見出し画像

45/50 人生最大の感動の瞬間がおとずれた

まだ人生は終わったわけではないけど、これが、人生最大だといってしまっても過言ではないはず、きっと。
そうでなくても、今まで生きてきた中で最大の感動の瞬間を味わうことができた。

「50のやりたいこと」の中から、
今回は「感動する体験をする」を。

先に言ってしまいます。
感動する体験、それは「出産」の話です。

もうすぐ産後一ヶ月を迎えようとしている。
出産をめぐる様々なできごとも、慌ただしい育児に追われ、今や遠い過去のように記憶がとんでいきそうだ。

忘れてしまわぬように。

大切な箱にそっとしまうように。

率直に言葉にしてみたい。

画像1

「君と会えるその時まで」

幕開けはひっそりと

8月21日(土)深夜3時。
就寝中。突如、尿意をもよおして、ふらふらとトイレに向かう。
半分、夢の中にいるわたしだったが、トイレで一気に目が覚める。

「あれ、血がついている」

出産の兆候としては、3つ。

・おしるし
・陣痛
・破水

これは明らかに「おしるし」だとわかった。

しかし、おしるしがあったからといって、すぐに出産となるわけではない。
破水の場合はすぐに病院へ連絡しなければならないが、おしるしがあったとしても、一定間隔の陣痛がなければ、出産はまだ先のよう。

ひとまずベッドへ戻り、心を落ち着け、そのまま寝ることに。
しかし、目を閉じてしばらくしてから違和感が・・・

鈍い腹痛。まさか陣痛?

陣痛の前段階の「前駆陣痛」である可能性もあるので、あらかじめダウンロードしていた「陣痛アプリ」で、間隔をはかってみる。間隔が一定であれば陣痛の可能性が高い。

はかってみると、誤差はあるものの10分間隔。

痛みはそれほどひどくはないので、寝ようと思えば寝れたのかもしれないが、興奮もあって寝れそうになく、そのまま横になって陣痛の間隔をはかり続ける。

物語は動き出す

6時前。
空が明るくなってきて、旦那さんが目覚める。
横でわたしがごそごそしている気配を感じたらしい。

開口一番、
「陣痛、きたかも」

いきなりのわたしの発言に、旦那さんの顔に焦りの色が。
初産婦は、陣痛が始まって10〜15時間出産までにかかると聞いていたので、病院に行くのはまだ先になるだろうと思っていたけど、一応病院へ電話してみる。

状況を説明すると、
「では一度来てください」と。

長丁場になることを予想し、朝ごはんをしっかりとってから、いそいそと病院へ向かった。
そのとき、陣痛はまだ10分間隔をキープ。
会話できるくらいの痛み。

動き出したかと思いきや

8時半ごろ。
病院に着くと、すぐに分娩室へ通され内診。(この時は分娩室など知る由もない)
今まで冷静を保っていたが、いよいよだと思うと不安が増してくる。

しかし、内診の結果は「子宮口の開きが1.5cm」(全開が10cm)なので、まだまだ出産までには時間がかかると判断される。

助産師さんからは、
「前駆陣痛の可能性もあるし、出産はあさってくらいになるかもしれないね」と言われる。

この痛みを二日間も耐えるのかと思うと気が遠くなりそうだった。

終わりの見えない戦い

家に帰ってからも陣痛の間隔をはかり続ける。
現在、7分間隔くらい。

助産師さんからは、

「5分間隔になったら」
「痛みがひどくなったら」
「破水が起きたら」

また病院へ連絡するように言われていたが、陣痛の間隔はなかなか縮まらない。

あまり食欲はなかったが、昼ごはんにパンを食べる。
「動いた方がいい」と助産師さんにアドバイスされていたので、家の中をうろうろしながら、陣痛の痛みを耐え続ける。まだ7分間隔のまま。

間隔は変わらないまま、晩ごはんを食べ、シャワーを浴びる。
痛みはどんどんひどくなる一方。陣痛が起こっているときには、会話も難しくなってくる。

20時ごろ。
旦那さんと相談し、病院へ連絡することに。
陣痛がおさまっているときを見計らって、電話をかける。この時もまだ6〜7分間隔。

状況を説明すると、助産師さんから、
「電話の声を聞いててもまだ大丈夫そうね。陣痛がひどくなったら喋れなくなるから。また来てもらっても同じだと思うわ」
と言われて、途方に暮れる。

