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【前編】0から2ヶ月でプレオープン。鋸山BASEのクレープができるまで

「自分の仕事」を0からつくり、楽しそうに活躍している先輩に話を聞くインタビュー企画です。

自分の仕事をつくる上での作戦やマインド、これまでの流れをお聞きします。

自分の商品作りやサービス立ち上げをしてみたいと思っても、「長い準備期間が必要なのでは?」と、ちょっと諦めの気持ちが出てくる人もいると思います。

観光地として人気の高い千葉県・金谷(かなや)エリア。

ここでカフェ&マーケット鋸山BASE(のこぎりやまベース)を運営する今村さんご夫婦は、物件を手に入れてから、わずか2ヶ月でお店をプレオープンさせました。

鋸山BASE(現在は産休育休として一時休業中)

現在の看板商品はクレープ。

観光客やリピーターの地元客から人気を集め、にぎわいを見せています。

今回は、オーナーの今村映(いまむら・えい)さんにお話を伺いました。

左:妻の瞳さん、右:今村映さん

今村映(いまむら・えい)さん

鋸山BASEのオーナーシェフ。辻調理師専門学校を卒業後、フランス料理店にてシェフ兼パティシエとして勤務。

その後、会社員として営業・商品開発・エンジニアなどを経験し、現在はWeb系フリーランス+鋸山BASEの二足のわらじで活動中。

今村瞳(いまむら・ひとみ)さん

鋸山BASEの店長。人事の仕事を退職後、留学・世界一周へ。コロナの影響で世界一周を中断したタイミングで、エシカルライターとして独立。

鋸山BASEでは、主に接客やInstagramの運用を担当。ライター+鋸山BASEの二足のわらじで活動中。

偶然のきっかけで、お店をオープンすることに


今村さん夫婦が物件を入手してからお店をプレオープンするまでの期間は、わずか2ヶ月でした。

今村さん:
「二人で住める家を探していたところ、知人に紹介されたのが鋸山BASEの物件です。

家の倉庫部分を店舗として活用できる物件でした。

目の前には鋸山ロープウェーがあって、週末はたくさんの人でにぎわっている観光地エリアです。

建築関係の仕事をしている友人に手伝ってもらいながら、こつこつとDIYをしているうちに、古かった家がどんどん綺麗になってきて。

『こんな環境があるのにお店をやらないのは、もったいないかも……!』と思うようになりました。

ただ当時、飲食店の営業許可は取得していなくて。提供できるものが限られていたんです。

まずはお試しのつもりで、駄菓子+古着のお店をオープンすることにしました。

物件の購入以外に使ったお金は、150万円くらいですかね。」


お店の前の可愛らしいボード

そこからクレープメインのカフェになるまで約1年。

店舗のアドバイザーをしている知人からの提案を受けて、カフェに業態チェンジすることを決めます。

今村さん:
「自分としては、駄菓子屋を続けるつもりでした。

でも、店舗立ち上げアドバイザーのまさきくんから『カフェにした方が良いのでは』とアドバイスをもらって。

駄菓子+古着屋だと、ちょっと個性的すぎて、地方の観光地でやっていくには難しかったんです。

お客さんの需要を考えても、利益の面から考えても、カフェの方が良いだろう、と。

たしかにそうですよね。

もともと鋸山BASEはさまざまな人とのコラボをテーマにしたい、夫婦の強みや人柄が生かせるお店にしたい、という想いがあって。

それを実現しやすいカフェに変えるのは、良い案だと納得しました。」

条件設定とアイディア出しをする中で出てきた、クレープの案

紅玉タルトタタンのクレープ

クレープを提供すると決めたのは、再オープンの約1ヶ月前。

土地の特性や自分たちの強みを考えたところ、クレープの案が出てきます。

今村さん:
「山に登る前後の人が立ち寄ってくれるので、片手で食べられるスイーツにした方が手軽で良いんじゃないだろうか?と思って。

これが条件のひとつとなって、クレープが思い浮かびました。

クレープだったら、ベースは同じでも果物でアレンジできるから、コラボもしやすい。

