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総じて芒野は墓場になりけり

世界から赤を搾り取って隔離されたような空間だった。 起伏のある丘が並び、短い植物を赤々と夕日が染め上げる。 研究所は東の丘の上にぽつんと建っている、しかし、景色と同じように緋になり、研究所はまるでどこにもないように感じられた。 もしくは、この景色すべてが研究所だったのかもしれない。 ここは何も変わらないなと隣の男は言う。 我々を外から運んだ車も、光に照らされて、赤く馴染んでいる。 「久しぶりでいいのかナ」 赤い髪の女性が室内で我々を待っていた。 射貫くよう

    • バーレスクの予知夢 世界観(ホームサイド)

      ・バーレスク 有名な作品のスタイルや精神をカリカチュアしたり、その作品のテーマをこっけいに描く文学・戯曲、音楽のジャンルである。バーレスクという言葉はもともとイタリア語のburlesco から来ている。burlesco の語幹burla –は、冗談、嘲りなどの語義をもつ。 バーレスクは意味的にはカリカチュア、パロディ、戯作(トラヴェスティ)とも重なっており、ヴィクトリア朝時代の演劇がそうであったように、エクストラバガンザ(様式や構造に囚われず自由であることを特徴とした舞台

      • 空気抵抗とエネルギー分配を踏まえた最適推力計画1/4

        太陽の光がまぶしい。 レンガ造りの大きな建物一入り組み、各場所により高さがばらけているためおおよそになるが、一番高いところで 6階だろうか。正面、正門前は人工的に平らにされ、美しく舗装された小麦色の道が光を激しく反射している。 ベンチ、低木の木陰、建物や屋根の陰には若い学生があちこちにいる。 まるでこの国全体の希望を集めたように、若者たちの顔は輝き、そして聡い悩みを携える。 設計ミスだ。と彼女は晴れの日にはいつも感じていた。 ホームの中でも高山地域に位置したここは日射量が他

        • 海上地区1N005Q Y003年

          ——1N005Q地区、天気晴れ、気圧1012、問題なし、メーデーは継続中。—— 機械から天候を告げる音がした。 小さな木造の事務所の中に2人の男女がいる。事務所いっぱいに広がる机の半分には大量の何かが書かれた紙が無造作に積みあがっていた。窓の外の青空。くたびれた壁や柱の茶色、書類の白。せわしなさと怠惰を告げる真夏の下だった。 「だから、紙でこんなに纏めてもしょうがないんだって!紙を無駄にして……、私の話聞いてた!?」 「……紙くらいいいだろ、どうせ世界が滅ぶんだしエ

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          トロイメライの星宙夜 世界観情報

          トロイメライの星宙夜[‐ノセイチュウヤ]・トロイメライ トロイメライ(独: träumerei)とは、ドイツ語で「夢」「夢想」を意味する語。 ・世界 科学技術の粋により、あらゆる課題が解決され、一つの星に縛られとどまる必要もなくなった世界。 高度情報化が発展し肉体を捨て情報の波に飲まれる世界、あらゆる芸術を体感し創造することを人生とする世界、自らの肉体や精神を駄賃に、ただ惰眠を貪ることを許される世界。 居住星には様々なルール、いわゆる法律があり、それに反さない限りは何を

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          銀天幕の空鍵盤 世界観情報

          銀天幕の空鍵盤[ギンテンマクノソラケンバン] ・銀 大和言葉では「しろがね/しろかね(白銀:白い金属)」という。元素記号のAgは、銀を意味するラテン語 argentum に由来する。 室温における電気伝導率と熱伝導率、可視光線の反射率は、いずれも金属中で最大である。光の反射率が可視領域にわたって 98%程度と高いことから美しい金属光沢を有す。 延性および展性に富み、その性質は金に次ぎ、1gの銀は約 2200mの線に伸ばすことが可能である。 溶融銀は 973℃において

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          緋の荒野 世界観情報

          緋の荒野[アカノコウヤ]・緋 火のような、濃く明るい紅(べに)色。 緋色(ひいろ)は、植物のアカネの根を原料とする茜染の一種で、濃く暗い赤色を茜色というのに対して、最も明るい茜色を緋色という。和訓では「あか」「あけ」とも読む。 アカネと紫根を重ねて染め、深みを出した紫褐色を深(ふかひ、こきひ、こきあけ) 別名は黒緋(くろあけ)、アカネに紅花の染料を重ね染めした明るい赤色は紅緋、アカネだけで染めた色は浅緋(あさあけ、うすあけ)、などの色がある。 平安時代にはアカネに替わ

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