マガジンのカバー画像

これは小説です。

71
勢いで初めてみました。 短編小説を投稿していく予定です。マガジン名悩み中。
運営しているクリエイター

#ホラー

石崎さん

 ある日私の子どもが公園で遊んでいる途中に突然言った。
「石崎さん」
 名前に「さん」をつけるのが子どもらしくなくて私は違和感を覚えた。そうして子どもの関わりの中から「石崎さん」という人もいなかった。
「石崎さん?誰だそれ。」
「石崎さんだよ。石崎さん。」
 子どもは繰り返してそう言った。
「新しくできた友達か?」
「違うよ。石崎さんだよ。」
 子どもはそうして首を振る。
「どこにいる人なんだそれ

もっとみる
澄んだ池は思考する。1

澄んだ池は思考する。1

その池とても澄んでいて、一片の澱みなどない。

町の中でもその池の場所を知るものはほとんどおらず、そのためその池は綺麗だと思われていた。
 
今の時点まで僕はそう思っていた。

目の前で飲まれていく友達を見てただ茫然と立ち尽くすことしかできなかった。

腰元までしか深さのない池の中に友達が悶え足掻いているさまを池の端から眺めることしかできなかった。

友達とはここを秘密の場所としていた。今までもそ

もっとみる
多重世界線での重なりに触れる

多重世界線での重なりに触れる

「では、あの時見たのはなんだったのか」

男が私に向かって問う。私はその問いにもはや困惑すらしなくなっていた。それはここ最近立て続けに起こっている出来事だったからである。

「私が見た景色は嘘だったということになるのですか?」

「えぇそうですね。」

 私は警官という身分以外を剝いでしまえばただの一人の男である。目の前の加害者が言っている荒唐無稽なことにはそう返すしかなかった。

 男は男女のカ

もっとみる
あちらもどうやら世知辛い

あちらもどうやら世知辛い

 時間帯は夜9時、帰り道に公園を通ったら一人の子どもが遊具で遊んでいた。

そこまでは良かったのだが、周りに親がおらずその子ども自体も異様であった。暗闇の中で分かるほど異様に肌が白く、麻袋のようなワンピースを纏って滑り台を滑っていた。

 こちらを振り向くと目の中が黒く、そこには眼球がなかった。いや、眼球全体、角膜が真っ黒というべきだろうか、黒いガラスが公園の蛍光灯を反射して映っていた。

 そん

もっとみる