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映画の玉手箱②~「2020毎日映画コンクール」

 昨日、2020年度毎日映画コンクールの発表がありました。主要部門の受賞作品です。

日本映画大賞『MOTHER マザー』(大森立嗣監督)
日本映画優秀賞『アンダードッグ』(武正晴監督)
外国映画ベストワン賞『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)
男優主演賞 森山未來『アンダードッグ』
女優主演賞 水川あさみ『喜劇 愛妻物語』
男優助演賞 宇野祥平『罪の声』
女優助演賞 蒔田彩珠『朝が来る』


大賞の「MOTFER」は、実在の事件をモデルにした作品で、わたしも強く心揺さぶられました。基本的に、観終わって元気がでる作品がスキですが、この作品は、考えさせられます。慟哭という言葉が浮かびました。

 毎月、知人たちとの映画の会に参加しています。去年は、コロナで、ほとんど参加できず、申し訳なかったです。その会では、月ごとに、邦画、洋画で課題がでて、感想を言い合うのですが、7月が「MOTHER」と韓国映画「マルモイ~ことばあつめ」でした。そのときの感想を。

☆「MOTHER」大森立嗣監督作品

  大森監督の今作は母と子の普遍のテーマ、実在の埼玉祖父母殺人事件に基づいているだけあって、見事たえあり、感心しました。安易に子どもが可哀そうというお涙頂戴ものにせず、数少ない子どものセリフに重みを持たせた演出は見事だったと思います。
 一緒に見たママ友は、「こんなん映画じゃないやん、共感できないし、めっちゃ後味悪い」とさんざんでしたが、これも映画です。注意!(以後、ネタバレします)


 シングルマザーの秋子(長澤まさみ)は、働きもせず、パチンコにあけくれ、出会ったホスト(阿部サダヲ)と遊ぶ日々。小学校三年生の周平(成人後は奥平大兼)は、学校にもいかせてもらえず、食べ物に困り、やがて三人は放浪の日々。結局、秋子は妊娠して冬華を産み、ホストに捨てられ、貧困のため、紆余曲折のあげく、お金のために自分の両親を殺すことを周平にそそのかすといった話です。2014年に埼玉県で実際に起こった祖父母殺人事件で、現在、加害者は収監中。


 社会の底辺を描いてるという点で、「万引き家族」との類似性が指摘されますが、こちらの方が閉鎖的で母子の絆しかなくて救いようがないです。ただ、映画では、遺族に配慮してか、秋子の家族が、(離婚した周平の父親も含めて)まともなので、何故秋子だけがこんな女性になったのかがわかりにくいです。あくまで憶測ですが、インターネットの情報記事では、実際は、DVと虐待で離婚しており、映画のように、無心にきた周平を抱きしめお金を与える父親ではなかったのではないかしら、と。秋子の妹も大学卒業し普通に生活し、20万以上貸したと映画ではありますが(実際には姉がいるそうです)、もし、そこまでの生活をおくれているなら、行政の情報などを親身に知らせてあげれなかったのかな、と。映画では、秋子だけが異常に描かれていますが、そこは不自然でした。秋子を含めた環境自体が救いようがなかったのではなかったか、と。


 母と子の関係は、映画では支配するものと支配されるものといった調子であり、これは、難しい問題でもあり、マザコンなどの考察につながる普遍のテーマだと思いました。語弊があるかもしれないけれど、子ども四人を東大理三に育てた佐藤ママが繰り返し、「受験は母親の責任」と述べられ、母親の介入、分刻みにスケジュール管理をして合格させた手腕は、知識と教養と環境があったからですが、もし、秋子にもそれらが整っていたら、それでもパチンコに行き、育児放棄しただろうかと。方向は違うけれど、管理する、洗脳するという点は、観方をかえると、多かれ少なかれどんな母子にもあるんじゃないかしら、と。ラスト、収監された周平が、「ここは三食ご飯が食べれて、本が読めるから嬉しい」と言っていた言葉がせつなかったです。そして、それでも、母親が好きだという言葉に落涙。


 主演の長澤まさみさんを始め、子役を含めてみな熱演でした。特に奥平大兼氏は、藤原竜也を彷彿させ、存在感ありでした。

 去年公開された隅田靖監督「子どもたちをよろしく」も底辺に生きる子供の生活を描いていました。親の経済格差によって、今、コロナ禍での家庭学習に差がでている現状を知る機会もあり、底辺に懸命に生きる子どもの声を少しでも大人たちが救えたらと思ってしまいました。

#毎日映画コンクール #大森立嗣 #長澤まさみ #MOTHER #映画

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