告白雨雲(ショートショート)
何事も念じ続けば願いは叶う。
(あの人に告白する勇気が欲しい)
それが私の願いだった。
だけど今しがた、折角の告白チャンスを棒に振ってしまった私。晴れ渡った午後。図書館で二人きりになれた私とあの人だったが、結局少し離れた席で、あの人を見つめる事しかできなかったのだ。
結局願いは叶わない。諦めムードな私は、この零れそうな涙を帰り道で人に見られたくない為、雨が降るように強く願った。
一人図書館を出る。すると空模様が急に怪しくなってきた。さっきまであれほど晴れていたのに。
降り出す雨。僕は昨日片づけ忘れた折り畳み傘を持っていた。願い通り、涙を隠すにはもってこいだけど・・・。
「あ、雨、どうしよう」
振り返るとあの人が立っていた。どうやら傘を持っていない様子。
これってもしかして・・・。
「あの、よかったらご一緒に」
照れながらもあの人はバス停までと言ってくれた。あの空はきっと、告白雨雲に違いない。僕は少し勇気が湧いてきたような気がした。
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