この時点で、体もかなり消耗していたが、精神的にも終わりの見えない苦しみに、重く暗い気持ちになっていく。

心が折れる

また夜がやってきた。
陣痛の痛みがますますひどくなり、眠れるはずがない。
さいわいにも、休日のため旦那さんの仕事は休み。苦しんでいるわたしの腰をさすってくれたり、陣痛の間隔をはかったりしてくれる。しかし、ありがたいと思う余裕すら、もうない。

つらくて、つらくて、どうなったら病院へ行けるのか。痛みもつらいが、精神的にかなりまいっていた。
つらすぎて、号泣。
「いつになったら終わるの…」
それでも、痛みはとどまることをしらない。

夜の間、ずっと、わたしはひどくなる痛みに耐え続け、旦那さんは腰をさすり続けた。

半日と1日、徹夜で満身創痍のわたし。
6〜7分間隔で何ら変わらない陣痛の間隔。

痛みはひどくなる一方だが、どの程度の痛みで連絡したらいいのかわからず、前の電話連絡ですっかり意気消沈し、連絡する勇気を持てずにいた。
そんなわたしを見かねて、旦那さんが病院へ再度連絡することを決意。

時刻は、4時頃。

微かな光が見える

病院へ電話をかけると、前に受けた方とは違う方で、切羽詰まったわたしたちの様子を感じ取ったのか、
「すぐ来てください。見させてもらいます」
と言っていただける。

その一言に、救われた気持ちになったが、まだ子宮口の開きがどれほどなのかわからないので不安は消えない。

車で病院まで30分。
前回、来院した時と比べ物にならないほどの痛み。声を出さずにはいられない。必死に堪えながら到着。

よろよろと歩いては止まり、陣痛が遠のけば、またよろよろと歩きながら、病室へ。

対応してくださった助産師さんが神がかっていて、(電話で対応してくださった方だった)
「ゆっくり吐いて…、もっとゆっくり」
と声をかけてくださり、そのおかげで驚くほど陣痛の痛みが和らいだ。今でも、この方のおかげで崩れかけた精神が保たれたと思っている。

また、神の助産師さんから、
「睡眠不足で体力が落ちているから、陣痛の合間に寝れる限り寝た方がいい」
とアドバイスを受ける。このアドバイスも的確で、ベッドで横になりながら、陣痛の合間に目を瞑るだけでも、身体の疲れは回復しないまでも、残りの体力を維持できたように思う。

その後、すぐに内診をしてくださった。
結果は「子宮口の開きは6、7cmほど」
そのまま入院となった。

子宮口が開いていなかったら…と最悪の想定をしていたので、ひとまずは胸を撫で下ろした。ようやくゴールが見えてきた。出産間近の恐怖はどこへやら、微かな希望の光が差した瞬間だった。

微かな光はいずこへ

5時半ごろ。
何度目かの内診で、また別の助産師さんから、
「早朝か、午前中までには出産できそうやね」
と声をかけられる。微かな希望だったのが、大きな希望に変わる。

