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詩歌

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2019年11月の記事一覧

脳内震盪(1)

脳内震盪(1)

ゆく人の影で寂しくなる影があなたの影と区別されない
その影に日輪を隠し爆発を身体のなかに閉じ込めている
ひかりを知らない臓器の関係性を
スクランブル交差点が語りはじめる
真ん中ほどから増殖してゆく
鳴きはじめの動物臭
縫合糸の煩悶
チェロの傾斜の譲歩
ベクトルは下方修正され
凹んだ部分の体液が恥ずかしい
風により不気味に消される黒板とまちがいやすい犬サフランの眼
チョークのなか

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記憶

記憶

更地になったそらの手前に雲がある
朝 かたちをかえてゆくのに
ここに居たことの偶然はいっしょで
必然は小さなリードの長さほどの範囲の 
本当 犬の
ここが玄関に違いなかった 足を温めながら 
父も踏みしめただろう、かつてのいくつかの箇所で体幹をずらしながら
鳥に転化している
植えてあった日々の 柿の木の高さほどに想起してみる
全体の配置をおさらいすれば、居間へと続く倉庫の通路を繰り返し移

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創作(1)

風、詠うための、詩のことばをたしかめるためテクストを再読する。疲れたのか、南の窓から、何処へいくというでもなくひかりの揺れによって確認できる。リアリティを得るために触れたら、と幾度か言われたことを、ことばになるまで窓をスライドさせるようにずらしてゆくと、区別は曖昧になり静かに落ちていることが伺える。それを以前、伝えたことがあって、かれと前後左右のはじめもおわりもなくわたしへと話しかけていた。

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音葬

音葬

標がちがうから
深爪をして
確かめたくなる
うみはうみの
みうの音に
口腔が産道となる
春の儀式の
雨の日の呻きは
永久(とこしえ)の
うみがうみを崩壊する
みうにもどる前日の
うみと呼んだひとのみう
だけが明るい
   *
ことばはうみのおおきさの遺書
かたりつづける水平線の罪
息遣いの擦れ
雨を呑み干すとき
悲しくもないのに
吐き出してしまう
鎖骨とか
ひかがみとか
内水の
羞恥だ

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