記憶

記憶

更地になったそらの手前に雲がある
朝 かたちをかえてゆくのに
ここに居たことの偶然はいっしょで
必然は小さなリードの長さほどの範囲の 
本当 犬の
ここが玄関に違いなかった 足を温めながら 
父も踏みしめただろう、かつてのいくつかの箇所で体幹をずらしながら
鳥に転化している
植えてあった日々の 柿の木の高さほどに想起してみる
全体の配置をおさらいすれば、居間へと続く倉庫の通路を繰り返し移動して
きっと森からプールへ移行するままの夜の
泣きながら体に刻まれた鱗を一枚剥がしたのだと
彼が話すときの水の音のよう
魚の
鳥の
犬の
そして、誰の

#詩

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