条件をあいまいにしたまま闇雲にアイディアを出すわけじゃなくて、条件を設定して、その中で最大限クリエイティブに考えることを大事にしています。

やるからには、売れるものを作りたいですからね。

カフェだったらメニューは何でもOK、おいしければOK、とは考えていませんでした。

自分たちのやりたいことを表現できる手段はクレープだとたどり着き、試作を開始します。」

“手に取りやすい金額”から、値段を考える

シャインマスカットのクレープ

鋸山BASEのクレープは、まるでパフェのように美しくて華やか。

季節の果物をふんだんに使ったクレープは、1,000円を超えることも多いです。

今村さん:
「値段については、“手に取りやすい金額”に設定しています。

お客さんの目線に立ったときに、『買いたくなる金額っていくらだろう?』『魅力的に見える金額っていくらだろう?』と想像します。

値段を決めるとき、ふつうは相場と比較して、原価率を出して、実現できるのかを判断して……と、ロジカルに決めますよね。

鋸山BASEの場合は『桃のクレープをやるぞ』と決めてから、『いくらだと手にとってもらいやすいかな…?』と想像します。

そのあとに、他店の桃のクレープを調査して、鋸山BASEの他のメニューの価格との兼ね合いを調整して、最終決定という感じです。

観光地なので、ちょっと攻めた内容でも買っていただけるのはありがたいですね。

グランドメニューについては、冷凍できる材料を使うようにして、ロスが出ないよう意識しています。

グランドメニューのひとつ、じゅわじゅわあんバター

自分たちは今、平日の仕事の収入だけでも暮らしていける状態です。鋸山BASEの営業は、基本的に土日祝。

もしクレープが売れなかったとしても生活できるので、値段を柔軟に決められるところはありますね。


クレープ作りでは、お客さんの反応はもちろん、妻・瞳さんの“普通の感覚”が頼りになるようです。

今村さん:
妻は、いい意味で普通の感覚を持っているので、メニュー開発のときには助かっています。

試食してもらうと『最後まで食べるには重たいな』『この盛り付け、ちょっとやりすぎかも』と素直な感想を言ってくれるんです。

自分は元パティシエなので、こだわりを詰め込みたくなって、主観的になりがちです。

普通の感覚を持った人、特に率直な感想をくれる妻の意見は大事にしています。

もちろん来店してくださるお客さんの意見も大切にしていますが、お客さんって基本的には良いことを言ってくれるんです。

ストレートな悪い意見は、作り手の耳にはあまり入ってきません。

なので、クレープの良し悪しについては、お客さんが食べている時の表情や様子、あとは売上から想像することが多いです。」

観光地という性質を考えて、とがりすぎないメニューを

バナナは館山市のバナナ問屋 佐藤商店さんのもの

鋸山BASEのターゲット層は、30代の観光客とSNSを見てきてくれる人の2軸ですが、誰も排除しないメニュー作りを心がけているそうです。

今村さん:
「観光客の方にはグランドメニューを、SNS経由の方には季節限定のメニューを食べてもらえたらと想定しています。

30代の観光客と設定しましたが、そこまで厳密ではありません。

観光地ですし、とがりすぎないこと、誰も排除しないことは大事にしています。

グランドメニューには定番のチョコバナナやあんバター、おかず系のクレープもありますし、実際には60代以上の方もぺろっと食べてくれています。

観光客とSNS経由のお客さんの割合は7:3くらいですね。

今は観光地パワーに頼っている感覚があるので、今後はSNS経由のお客さんが増えてくれるように頑張りたいです。

2024年秋にお店を再開させるので、そこは次の課題ですね。」

主観に頼らず、こだわりと需要のバランスをうまく取っている今村さん。

【後編】では“自分の仕事”をやっていく上での作戦についてお聞きしています。

仮説を立てることの大切さや楽しくコラボするための心がけ、身になるインプット方法についてお話ししていただきました。

マネできるポイントも多いので、お楽しみに!

(企画・取材・文:伊藤七

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