小説家になりたい男の戯言NO.13
現在は結婚している私。しかし、先述のホテルマン時代は独身で車も持っていなかったため、専らバス通勤でした。
そのバスは結構混んでいることが多く、その日もいつものように気だるくつり革に掴まっていました。その時に、ふと座席に座って読書をしているおじさんが目に止まったのです。
始めは、こっちは立っているのに、優雅に本を読みやがってと苦々しく感じていたのですが、何となくそのおじさんの光景を目にしているうちに、ふとある考えが頭を過ったのです。
あのおじさんが読んでる本ってどんな本なんだろう。もし自分も一緒になってこっそり読んだとして、おじさんがバスを降りてしまった後は、続きが気になるんだろうな、と。
あれ・・・?もしかして、これをネタに何か面白い小説って書けないかな?
そう思った私。前述の文学賞に向けた小説が、完全に頓挫してしまっていた私に、久々に血が通ったような感覚が戻ってきたのです。
よし!早速、書いてみよう!題材はミステリー!しかもクスッと笑える平和的な解決で終わるミステリーハートフルコメディを書くんだ!
そう思った私は嬉々として執筆に取りかかる事にしたのでした。
そして執筆にあたっての媒体を初めて、ネット小説の場にしようと思ったのです。
これまで通り、文学賞に向けて、このミステリーハートフルコメディを執筆してもよかったのですが、その場合、当たり前の話ですが、完成するまで人の目に触れることはありません。
ですが、ネット小説なら、都度自分のタイミングで投稿し、すぐさま世界中の人の目に触れる事が出来ます。
めんどくさがりで何事も続かない癖に、直ぐに結果を求めてしまう悪い性格な私ですが、そんな私に見事にマッチした媒体がネット小説だったのです。
そういうわけで、今から約10年前になりますが(小説家になろう)という媒体で、このおじさんを題材にしたミステリーハートフルコメディである「会社のお荷物が探偵業に首を突っ込んだばかりにさらにお荷物になった悲劇は喜劇だ」を連載する運びになったわけです・・・。