デザインを何種類も購入する事になります。

表紙は本文を書き終えてから。
今はそう思います(が、たくさんの表紙を眺めるだけで楽しかったのでまあいっか!)




本文を書く


当初は「完全新作で短編を何本か入れて40ページぐらいの本にしたいなあ」と思っていました。
漠然と『くるみ本』に憧れを持っていたからです。

とりあえず短編を一本書いてみました。
pixivに公開するよりは長めに書けたかな、と満足していたのですが、いざ本仕様のpdfにすると10ページちょっとしかありません。

一本がこんなページ数じゃ後何本書かなきゃいけないの?

たちまち信念がぐらつきました。

完成新作やっぱ無理。web再録何本か入れさせてもらおう。

急なダイヤ変更です。
pixivに公開しているものの中で特に気に入っていたものに加筆修正した物を何本か本に入れる事にしました。

この時の私の目標はくるみ本を出す最低目安の40ページです。

しかし一本目のweb再録に手を加えても10ページ。目標の40ページまで遠すぎる!

またも考えがぐらつきました。
私の心はもろい砂場に建てた城のようにいとも簡単にぐらつきます。

これは無理だ。くるみ本とか言ってないで出来上がったページで本の仕様を決めよう。

そう考えを改めました。

ページ数から解き放たれ多少心が楽になった私は新作に取りかかる事にしました。

この時点での原稿は
短編①(新作)
短編②(web再録に加筆修正したもの)

とりあえずページ数は気にせずに新作の短編③を書く事にしました。
気づけば40ページ以上の話が出来上がっていました。

自分でもビックリしました。
長編を書く方からしたら全然大したことないページ数ですが、普段長くても一万字の話をアップしている私にしてみれば「書いたなあ〜」と思えました。
結果、私の人生初めての同人誌はA5 72ページになりました。




奥付を書く


この辺りで私は行き詰まっていました。
本文は自分が頑張ればなんとか書き終わるのですが、表紙デザインや奥付について調べていると
『お手持ちの同人誌を参考に』と書いてあるのです。

うちには同人誌は一冊もありません。あるのは漫画と一般の小説ばかり。
同人誌が分からねえと初めて思いました。

分からないけれど誰に聞く事も出来ません。
フォロイーさん達はTwitterに浮上しないで原稿を頑張っています。
そこへ「表紙ってタイトル以外何入れればいいんですか?」「奥付って何書くんですか?」とバカな質問をDMする事は出来ません。
私が修羅場にこれやられたら夜叉になると思います。

私はまたネットの海に泳ぎ出ました。
全ての答えはネットにある。調べられない事はなにひとつない。

私はまたもやpixivに泳ぎ着きました。
pixivはオタクの心の港。必ず帰りついてしまいます。
ここには表紙サンプルがある!同人誌の表紙がどういうものか、ここで勉強させていただこう。

結果、『表紙にはカプ名を分かりやすく表記する』『非公式ファンブックだと必ず書く』
と知る事が出来ました。


奥付についてはやはりネット漁業で得た情報により『連絡先はきちんと連絡が取れるメールアドレスを明記する。pixivやTwitterは不可』という事が分かりました。




これ本当に本になる?ネップリで確かめた


本文も出来た。表紙も奥付も出来た。そしたらいきなり不安になりました。
これが本になるの?どうやって印刷されるの?

調べるとコンビニのネットプリントで印刷すると本のようになるらしい。よし、コンビニ行こう!

本文はpdf統合したものを『A4 両面印刷なし 小冊子 右閉じ』で印刷出来ました。
ただ表紙は統合しちゃうとダメっぽいので(理由は今も分かりません。まだ卵レベルです)

表紙だけ別で登録して『A4 カラー印刷』すると出来ました。

ホチキスでとめると本物の本になりました。これだけで私は猛烈に感動しました。



スマホだけで同人誌を作る際に役立ったサイト、アプリ


【表紙】
booth

絵が描けない、デザインなんて出来ない私のようなオタクはここに行こう。
文字を入れるだけで表紙が出来る素敵なテンプレがたくさんある。


【表紙】
メディバンペイント(アプリ)
↑でダウンロードした表紙テンプレに文字を入れる際に使用。
しかしはじめて使う絵を描くアプリに手汗をかくほど緊張し、扱いが全く分からなかったので慣れるまで二日はかかりました。(初めて文明に触れた人?)
文字を入れれば良いので他のアプリでもいいと思います。



【本文】
縦式(アプリ)
もうこれしかない。pdfにしてそのまま入稿出来る(フォント埋め込みいらない←何のことだか分かっていないのですがいらないらしいです縦式)
文字の大きさを変更可、中央揃えも出来るので目次も作れる。
もう縦式がないとこの先は生きられないというほど好きになってしまいました。
細かい設定がたくさんあって最初は面食らうのですが、徐々に慣れていけば大丈夫!
特に私のように家でパソコン開きたくない、寝ながら原稿したいという方にはおすすめです。 




最後に


私の本なんてお金を出してもらう価値があるのかな、と原稿中はとても辛かったのですが実際に本を手に取ってもらえて泣くほど嬉しかったです。

本が届いたフォロイーさんから「山本さん『2021年年発行』になっていますよ!」と教えてもらい初めて裏表紙の誤字に気づき、顔から火が出そうでした。私から発火した炎と共に私とこの本燃やしてくれ。

イベント終了後、数週間してやっと自分の本を読む気になれました。
原稿中、誤字チェック中は「もう二度とお前(私)の書いた話は読みたくねえ」と思っていたのですが、いざ読み終わってみると「私頑張ったなあ」と思いました。
本文に誤字を二つも見つけてしまい、死にそうなぐらい恥ずかしくもなりました。


誤字だらけの本ですがお手に取ってくださった皆様にはとても感謝しています。
そして誤字ばっかで申し訳ありませんと謝りたい……恥ずかしい。
けれどそれでも、この先私が死んだらこの本を棺桶に入れて欲しいと思いました。
この本を手に持ちながら三途の川を渡りたいと思うぐらい、人生初の同人誌は私の宝物になりました。





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