しかし、次の一言に、また不安が押し寄せる。
「破水さえ起きれば、早まると思うんだけど。もう一段階、強い痛みがくると思うから、それがきたらいよいよやね」

え、これ以上、痛くなるの・・・

陣痛の間隔はまだ、6〜7分をキープ。
腰の骨を圧迫するような痛み。下腹部を絞り上げられるような感覚。

そこから、破水も起きず、陣痛の間隔も縮まることもなく、ひとり病室で朝を迎える。

孤独が精神を蝕む

8時ごろ。
病院での朝食のサンドウィッチを、エネルギー補給のために何とか陣痛の合間に、口に運ぶ。

先ほどの神の助産師さんは勤務終了なのか来なくなり、別の助産師さんが2時間に一度ほど内診しにきたり、様子をうかがいにきたりした。

当然ながら痛みを耐えるのはつらかったが、長時間、孤独にさらされることが何よりもつらかった。いったん持ち直したかに思えた精神も崩れていった。

11時ごろ。
分娩室で出産を行っているであろう妊婦さんの声が聞こえてくる。

声にならないうめき声、叫び。

そんなに痛いのかと恐怖に駆られる。
…と同時に、自分よりどんどん先に他の方が出産されていく焦りのようなものも生まれてくる。

「子宮口は8cm」というところまできていたが、もう一歩とはいかないようだった。

助産師さんには、
「いきみたくなったら呼んで」
と言われる。

下腹部の激しい圧迫感はずっと続いているが、

「これがいきみたいなのか?」
「いきみたいと言えば出産になるのか?」
「でもまだ我慢できるような」

葛藤しながら、時間だけは刻々と過ぎていった。

感動とよろこびの瞬間

12時ごろ。
内診後、子宮口の開き具合は変化がなかったが、助産師さんに、
「先生に一回見てもらおう。分娩室へ移動しよう」
と、いきなり言われる。

よろめきながら、陣痛を逃しながら、分娩台に上がる。この段階で、陣痛が痛すぎて、分娩台に上がるのだけで一苦労だった。

12時20分頃。
分娩が始まった。

まず、人口破水をされた…らしい。
破水してから子宮口は全開になる。
赤ちゃんも降りてきたみたいで、俄然やる気が満ちてくる。

「陣痛の痛みに比べたら出産の痛みはマシ」と話には聞いたことがあるが、どっちが痛いとか比べられないけれど、普通にいきむのも痛かった。
ただ、終わりが見えているだけ、耐えられる気がした。

3度目くらいの「いきみ」が終わった後に、助産師さんが、
「わたしたちも手伝うから、もう少しがんばろう」
と言われ、何のことかわからなかったが、器具を入れられ、それで引っ張るみたい。
(あとで、吸引分娩だということを知る)

「痛いんですか?」
なぜか冷静に聞くわたし。

「…痛くないよ、大丈夫」
助産師さんは淡々と答える。

しかし、これが最大級に痛かった。
静かに出産…なんて思っていたが、叫びまくっていた。

お腹は思いっきり押され、下は痛みが乱発、暴発し・・・
もう言葉で表し切れない。

その間も、いきまなくてはいけない。

「髪の毛が見えてきたよ」
「もう頭が見えてきたよ」
「もうすぐ」

助産師さんの声が聞こえる。


もうすぐ君に会える。

君といっしょにお家に帰るんだ。

旦那さんが笑って迎えてくれている。

そんな光景が目に浮かんだ。

「頭が出てきたよ、下向いてみて。見えない?」
朦朧とする思考の中、下を向いてみると、確かに頭のようなものが見えた。

「これで最後だよ」
そう聞こえて、全身全霊の力でいきむ。

出てきた感覚はなかったけど、赤ちゃんの産声が聞こえ、
「産まれたよー」
と、すぐに赤ちゃんを抱っこさせてくれた。

その瞬間、涙が止まらなかった。

ずっと君に会いたかったんだ。

ずっと、ずっと、ずっと。

そう思うと、涙が止まらなくて。

会えてよかった。

無事に生まれてきてくれて本当によかった。

ありがとう、ありがとう、ありがとう。

涙が言葉になって溢れるように、ただただ泣いていた。

ありがとう

分娩時間は50分ほどだったよう。
陣痛から数えると、35時間を超える出産。

また、子どもを産みたいかと聞かれると、
「今は、ちょっとまだ考えられない…」
というのが正直なところ。

自分の弱いところもいっぱい見た。

痛いし、つらいし、こわかった。

それでもね、君と出会えたよろこびは、全部をよかったなと思える経験に変えてくれる。

こんな大きな感動を与えてくれて、ありがとうと思える。

すごいな、出産って。

最後に、赤ちゃんと、旦那さんに言いたい。

ママになってまだまだ間もないわたしだけど、ママにさせてくれてありがとう。

ほんと、ありがとうって。

画像2


長文乱文になりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

産前産後の期間中、noteで出産レポをたくさん読ませていただきました。
出産の形はそれぞれ違っていましたが、どの記事からも勇気をもらい、励まされるものばかりでした。

出産は思った以上に大変です。

苦しいことも多いです。

だけど、決して味わうことのできない素晴らしい体験をできる機会でもあります。

どんな出産も、あなただけの体験。

誇りをもって受け入れてほしいなと思います。

わたしもたくさんの出産レポの記事から勇気をもらったので、ほんの少しでも何かプラスのものを届けられたら、そんなふうに思っています。

この記事が参加している募集

振り返りnote

サポートとそのお気持ちは、創作や家族の居場所づくりのために還元できたらと思ってます。