外殻
耳朶にナイフを当て
憧れに似た痛みを構えたことがある
しろたえの雪を汚した体液をとどめて月の内湖が弛む
眉のない明るいところから落ちる開戦の日の、それとも傷の
鳥は無垢だ 謝るまえに木になる
土を払い除けると
手間だけど、いい匂いがする
条理など何ほどのことか
左右不対称の森林帯を
摩擦すると
濃淡に描き分けられた
辺縁の群生地から吼える
詩人であることを休止し
窓枠の外側に添い
崩れ落ちる日に爪を立てながら
覚えている鳥になる
分離した部分だけが痛い
おとなにはくりかえすことのゆらめきを清潔そうな硬貨に放つ
#詩