話題の本「ケチる貴方」～石田夏穂著

　第３８回大阪女性文芸賞を受賞した石田夏穂さんは、翌年、筋トレを題材にした「わが友、スミス」ですばる文芸賞佳作受賞、芥川賞候補作となりました。去年、「冷え性」を題材にした「ケチる貴方」では、野間文芸新人賞候補になりました。

　第４４回野間文芸新人賞候補となった表題作と第３８回大阪女性文芸賞受賞作を加筆訂正したものを同時収録した単行本が、先月末、上梓されました。帯は各賞の選考委員の先生の選評です。

　主人公の不機嫌さは極端な冷え性ゆえで、よく読むと類型的な「不満持ち」ではない。気まぐれな「親切」が身体に激変をもたらす一夜を経て、劇的な面白さをもたらした。（長嶋有、「ケチる貴方」野間文芸賞新人賞評）
　自己肯定と自己否定の相矛盾する狭間の中で生きる人の心を描いて大成功している。（町田康、「その周囲、五十八センチ」大阪女性文芸賞選評）

☆「ケチる貴方」石田夏穂著　講談社　１５００円＋税

「ケチる貴方」は極端な冷え性の主人公私の話であり、「その周囲、五十八センチ」は脂肪吸引の主人公私の話です。どちらも、現代を生きる働く独身女性の（しかもかなり優秀な）、生きづらさが背景にあり、ユーモアが各所に散りばめらていて、スラスラ読めました。
「ケチる貴方」では給湯器が壊れた朝のてんやわんや騒動、「その周囲、五十八センチ」ではラスト近くでE藤先生から「あなたは自分の脚が大好きなんだね」という台詞による発想の転換場面が好きです。働く女性の応援歌としても受け取れ、若い女性の本音のセリフや心理描写にふっとした笑いを誘いながら、一気に読みました。

★石田夏穂★
１９９１年埼玉県生まれ　東京工業大学卒
　
第３８回大阪女性文芸賞受賞「その周囲、五十八センチ」（選考委員・中沢けい氏、町田康氏）
第４５回すばる文学賞佳作受賞「わが友、スミス」
第１６６回芥川龍之介賞候補作「わが友、スミス」
第４４回野間文芸新人賞候補作「ケチる貴方」

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