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詩歌

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2019年12月の記事一覧

詩的実験(3)

詩的実験(3)〜実験的流動説 〜

くちづけをしないまま
朝明けの海道にこぼれ落ちる、のだろう
一文字に続けてのち、ほどく髪の「眩しいのだから
安堵はうたた寝へと再読を誘う
かつての魅力の失せた
発芽を引きずって
リサイクルされた動詞が
仮面へとかわり
赤紙の掲示のもと
研ぎ直され運河は笑う
欲望をほどき関わろうとする
鳥の陰謀に騙されてはいけない
一度も嵌めたことのない
指輪はすでに解放区
建設

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外殻

外殻

耳朶にナイフを当て
憧れに似た痛みを構えたことがある
しろたえの雪を汚した体液をとどめて月の内湖が弛む
眉のない明るいところから落ちる開戦の日の、それとも傷の

鳥は無垢だ 謝るまえに木になる
土を払い除けると
手間だけど、いい匂いがする
条理など何ほどのことか
左右不対称の森林帯を
摩擦すると
濃淡に描き分けられた
辺縁の群生地から吼える

詩人であることを休止し
窓枠の外側

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異葉

異葉

樹海に抱かれて朽ちてゆく生まれかわる間(あわい)を添、天、と展開する 船乗りは裏皮のすわから点滴のように龍を送り込む、混む、虚無 夏葉は形代のかたち 回り続ける雑食の街なのだ 解剖図説にだって記載されないアスファルトの湿りを剥がしてみる 刻の進みが 詩が詩を培養するように雨粒を撫でながら金属臓器は感電し月のひかりは鈍く鎖骨へと忍び込む 鼠径部あたり痂皮の注意書きを開きながら夜のほどろ不可

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詩的実験(2)

詩的実験(2)

真空管のなかの噴水、噴水のなかの鯨が落ちてゆくのだ
小石のなかの真珠に眩みかくれんぼした児が森から未だ帰らず

樹々の骨格をさかしまに救い
吹き溜りの風に耳を交えて
ベッドは草原の昨日を追っている
盛りあがった穴から妻は発狂し
熟した果実はファムファタル
転がる銀貨の欲望とか
溶け出す氷の諦念とか
鳥のさえずりに貫かれ
世界の均衡が
鏡の裏へずれ始めている
月はゆっくり落

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地籍台帳

地籍台帳

オルドリンの歩行から、体を伝う奥の細道、満ちてくるもの、溢れて文体の逸話、忍者は枯野をかけ巡る、めぐむ、無、そう、桜咲くまで、間引かれたひとよ、ひと夜、闇から立ちかえる黄泉平坂、坂の上から傘は舞いおり、天、てん、点になる。
思い込みの強さに歪曲される。そう、そうたい、的に盛って、ひかりのなかのコーヒーの湯気の共有、押しの強さに引っ込めた蕊、日差しは喪失の花弁、海岸線まであと少しのと

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形式

形式

一行が絵画(トロンプルイユ)を
描きつついちまいづつを脱ぎすててゆく

強く弱く不等間隔に水仙は咲き
強く結んだ紐の両腕までの距離を
脱論理的に引き寄せるゾルレン
すこし捻れば痛点を経過し
羽音を織り成すように
改行され
眩暈の姿に
肌がすれちがう

やわらかく眠ったからだの
つなぎめを超えて飛び去る
鳥の点綴
#詩

鏡半身

鏡半身

たぶん
呼気を吐き出し間引きされるひかり
のようにはいかない
見られることなく
はじめての花を咲かせ
いちばん深くなったあとは
堆積するしかなく
水域をいっとき共有し
昨日のように流される
前世を立ち尽くせば
借景の街に海岸線は歪んで
億年の骨の白さと
饒舌な啞のひかり
鳥の渡りは母だったのかもしれない
五指を大地に染み込ませ
三半規管を少しずらせば
吃音のように聴こえてくる

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街のからだ

街のからだ

町のなかを歩いていると身のなか
の廃墟の街に触れるとき
のふっとした嗚咽、嘔吐
に夏の日の父の背中を重ねる
果てなく広がりつづける
身のなかを歩いていると街のなか
の廃墟の身に触れる
ときの影のない通り
に日差しが色づき
子宮のなかに揺れるとき壁に
突きあたる街にふれる
ときの崩壊を企てた
指先に力が漲る

そうやって夢から目覚めて
ここへたどり着くのだ
#詩

試行テクスト

試行テクスト

水平線の湾曲するところへ届くだろう
f(x,y,z)=0を満たす軌跡が剥離を始める
そう、行動するだろう
指先で水平線を絡め取り月の義眼をあばいてしまう
自転車がつぎつぎ空へ落ちてゆくのを見下ろせば林檎は透ける
裏面から乳房を貫く未完の矢尻が極点へと呼びかけ
処方、接吻、過去、溶解、奇形から
一枚を選ぶときの表情になる
脱ぎ捨てた檸檬と交差点の発狂はラビリンス
白磁器の罅割れの

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